「日本は核兵器禁止条約の批准を」被爆者5団体の思い…高齢化とコロナ禍で苦境の現状【長崎発】
戦後76年~薄れる記憶、引き継ぐ記憶~

「日本は核兵器禁止条約の批准を」被爆者5団体の思い…高齢化とコロナ禍で苦境の現状【長崎発】

2021年1月、「核兵器禁止条約」が発効した。
しかし、唯一の被爆国である日本は条約を批准していない。
長崎の被爆者5団体は、政府に核兵器廃絶への要望などを伝えてきたが、被爆者の高齢化が進む中で新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、岐路に立たされている。

核兵器禁止条約発効も日本は不参加

2017年に国連で採択され、2021年1月に発効した「核兵器禁止条約」。
核兵器を作ること、持つこと、使用すると脅すことなど、核兵器に関する全てを法的に禁止する、世界で初めての国際条約だ。

核兵器禁止条約採択(2017年7月7日)
この記事の画像(13枚)

被爆者・森口貢さん:
私たちの地道な運動が、全世界に少し伝わっていってうれしい

被爆者・田中安次郎さん:
志半ばで亡くなった先輩被爆者に感謝し、「ここまできた」と報告したい

発効を祝うつどい(1月22日)

条約の発効は、被爆者にとって悲願だった。
しかし、唯一の被爆国である日本は条約を批准していない。

現在、世界には1万3,130発の核弾頭があるとされている。(※RECNA調べ)
核兵器禁止条約の法的拘束力があるのは、批准した国や地域のみだ。現在55カ国が批准しているが、アメリカ、ロシアをはじめとする核保有国、そして日本は参加していない。

なぜ日本は参加しないのか?
核兵器禁止条約の採択に貢献した国際NGO「ICAN」の川崎哲さんは語る。

国際NGO「ICAN」・川崎哲国際運営委員:
日本政府の言い方は、核兵器を全部禁止してしまったら、日本の安全にも困ったことになると。アメリカの核兵器が必要なんだと公言している。
そういうことを言い続けたら、他の国も「なんだ、核兵器を持って良いんじゃないか」となる。
核兵器なんかいらないんだ、核兵器なしで平和と安全を保っていくんだという基本的なメッセージを(日本は)出さないといけない。被爆国としての責任だと思う

 解散も検討…岐路に立つ被爆者団体

被爆者も、日本政府に訴える。

長崎原爆遺族会・本田魂会長:
世界で唯一の被爆都市がある日本が、核兵器反対という立場を示すべきでないか

長崎原爆被災者協議会・田中重光会長:
(条約は)発効したが、まだ核兵器は一発も減っていない。これからが、私たちの運動の正念場になってくる

被爆者は76年もの間、核兵器のない世界の実現を訴え続けてきた。

運動の中心にいたのが、「被爆者5団体」だ。毎年、8月9日には首相と面会し、核兵器廃絶に向けた要望などを伝えてきた。

全国の被爆者の平均年齢は83.94歳。高齢化が進む中、新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、長崎の被爆者団体は今、岐路に立たされている。

5団体で最も長い歴史を持つ長崎原爆被災者協議会は、新型コロナウイルスの影響で、1階の売店「被爆者の店」が2020年に閉店し、財政難に陥っている。

長崎原爆被災者協議会・田中重光会長:
ここの家賃収入が、うちの運営費の6割、修学旅行生(への講話)で2割。8割が今、消えている

被災協は1956年、長崎で初めての原水爆禁止世界大会の開催に合わせ結成され、原爆症の認定基準の見直しや、被爆者援護施策の拡充など、被爆者行政に大きな影響を与えてきた。
被爆者の減少に伴い、会員数はピーク時の10分の1ほど、約3,000人にまで減った。

長崎原爆被災者協議会・田中重光会長:
長崎被災協は、全国の被爆者と一緒に手をつないでやってきているし、これからもやっていく、続けていくことが大事

一方、解散を検討した団体もある。
県被爆者手帳友愛会は、1979年に発足し、国が定める被爆地域の拡大などを訴えてきた。
2019年、前会長の中島正徳さんが亡くなり、その後 負担の大きさから、後任を引き受ける人がいなかった。
「仕方なく引き受けた」と話す永田直人会長は88歳。自宅で妻の介護もしていて、活動との両立に厳しさを感じている。 

長崎県被爆者手帳友愛会・永田直人会長

長崎県被爆者手帳友愛会・永田直人会長:
ここに来る前も仕事をしてくるし、風呂の清掃とか、帰ったらまた忙しい。後継者つくりが一番難題。毎日、気にしている

歩みを止めないために「協同」活動を

次の世代に活動を引き継ごうという動きは、どの団体でも活発だ。

長崎県被爆者手帳友の会・朝長万左男会長:
2世の会員が増えてきているので、(2世が)継承活動で将来継続すると、会を閉じなくてもいいかもしれない

しかし、長崎市などは、補助金を交付する被爆者団体の定義を「代表が被爆者であること」としていて、新たな基準作りを求める声もある。

長崎原爆遺族会・本田魂会長:
(被爆者の)平均年齢を考えたら、おかしいんじゃないかと。何かするには、費用がかかってきます。自分たちから見たら、各5団体が解散するか、消滅するかを役所としては待っているのかという感じ

長崎原爆遺族会・本田魂会長

県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長は、世界から被爆者がいなくなる日が迫っていることを肌で感じているという。

県平和運動センター被爆者連絡協議会・川野浩一議長:
どの団体もそうだと思うが、被爆者の数が随分と激減しまして、財政的な基盤を含め運動自体は、まとまりはなくなってきた。これが実態。
せっかく核兵器禁止条約ができても、日本はいまだもって参加をしない、そこに決着をつけないと。とにかく自分の命が続く限りは、ここで頑張ると、核兵器がなくなるまでわれわれは死ねんと、そういう気持ちで頑張っている

県平和運動センター被爆者連絡協議会・川野浩一議長

「歩みを止めない」ために。被災協の田中会長は、他の被爆者団体と「協同すること」が重要だと考えている。

長崎原爆被災者協議会・田中重光会長:
日本政府に(核兵器禁止条約への)署名・批准をしなさいという署名(運動)を始めている。そのようなことを一緒にやっていく。できるだけ皆さんの協力を得ながら、持てる力を出していく

(テレビ長崎)

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