福島・会津若松市に住む80代の女性も、「自分は大丈夫…」「なりすまし詐欺には騙されない」…そう思っていた。

「騙されない」と思っていても騙される

2021年5月25日。「あの~今、駅にいるんだけど。ちょっとお腹痛くなっちゃって」と自宅にかかってきた一本の電話。
大阪にいる孫を名乗る男から、東京駅で携帯電話・財布・茶封筒が入ったカバンをなくしたという内容だった。

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80代の女性:
「お腹痛くてさ~」といった声が、孫の声だと思ったのね。昔、孫がお腹痛いとかいうと「赤玉ちょうだい」とか言って飲んでたから

幼い頃、腹痛を訴え、よく薬を飲んでいた孫。
その思い出が蘇り、女性は電話の相手は孫と信じ込んだ。その後、"孫”は「遺失物係のハラダ」という人物と電話を替わり、携帯やカバンは見つかったが茶封筒がないと話した。

80代の女性:
茶封筒には、300万を今日中にやらないとダメな用紙が入っているんだって。300万はない、50万だったらあるっと言ったら、50万でもいいからっていうから

女性は孫を助けたい一心で、すぐにタクシーを呼び、現金を引き出そうとATMがあるスーパーへ向かった。

タクシー運転手の説得で踏みとどまる

当時乗ったタクシーでのやり取りがドライブレコーダーに残っていた。

80代の女性:
孫の声で間違いねえ

葵タクシー・折笠浩二さん:
オレオレ詐欺じゃねえのかよ

80代の女性:
独特の声だから間違えねえ

運転手は説得を続ける。

80代の女性:
声がうちの孫だから

葵タクシー・折笠浩二さん:
大丈夫かよ。万が一のことがあるから、誰かに聞いたほうがいいんじゃねえのかよ。お母さんとか。本人じゃねえと、絶対渡さんなよ

当時、女性を乗せた折笠浩二さん。

葵タクシー・折笠浩二さん:
これはひょっとして詐欺ではないかなと思いましたね。頭の中が孫さんのことばっかりだったみたいで、絶対渡さないでほしいなと思いましたね

女性は現金50万円を引き出し、自宅に戻る間も折笠さんの説得は続いた。

葵タクシー・折笠浩二さん:
お金絶対渡してダメだよ

80代の女性:
うん。本人来ないと渡しません

葵タクシー・折笠浩二さん:
絶対に渡さないで

月1回の頻度で声を聞いていても…

女性はその後、娘に連絡。本当の孫とも話したが…

女性の娘:
本人混乱しちゃったみたいで。本当の孫と話しているのに、あとから私に「孫の名前かたって、また違う人から電話来たんだ」っていうんですよ。だから「それが本当の孫だから」って言うんだけど、「いやっ」とかって言って

孫:
1か月に1回くらいの頻度では電話したりはしていたんですね。なので自分の声を聞けば、わかるだろと思ったんですけど

それでも孫は、親戚の名前を挙げたり、カバンなど無くした事実はないと時間をかけて伝えた。
すると再び電話が…右手に本当の孫、左手に偽物の孫という奇妙な状況に。

孫を語る男からの電話:
僕取りに行くって言ったんだけど、ちょっといけなくなっちゃって

偽物の孫は、信頼できる「郡山のヨシダ夫婦が代わりに取りに行く」と話を続けた。

80代の女性:
「うるせえ!この詐欺師!本人来ないと渡さないって言ったべ!もしそんな金欲しいんだったら、自分で来て母様と相談直接しろ!」って言って切っちゃったんですよ

女性は男を一喝。その後、電話が来ることはなかった。

80代の女性:
運転手さんがものすごく心配して、ダメだからと言ってくれた。やっぱり詐欺だったんだな。こんな風にして、みんな引っかかんのかよって思った

孫:
人を疑うのは嫌な世の中だと思うんですけど、家族同士と思った会話でも、お金の話が出たら疑う心をもって過ごさなくちゃいけないのかなと思いました

女性はなぜ騙されそうになったのか?
騙しの手口や被害者の心理を研究する専門家は指摘する。

立正大学心理学部・西田公昭教授:
確証バイアスっていいますけれども。私たちは息子かどうか、あるいは孫かどうか判断する時は仮説を立てているんですよ。音声の高さとかピッチとか、ちょっとした手がかりが一部でも見つかりますと、もう間違いないと思い込んでしまって、あとはもう話の内容にばかり注目して、本当に息子なのか孫なのか確認をするというような、頭の作業はしなくなってしまいます

タクシー運転手による繰り返しの説得、そして家族の連携で被害を防ぐことができた今回の一件。

しかし、実際に被害にあった人は、家族から責められ、自分を追い込み塞ぎこんでしまうこともあるという。
お金以上に大切なものを失わないように、日ごろから家族や地域とのコミュニケーションが被害を防ぐために必要となる。

(福島テレビ)