長崎に原爆が投下されてから76年。
新型コロナの感染拡大は、被爆者から直接体験を聞く機会を奪っている。
その一方で、自宅で過ごす時間が増えた今こそ、眠っている貴重な資料の掘り起こしができるのではないかという期待もある。

若い世代に向けた平和教材を

国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館・岩永浩副館長:
コロナ禍で(写真の)整理をしている可能性がある

国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館・岩永浩副館長
国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館・岩永浩副館長
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長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
コロナ禍で、資料が今だから見つかったというケースは、長崎だけに限らず全国的によく聞くので、このタイミングを狙いたい

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員
長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員

長崎市の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館が、長崎大学とタッグを組んで始めたのは、被爆前の長崎を写した写真の収集だ。

追悼平和祈念館×RECNA
追悼平和祈念館×RECNA

被爆前の景色に加え、人々の表情、生活の様子などが分かる写真。
平和祈念館が持つ被爆者の証言と組み合わせ、若い世代に向けた新しい平和教材を開発、デジタル化し、オンラインで国の内外に提供したいと考えている。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
(若い世代が)みんな言うのは、戦争という状態そのものが、全く想像できない非日常なもの。長崎の平和な街で実際にあったということが、想像できないという感想

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
私たちにとって非日常な被爆ということが、被爆者にとっては、日常の延長上にそれがあったんだと伝えられるかどうかが、すごく大事

追悼平和祈念館×RECNA
追悼平和祈念館×RECNA

「被爆者の声がほこりを被らないよう…」

プロジェクトの中核を担うのは、長崎大学の核兵器廃絶研究センター(RECNA)の特任研究員・林田光弘さん(29)だ。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
僕は被爆3世でもあるし、長崎で生まれ育った高校生として、僕にしかできない伝えられないことがたくさんあると思う

林田さんは、祖父が被爆者の被爆3世だ。
核兵器廃絶を求める署名を国連に届ける活動などを行っている高校生平和大使を務めたほか、2010年には、NPT再検討会議に合わせてアメリカに渡り、現地で被爆者の体験を基にした紙芝居をした。

東京の大学に進学後も、「ヒバクシャ国際署名」のキャンペーンリーダーを務めるなど、平和活動や被爆者との交流を続けてきた。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
被爆者や、核兵器廃絶のために自らを削って活動している人にたくさん出会ってきて、この人たちの声が、後世でどこかの図書館でほこりを被るようなことがあってはいけないと思ったし、これから生まれてくる世代の人たちに、ちゃんと伝えたいと心から思っている

1発の爆弾があの日、日常から何を奪ったのか。
被爆者の人生全体を知り、若い世代が「感情移入」できる教材を作るつもりだ。

長崎大学 核兵器廃絶研究センター・林田光弘特任研究員:
今は直接、被爆者と会って、人と人とのつながりを作ることができるけれども、15年、20年たったときに、被爆者のいない時代が近付いてくる。
そうなったときに、被爆者が確かに「生きた」人たちであって、どんな人生を歩んだのか。ひとりひとりの「人間」として、きちんと後世の人に向き合ってもらえるかというのが、私たちに課せられた課題

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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