菅総理が9月3日、総裁選への不出馬を決めました。

9月29日に投票が行われる総裁選に出ないと言うことは、9月30日までという自民党総裁としての任期をもって、新たな総理が誕生することを意味しています。

新内閣が誕生することは、皇室にとってどんな意味があるのか考えてみました。

「親任式」と「認証式」

新総理の誕生には、衆議院と参議院でそれぞれの首相指名選挙を経ることが必要です。現在の衆議院と参議院は自民党・公明党の与党が多数を占めることから、自民党の総裁が総理に指名される公算がとても高いです。首相に指名された人はまず、内閣のメンバーを決める組閣にかかり、閣僚の名前が発表されます。

この段階では、実は「首相に指名された人」「閣僚候補」でしかありません。総理になるためには、天皇陛下による「親任式」で、総理への任命を受けなければならないのです。

菅総理の場合には、安倍総理(当時)が天皇陛下に説明をする「内奏」を行い、内奏の後、皇居宮殿・松の間で安倍総理、衆参両議院の議長が立ち会い、「親任式」が行われました。

天皇陛下から「内閣総理大臣に任命します」とのお言葉を受けた菅総理は安倍前総理から官記という任命書を受け取り、退出して親任式は終了しました。

天皇陛下から言葉を受ける菅首相(2020年9月16日)
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天皇陛下から任命され、初めて総理となるのです。

その後、新総理は、天皇陛下に内奏し、今度は新たな閣僚について説明します。そして、新総理が立ち会い、閣僚の「認証式」が行われます。陛下は閣僚一人一人に「重任ご苦労に思います」と声をかけられていきます。

こうした「親任式」「認証式」を終えた総理と閣僚は官邸に戻り、初閣議を行うという流れになっています。

あまり知られていませんが、「親任式」「認証式」を終えた閣僚らは実は、皇居宮殿の入り口の一つ、北車寄で記念写真に臨んでいます。

皇居宮殿の北車寄で行われた記念撮影

官邸の階段で閣僚が揃って撮られる映像は有名ですが、同じように宮殿の階段でも記念撮影を行うのが通例になっています。

眞子さまの“一時金”を決定する皇室経済会議

こうした行事の他に、今後注目されるものがいくつかあります。

その一つが、皇室経済会議のメンバーについてです。皇室経済会議は衆議院の正副議長、参議院の正副議長、総理、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人で構成され、総理が議長を務めることになっています。新総理、新内閣となると、議長の総理が変更になるほか、財務大臣も変わるかもしれません。

また、総選挙後になると衆議院の正副議長も替わることになります。

今、注目されている秋篠宮家の長女・眞子さまのご結婚に伴う一時金の金額を決めるのもこの皇室経済会議です。

役職でメンバーが決まる会議なので、誰が総理になっても大きな影響はないと思われますが、考え方では、今までの経緯を知っているメンバーで皇室経済会議を、ということになるなら、眞子さまの一時金を決める皇室経済会議が9月30日までに行われるかもしれません。

もちろん、新メンバーになってから開かれると言うことも十分ありますが・・・

「一時金」を辞退する意向を示されている眞子さまは小室さんと年内にも結婚か

有識者会議の今後の行方

最も影響を受けそうなのが、安定的な皇位の継承や皇族の減少などについて議論してきた有識者会議の今後の行方です。

この有識者会議は正式には「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」という名称です。

上皇さまの退位を決めた特例法が2017年6月1日に国会で成立した際、決議されたもので、「政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、 皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、 本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」というものです。

こうした附帯決議がされたことを受け、政府は2021年の3月から有識者会議を設けて、専門家などから意見を聞くヒヤリングなど10回にわたり検討を続けてきました。そして10回目の7月26日に中間報告をまとめています。

その内容は、
1)皇位の継承は、現在の皇位継承第一位・秋篠宮さま、第二位・悠仁さま、第三位・常陸宮さまという流れを変えないで、それ以降については、悠仁さまのご成長をお待ちし、「将来、悠仁さまのご年齢やご結婚などをめぐる状況を 踏まえたうえで、判断すべき事柄」としています。

つまり、この課題については事実上、先送りの考え方を示しました。

2)天皇の他に公務を担う皇族の減少に対しどのような方策があるか、と言う点について議論は深められ、

A案:女性皇族に結婚後も皇室に残ってもらい公務を負担していただく、
B案:戦後に離脱した元皇族の子孫に皇族の養子になってもらう、

という2案を軸に、関連法案や海外の王室の状況などを調べ今後も検討を進める、ということでした。

有識者会議は政府から諮問された委員が今後も検討を重ねてきていて、最終的な考えを政府、つまり総理に報告する予定でした。

以前から、政府内では、これらの課題について、選挙の争点にはしたくない思いがあり、最終報告は総選挙後に行い政府で最終報告をまとめた上で国会に報告する流れになっていたものとみられます。

今回、新総理が誕生することで、この有識者会議の今後の議論がどのように進められるか不透明になってきました。有識者会議には、有識者の他に杉田官房副長官もメンバーとして出席しており、これまである程度、政府、総理の考え方も反映されていたものと見られます。

杉田官房副長官

小泉内閣での「皇室典範に関する有識者会議」の場合は最終報告を2005年11月に小泉総理が受け取りましたが、悠仁さまのご誕生などもあり国会には提出されず、また小泉内閣の後を受けた安倍総理が報告書の内容を白紙に戻す方針を示しています。

この時の報告書が「女性天皇を認め、長子優先」と言うものだったこともあり、保守派を支持基盤とする安倍総理は受け入れられなかったものとみられます。

民主党の野田内閣では、2012年に6回にわたり「皇室制度に関する有識者ヒアリング」で、いわゆる「女性宮家の創設」についてヒアリングが行われ、ヒアリングをまとめた論点整理までいきましたが、翌年に民主党政権が崩壊し、論点整理以降の議論は行われませんでした。

杉田官房副長官も80歳と言うこともあり、次の内閣では勇退されるものとみられます。要は、内閣が替わることにより、有識者会議などでの議論は変化する可能性があるということです。菅総理から諮問を受けたわけですから、存続自体もどうなるのか不明です。

最優先課題

国民にとって、真っ先に内閣に対応してもらわなければならない課題は、新型コロナウイルス感染症への対応です。

ただ、皇族の減少やへの方策や安定的な皇位の継承については、早急に議論しなければいけない問題です。内閣が替わることでその足並みにはさらに遅くなるとみられ、皇位の安定的な継承や皇族の減少に対する方策など、今後の皇室にとり検討すべき課題についての議論の行方は不透明となりました。

このように新総理の誕生により、皇室も色々と係わる行事や影響も出てくるのです。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】