がんと闘う母を見てウィッグの開発に着手

黒やピンクなどずらりと並べられた帽子。これは、抗がん剤の治療を受け髪が抜けてしまった人のために作られている。

そこには「がん患者のおしゃれを手助けしたい」という開発者の思いが込められていた。

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90代女性:
これすごくいい。違和感ないし、夏でもむれないから。気に入っています

50代女性:
肌触りもサラサラでチクチクせず、かぶりやすい。気分的に明るくなる

この帽子の名は「ツーリーフキャップ」。

手がけたのは佐賀市で美容院を営む荒川国子さん(56)。美容院の名前Futaba(フタバ)にちなみ、2つの葉=ツーリーフと名付けられた。なぜツーリーフキャップを開発したのか。

美容院Futaba・荒川国子社長:
母もがんだった。女性の大事な髪まで抜けてしまう…そのつらさに対して、何か美容師として支援できないかなと思ったのがきっかけです

荒川さんの母・マツエさんは約30年前に胃がんに。

「私にできることはないのか」がんと闘う母を見て、10年前からウィッグの開発に着手。これまで8種類ものウィッグを生み出し、約80人に提供してきた。

“特殊な糸”で暑い時は熱を逃がし、寒い時は保温

ツーリーフキャップは、ウィッグの内側につけるインナーキャップを改良した後に思いついたもので、商標登録されている。

堀江舞アナウンサー:
通気性が良くて気持ち悪さは全く感じません。手でずらそうとしても全く動かないので、非常にかぶりやすいですし、かぶり心地がいいです

そのかぶり心地の良さの秘密は、素材と編み方にある。糸は宇宙服に使われている特殊なもので、暑い時は熱を逃がし寒い時は保温してくれるため、1年中快適に過ごせる。

また、通常は2枚の布を縫い合わせるため、縫い目に凹凸ができ痛みを感じることもあるが、ツーリーフキャップは特殊技術によって縫い目がなくなるため、頭皮の痛みを感じない。

「笑顔を取り戻したい」がん患者に寄り添う荒川さんの活動

美容院Futaba・荒川国子社長:
私が作ったもので、がん患者さんが喜ぶ顔が見られるというのが1番の原動力です

これまでの活動が高く評価され、2020年12月には女性起業家を表彰する全国大会「J300アワード」で「後継ぎウーマン賞」を受賞。

さらに2021年1月には、がん治療に不安を抱える人の相談に応じるNPO法人も設立するなど、荒川さんの取り組みは商品開発にとどまらない。

50代女性:
支えになって励ましの言葉をもらって、心が軽くなって。誰かに思いを聞いてもらったというのが、すごく嬉しくて助けられています

ウィッグの開発から始まったがん患者への支援。「患者の笑顔を取り戻したい」という思いが、荒川さんを突き動かしている。

美容院Futaba・荒川国子社長:
がん患者さんは、自分の悩みを伝えることができないことがある。家族の方が患者さんにどう接していいかわからない、そういうことまで支えていけるような社会になれば

(サガテレビ)

サガテレビ
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