静岡県熱海市の土石流被害でも開設された、災害時の避難所。被災者の安全を守るためだが、そこでの生活は「つらさ」や「ストレス」などのイメージも付きまとう。

ここに注目した防災拠点施設が広島県熊野町に、6月1日に開所したのをご存じだろうか。「熊野東防災交流センター」で、避難しやすい環境を整えている。

熊野東防災交流センター(提供:熊野町)
この記事の画像(8枚)

熊野町によると、施設は鉄筋コンクリート造の2階建てで、延床面積は約1200メートル。災害の危険性がなくなるまでの滞在先、家に戻れなくなった住民の滞在先となる「指定避難所」として、短期間で約500人、長期間で約150人を収容できる。

センターの館内図(提供:熊野町)

この施設の特徴は、さまざまな避難の形に対応していることだ。施設内部には、平常時は講義室だが災害時には「ペット避難エリア」に転換できる部屋が設けられている。ペット専用の避難場所として、自宅から犬や猫を連れて一緒に避難できるのだ。(※収容可能数は30匹程度)

ペット避難エリア(提供:熊野町)

また、授乳室や小さな子供専用のトイレ、児童書をそろえた読書コーナーもあり、乳幼児世帯が利用しやすいようにもなっている。このほか、調理実習室やカフェスペース、シャワー室や備蓄倉庫なども完備。

施設内部の主な設備(提供:熊野町)

避難所としては十分すぎるようにも思えるが、なぜここまで、環境を充実させたのだろう。

熊野町に聞いたところ、2018年6月~7月にかけて日本列島を襲い、熊野町内でも12人が犠牲となった、西日本豪雨の教訓が関係していた。そこで、詳しく話を伺った。

避難行動に抵抗感をもつ人もいる

ーー熊野東防災交流センターを開所した経緯は?

町の東部地域にあり、避難所としていた「東公民館」の場所が土砂災害警戒区域に指定されたことが背景にあります。建設から40年以上が経過し老朽化していたこと、耐震基準を満たしていないことから、新たな施設を建設することとなりました。

狙いとしては、施設環境が良くないために「次は避難したくない」と思われ、避難が遅れることがあってはいけませんので、抵抗感なく避難しやすい施設となるように考えました。

センターには読書コーナーも設置。親しみやすさを考えての工夫だ(提供:熊野町)

ーー避難への抵抗感とはどういうこと?

行ったことのない場所に避難することに、抵抗を感じる方もおられます。日頃から利用していただける仕掛けづくりをし、町民に親しまれる施設となる必要があると考えました。避難所では「毛布一枚でフロアの上に寝る」ようなイメージがあることから、避難者用のマットなども整備し、避難しやすい施設となるように環境を整えました。


ーー西日本豪雨の時も抵抗感はあった?

あの時は抵抗感というより、大きな災害が少なかったために、避難への認識が薄かったのかもしれません。ただ、その後に台風などもありましたが、年数が経つと避難する人も減ってきます。知らない所にいきなり、避難するのは難しいことなのです。

西日本豪雨ではペットとの避難が課題

ーーペット避難エリアを設けたのはなぜ?

2018年の豪雨では、ペットとの避難も課題となりました。鳴き声や臭い、動物アレルギーなどの理由で、避難者間でトラブルが起きることもあったのです。「ペットがいるから避難できない」「よそのペットがいるから避難しない」とならないよう、ペットと飼い主が安全に避難できる「同行避難」ができないかと検討し、専用スペースを設けました。


ーーここでは具体的にどんなことができる?

人間の避難部屋とは別に、ペットのみを受け入れる部屋を設けています。また、屋外にはペットのための足洗い場やリードフックなども設置しました。

ペットの鳴き声などでトラブルに(画像はイメージ)

ーー乳幼児世帯の設備を重視したのはなぜ?

こちらも避難のしやすさを考えてのものです。町内のこれまでの避難所には、子供専用トイレはありませんでしたし、授乳室も後からの囲いなどで作ったものでした。日頃から訪れていただけることで、避難のしやすさにもつながると思います。

乳幼児世帯に配慮した「子供専用トイレ」(提供:熊野町)

住民が平常時も「行きたい場所」へ

ーーセンターにはどんな役割を期待している?

災害時には地域の防災拠点として、自治会、自主防災組織などと連携し避難所運営を行い、被災者支援を行う拠点となることを期待しています。平常時にはコミュニティの交流の場として、子供からお年寄りまでみんなが気軽に立ち寄れ、行きたい場所となる仕掛けづくりを行っていきたいと考えています。フリースペースもありますので日ごろから足を運んでいただき、地域の交流拠点として活用していただきたいと考えています。


ーー他の避難所もこのようにしていく予定?

熊野東防災交流センターは町の東部地域にありますが、今後は町の中央部、西部にも1施設ずつ、ペット避難、シャワー室、備蓄倉庫などを備えた地域の防災拠点となる施設を整備(既存施設の増改築)していく予定です。

 

これまでの避難所に比べて充実した環境を整えたのは、平常時から利用してもらうことで、災害時で避難が必要になった時の抵抗感を和らげたい狙いがあった。災害に対して早めの避難が呼びかけられる今、たしかに心理的な効果はあるかもしれない。

センターは緊急事態宣言の影響で臨時休館が続いたが、6月21日から一般利用が開始。公民館の役割も引き継ぎ、パソコン教室やヨガ教室などのグループ活動に使われているという。災害時にも平常時にも貢献していくだろう。
 

【関連記事】
実際に設置してみて感じた配慮…「コロナ禍の新しい避難所」感染対策やプライバシー保護に生きる過去の教訓
広島豪雨災害~命を守るために~