国や自治体から注文が殺到
新型コロナウイルス感染での自宅療養者が急増している中、自宅で使う医療機器は需要が増え続けているが、生産が追いつかない製造現場も出てきている。
その背景には需要の急拡大だけではなく、世界的な半導体不足があった。
酸素濃縮器やパルスオキシメーターなどを取り扱っている大手医療機器メーカー「フクダ電子」を取材した。
酸素濃縮器は、呼吸困難に陥った患者が濃縮した酸素を吸い込むための装置だ。取材した朝も、従業員が、生産ラインに張り付き、製造・梱包作業に追われていた。
自宅療養者向けに装置を確保しようと、国や自治体から注文が殺到している。

世界的な半導体不足の影響が…
さらに、生産をピンチに追い込んだのが世界的な半導体不足だ。「マイコン」と呼ばれる半導体が不足しているため、酸素の濃度や量をはかるセンサー部分の製造が難しくなっているという。

フクダ電子の神田豊晴生産本部長は、
「従来の水準の1.5倍を製造できるようラインを増強したものの、半導体不足のあおりで、
生産は逆に半分くらいに減っているのが実態だ」と話し、
注文が急増するなか、フル稼働で生産したいものの、部品が集まらず思うように生産が出来ていない苦しい胸のうちを明かしてくれた。
「酸素濃縮装置は患者さんの生死に直結している機械なので、ありとあらゆる手を使って何とか生産し、患者さんのもとに届けたい」と強調する神田本部長。
少しでも多くの半導体を手に入れるため、かなり高額になるものも仕入れの対象に含めたうえで、生産を増やしていきたいとしている。

「パルスオキシメーター」も需要増
酸素濃縮器と並んで、需要が高まっているのが、指に装着して血中の酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」だ。
この会社では、自社で生産しているものと海外から仕入れて販売しているものがあるが、輸入品の方が比較的低価格ということもあって注文が多く集まり、供給が追いつかなくなりつつあるという。
8月に入って一段と増えた注文は、通常の3~4倍にもなっている。確保していた在庫がなくなった結果、製造元への発注を急ピッチで進め、納期の前倒しなども依頼しているという。

在宅患者を医療機器の面でもバックアップする体制を
自宅療養者が急増するなか、国内医療のひっ迫度は深刻さを増している。

グラフは、東京都で、検査で陽性となった人の療養状況を表したものだ。
赤色の「自宅療養をしている人」は、この1ヶ月で急速に増えているほか、
緑色で示された「自宅などで入院・療養などを調整中の人」も増加の一途をたどっている。。
その東京都では、自宅療養者向けに500台以上確保した酸素濃縮器の残りが10分の1以下になるなど、厳しい状況が続いている。
在宅患者を医療機器の面でもバックアップする体制の整備が急がれる。
(フジテレビ経済部 経済産業省担当 井上文那)