社員一人一人の居場所をモニターに表示するシステム

コロナ禍で時間と場所を選ばない多様な働き方が進む中、個人や組織のパフォーマンスの低下が懸念されている。

こうした中、清水建設は、時間と働く場所を選ばない、新たなオフィスのあり方「SHIMZ CREATIVE FIELD」を6月30日に発表した。

これは、コミュニケーションのハブ(=中核)となる本社や支店、サテライトオフィスや自宅などで勤務する社員をデジタル技術で結び、あたかも一つのオフィスにいるような感覚で一体感をもって、仕事ができる大きな“仮想”空間のこと。

位置情報システムで個々の社員を認識し、社内の座席配置を表示したモニターに社員一人一人の居場所を表示。

個人のプライバシーを守りつつ、オフィスの状態をライブ配信できる。

位置情報システムの表示モニター(提供:清水建設)
位置情報システムの表示モニター(提供:清水建設)
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また、フロアのレイアウトをパソコンやスマートフォン、タブレットで共有することも可能。

画面上で社員一人一人の居場所や各ゾーンの空き状況を確認でき、氏名を入力すると、その社員の居場所を検索することも可能だ。このため、リモートワークの社員も同じ空間にいるような感覚で、同僚や上司の居場所や仕事の状況を確認できる。つまり、社員は互いに、パソコンやスマホで居場所を確認できるということだ。

また、位置情報システムにより、会議室内の人数を把握できるので、収容人数に応じて、換気量を調整することも可能だという。

清水建設はこのシステムを5月6日に導入し、本社の一部フロアを全面改修した。

改修前のフロア(提供:清水建設)
改修前のフロア(提供:清水建設)
改修後のフロア(提供:清水建設)
改修後のフロア(提供:清水建設)

このシステムによって、互いに居場所を確認できるということだが、どのような狙いがあるのか? また、社員にとっては居場所が常に知られてしまうことになるわけだが、不都合なことはないのか?

清水建設の担当者に話を聞いた。

狙いは“一体感の醸成”

――現状、清水建設ではどのぐらいの社員がリモートワークになっている?

コロナ禍で本社勤務者については、3割出社が目標です。


――「社員は互いにパソコンやスマホで居場所を確認できる」という、このシステムの狙いは?

“一体感の醸成”です。

コロナ禍でリモートワークの導入が進みましたが、このような時間と場所を選ばない働き方は、社員の帰属意識の低下が懸念されています。

リモートワークになると、疎外感を感じるそうです。このシステムがあれば、個々の居場所や社員の状況(一人、会議中、会話中、リラックス中など)がリアルタイムに分かるので、リモートワークの社員と、出社した社員を画面上で結び付けることができます。


――自分の居場所が知られてしまうことで社員に不都合は?

顔写真と居場所がモニターに表示されるだけなので、問題ないと思います。また、昼休みなどの勤務時間外の時間帯には、タグを外せば、位置情報システムからは追尾されません。


――「位置情報システムにより、収容人数に応じて、換気量を調整」。これは現状、どのように運用している?

基本的には人数の管理になっていまして、会議室の中にいるのが3人までなら換気を「弱」、4~7人は「中」、8~10人は「強」にするなどです。また、CO2濃度の測定も行っており、人数に関係なく1000ppmを超えたら、換気量を最大にしています。

「コミュニケーションのきっかけ作りに役立っている」

――社内にこのシステムを導入したのはいつ? 

5月6日からです。ゴールデンウィーク中に改修工事を行いました。


――社員の反応は?

社内のスペースを上手く使って、多様な打ち合わせをしています。位置情報システムは、コミュニケーションのきっかけ作りに役立っているようです。

また、氏名を入力すれば居場所を検索できるので、フリーアドレス(=職場で従業員の席を固定せず、空いている席を自由に使う制度)では、とても便利です。


――ネガティブな感想は?

ないと思います。


――このシステム、今後は外部にも販売?

9月頃から顧客を対象にした、社内の見学会を始める予定です。


リモートワークなどによる社員の帰属意識の低下が懸念される中、社内の一体感の醸成のために清水建設が提案している、このシステム。社内で導入後、2カ月ほどが経つが、コミュニケーションのきっかけ作りに役立っているとのことだ。

コロナ禍で社員同士のコミュニケーションが減ったという会社は、導入を検討してみてはいかがだろうか。

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プライムオンライン編集部
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