水害対策、約2割が「何もしていない」
静岡県熱海市で大規模な土石流が発生するなど、各地で大雨による被害が出ている。
自宅や会社の水害対策の強化も呼びかけられているが、月刊総務の調査では、なかなか徹底が進んでいない現状が浮き彫りになっている。
日本で唯一の総務専門誌『月刊総務』を発行する株式会社月刊総務は、6月14日~19日、全国の総務担当者(『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか)を対象に「防災(水害)に関する調査」を実施。
回答したのは125人で、どんな水害対策をしているか尋ねたところ、「ハザードマップの確認」が68.8%で最多だった一方、「何もしていない」が19.2%という結果になった。実施している対策で2番目に多かったのが、「情報システムの浸水対策」(21.6%)と「水害対策備品の用意」(21.6%)だった。

なおこの調査の「どんな水害対策をしているか」との質問には、以下の7つの水害対策が示されていた。
・ハザードマップの確認
・情報システムの浸水対策
・水害対策備品の用意
・マニュアルの作成、従業員への周知
・水害を意識したBCPの策定
・資料・備品の浸水対策
・水害を想定した「避難訓練」
また、回答した125人のうちテレワークを実施している企業の91人を対象に、テレワーク中の水害を想定した対策ができているか尋ねたところ、「はい」が5.5%、「いいえ」が94.5%と、ほとんどの企業でできていないことが分かった。

たしかに日本では、集中豪雨や台風が毎年発生し、水害を受ける地域も多い。しかし、社員の安全を守るため、企業がこれら7つの水害対策の全てを行なっていく必要があるのだろうか?
また、ほとんどの企業でテレワーク中の水害を想定した対策ができていないとのことだが、テレワーク自体が普及してきたのが最近であることから、仕方がないことかもしれない。では、テレワーク時の水害対策にはどのようなものがあるのだろうか?
月刊総務の担当者に話を聞いた。
約2割の企業が水害対策を「何もしていない」
――どんな水害対策をしているか尋ねたところ、「ハザードマップの確認」が68.8%で最多、「何もしていない」は19.2%だった。この結果はどのように受け止めている?
近年の豪雨被害の激甚化を受けて、総務の危機意識は高まっており、その結果が、災害対策の初手であるハザードマップの確認につながっていると思います。
一方で「何もしていない」(約20%)は、近辺に河川がない、ビルの上位階に事務所があるなど、豪雨による災害のイメージが持てない企業ではないでしょうか。
とはいえ、近年の豪雨では都心でも被害が出ていますし、また直接自社が被災せずともサプライチェーン(供給網)などが被災することで、必ず、なんらかの影響が自社にも出ますので、総務担当者に自分ごととして考えてほしいテーマです。
――企業は、選択肢にある7つの水害対策の全てを行う必要がある?
改めて、選択肢にある水害対策は「ハザードマップの確認」「情報システムの浸水対策」「水害対策備品の用意」「マニュアルの作成、従業員への周知」「水害を意識したBCPの策定」「資料・備品の浸水対策」「水害を想定した避難訓練」の7つです。
このうち、「ハザードマップの確認」は全ての企業でするべきでしょう。実はハザードマップは、わりと頻繁に更新されるので、年に1回は確認してほしいですね。そして、自社にどんな災害リスクがあるかを確認し、それに沿って必要な対策を取ります。
その意味では、7つの選択肢すべてが必要とは限りませんし、選択肢以外にも必要な備えがあるかもしれません。ただ、前述の通り、サプライチェーン(供給網)の被災による影響を考え、水害を想定したBCP(事業継続計画)は策定しておいた方がよいと考えます。

“テレワーク中の水害を想定した対策”、具体的には?
――「9割以上がテレワーク中の水害を想定した対策ができていない」。“テレワーク中の水害を想定した対策”というのは、どのような対策?
基本的には、オフィスで働く場合と一緒で、仕事場所の「ハザードマップによる被害想定」「避難場所・避難経路の確認」です。安否確認の仕組みは必須ですし、福利厚生の一環として自宅用の防災用品や備蓄用品を支給している企業もあります。
また、在宅勤務の場合は、自宅の立地の他にマンションか戸建てか、鉄筋コンクリート造か木造か、など個別の要件によって影響が違うため、社員一人ひとりが対策を取るしかありません。
そういった意味では防災教育も非常に重要です。テレワークがBCP(事業継続計画)に欠かせない方策であることは、今回のコロナ禍で多くの企業が実感したと思いますが、テレワーク下で被災した場合の対策まで取れている企業は多くないでしょう。これは水害に限らず、災害全般にいえることです。
今回の調査で明らかになった、水害対策を「何もしていない」企業が約2割に上るという現状。
同社によると、「ハザードマップの確認」は全ての企業がするべきで、更新されているかどうか、年に1回は確認が必要だという。
「ハザードマップの確認」以外の水害対策については、これをきっかけに、自社にどんな災害リスクがあるのか確認したうえで必要かどうか判断し、水害を想定したBCP(事業継続計画)を策定してみてはいかがだろうか。
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