「ウッドショック」。新型コロナウイルスの感染拡大に端を発して、世界的に木材が高騰していることを指した言葉だが、広島の現状を取材した。

コロナ禍で使用率の6割占める輸入木材が高騰

世界的な木材不足。輸入木材の価格は、2020年末から上昇を始めている。世界中に広がった木材の高騰で、広島県内にも大きな影響が出始めている。

中国木材 堀川智子社長:
木造住宅の業界では材料不足。非常にひどい材料不足。「ウッドショック」と呼ばれていまして、木材がないので家が建てられないという状況になっています

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マルニ木工 生産管理部 斉藤順部長:
今、言われているのが、30%40%(価格が)上がったとして、買えたらいいですよねという感じになっている

国土の7割が森林におおわれる日本だが、国産の木材の使用率は全体の4割程度。6割を占める輸入木材の高騰は、大きな影響を及ぼす。一体、木材の価格はどれくらい高騰しているのだろうか?

中国木材 堀川智子社長:
ものによるが1.5倍から1.8倍くらい。うちが売っているものは。ただ、世の中では、海外から入ってくるものは倍の値段になったり、ものがないことから流通業者が倍以上の値段で売ったりすることも起こっています

米や中国で木材の需要が増加 投機的な動きも…

広島県廿日市市の建材メーカー。海外に自社の森林を持ち、比較的影響が少ないこの企業にも、材木業界の波紋が伝わってきている。

――高くなっている商品は何ですか?

ウッドワン コーポレートコミュニケーション室 井深正寿室長:
今、ウッドショックで高くなっていると言われるのは、こういった構造材になります。主には、柱とか梁(はり)とか土台です。一般の外材で輸入されているものは、かなり今、頻繁に値上げを繰り返している状況です。相当、価格が上がっていると聞いています

輸入木材の高騰の原因は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が影響している。コロナ関連の経済対策で、アメリカ政府が低金利政策を実施した結果、アメリカ国内で住宅建設ブームが起こった。

さらに、いち早く経済を復興させた中国で木材の需要が増加。コロナの影響でコンテナ船の供給が減少する中、木材を運搬する需要は高まり、運送コストが高騰した。

その結果、日本に輸入される木材が大幅に減少し、国内では品不足と価格の高騰が起こった。

しかし、高騰の理由はそれだけではないと業界関係者は話す。

中国木材 堀川智子社長:
アメリカでは、木材がシカゴで上場されているので、商品先物として投機的な動きもあると言われていまして、ツーバイフォー材が4倍くらいに跳ね上がっています

マルニ木工 生産管理部 斉藤順部長:
おそらく投機目的でこれを買っている人もいる。これは間違いなくて。今の相場まで上がったというのは過去に例がない

年内は価格が高いまま? 今後の見通しは

世界レベルで発生した、木材不足と価格の高騰。このような状況はいつまで続くのか?

中国木材 堀川智子社長:
アメリカ材は天井を打ったと思うが、ヨーロッパ材の方は一段と値上がりして数量も絞られてくる。この製品は10月、11月、12月ごろに入ってきますので、年内は(価格は)高いまま推移し、数量もタイトな状況が続くとみている

マルニ木工 生産管理部 斉藤順部長:
冬にアメリカが木を伐採すると思うが、ここまで高値になっているのであれば、いち早く切って売り抜けろという手段を取ると思う。そうすると、ある程度、世の中に流通量が出てきて、価格が落ち着くのではないかと予測しています。来年の夏くらいですかね。(切った木材が)日本に着くのは、早くても。それまでは我慢ですかね

世界規模の木材不足は、自然環境の変化などで、アフターコロナでも起こり得ると企業は考えている。

中国木材 堀川智子社長:
今後、昔のように潤沢な供給にはならないだろうと考えています。なので、国産材をどうやって盛り上げていって、安定供給させていくのか、というところにうちは注力していかなければならないと思っている

木材の使用量を減らす建築士も 木材のあり方見直すきっかけに

対策として、海外に独自の供給源を持つ企業もある。

ウッドワン コーポレートコミュニケーション室 井深正寿室長:
我々はニュージーランドに約4万haの森林を持っていて、そこで30年かけて苗木から材料を育てている。木材ショックの対象となる梁(はり)、桁(けた)は一部のものになるので、影響は限定的です

木材の確保を工夫する企業がある一方、極力、木材を使わない建築を考える専門家もいる。

専用のコンテナを継ぎ合わせ作られたアパート。柱や梁はない。木材の使用量は、従来の5%程度。

アドグリーン 建築士 津江知典社長:
新しいコンテンツとして、こういった鉄を使ったり、コンクリートもいいですけど。いろいろなチャンネルを選べるような、それぞれのメリット・デメリットを取捨選択しながら、建築士として専門家として、選んでいかなければならないと思う

コロナをきっかけに始まった輸入木材の高騰。
「ウッドショック」は、今後の木材のあり方を考えるきっかけになるのかもしれない。

(テレビ新広島)

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