「なんでそうなる!?」 カボチャが素材のアート作品
紙や粘土で作った、本物そっくりの“フェイクフード”については編集部でも何度か取り上げたが、今、“本物の食べ物”を使ったこんな作品がTwitterで話題となっている。
息子「なんでそうなる!?」
私 「すごいやろ」
息子「なんか役にたつの?」
私 「たたんな」
gaku(@gaku_carving)さんが投稿したのは、「カボチャ」というシンプルなコメントと、父と息子のやりとり。
動画には何やら黄色い鎖が映っているが、よく見るとうっすらと緑色の部分が…実はこれ、カボチャの果肉をナイフで削り出して作られたものなのだ。
鎖を持ち上げて辿っていくと、なんとぐるりと一周繋がっており、息子さんの「なんでそうなる!?」というリアクションにも納得。
しかし、次いで投げかけられた質問は「なんか役に立つの?」という鋭いもので、それに対し「立たんな」と返すgakuさんのクールさに笑いを誘われる。
息子さんから素朴な疑問は飛び出したが、役に立つか、立たないか?という次元ではない、この“スゴ技”はどうやったのか。
「食べられる芸術…役に立ってる!」「このまま揚げて食べたら面白そう」と大人気となったその技について、作者のgakuさんこと、岸本岳大さんにお話を聞いた。
本職は料理人!作り方を聞いてみた
――カービングを始めたきっかけは?
ネットでタイカービングを知り、その美しさに感動してはじめました。
果物やせっけんに模様を彫るタイの伝統文化である「タイカービング」に惹かれ、7、8年前から制作を始めたという岸本さん。
実は、岸本さんの本職は日本料理人。食材と刃物を扱うプロが作っていた作品ということで、その巧みな手さばきの謎がひとつ解けた。
――作品はどうやって作っている?
基本はナイフ一本ですが、固い皮はナイフが曲がるので、包丁を使います。
気になるその作り方だが、まず、硬いカボチャの頭とおしりを包丁で落としたら、カービングナイフで互い違いに組み合わさった鎖の原型を彫り出す。
大きな輪に小さな輪がたくさん繋がった状態になったら、鎖の形になるように大きな輪をひとつひとつ切り離していけば、「カボチャの鎖」の完成だ。
今回の「カボチャの鎖」の制作時間は二時間半ほど。
作り方は分かってもマネしがたい“スゴ技”だが、このような鎖の作り方は2種類あるそうで、完成品の長さを素材よりも長くしたい場合は今回のような方法を選ぶなど、作品ごとに作り方を変えているそうだ。
こうして美しく仕上がったカボチャの他、「身近な食材であること・見てすぐに何の食材かわかること」にこだわった作品を作っている岸本さん。
ブロッコリー、スイカ、リンゴなどはカービングしやすいとのことで、多くの作品が投稿されている。
ちなみに、「ドラゴンボール」が好きとのことで、ビームでメロンのカービング作品ができあがっていくコマ撮りアニメや、キャラクターの顔を彫刻したシリーズがお気に入りとのことだ。
「息子は普通のところが食べたい言うてます」
作り方の次に気になるのは、やはり「作品のその後」だろうが…
――話題となった「カボチャの鎖」は今どうなっている?
カボチャは今冷蔵庫にあります。今はへたを食べてます。昨日はカレーに入ってました。
――ということは、いずれ食べてしまう?
作品はすべて食べてます。
ブロッコリーの芯は食べません。スイカは彫ったら飽きるほど食べるので、ひと夏に1、2個が限界です。
話題となったカボチャの鎖はまだ保管されているということだが、実は作品の全てはおいしく頂いてしまうそう。
実際、インスタグラムには繊細な花の形に彫られたジャガイモがカラリと揚げられたり、和柄の入ったリンゴをフォークでグサリ!という、もったいなくも美味しそうな動画がアップされている。
――息子さんとのやりとりがユニーク…いつもこんな反応?
子供は普通のところが食べたい言うてます。
妻はまったく興味がありません。綺麗に彫った物でも容赦なく切り刻み、美味しい料理を作ってくれます。いちいち気に出来ないそうです。
家族にとっては日常の一場面のようだが、多くの人が驚いた芸術作品。
今後は「ジャイアントカボチャに挑戦してみたい」とのことで、次に息子さんからどんな反応が飛び出すかも楽しみだ。
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