石鹸からアンモナイトがごろり

マスクの着用や三密の回避など、基本的な予防法が大切な、新型コロナウイルス対策。

手指用の除菌スプレーやジェルなどを常に持ち歩いているという人も多いだろうが、手洗いも重要な予防法のひとつであることは言うまでもない。

そんな中、Twitterに「毎日の手洗いを楽しくさせる石鹸」が登場し、話題となっている。

「毎日の手洗いを楽しくさせる、をコンセプトに石鹸を製作しました。 使い続けると中から化石や天然石が段々と姿を現します」

一見、ただの石のように見えるこの石鹸を作ったのは、多摩美術大学に在籍するS.iijima (@iijimart) さん。

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ケースには「FOSSIL in the SOAP(化石入り石鹸)」と書かれているが…その通り、アンモナイトなどの化石や天然石が埋め込まれており、手洗いのたびに少しずつ“発掘”されていくというアイテムとなっているのだ。

早く発掘したいとの思いから、いつも以上に手を洗う人も出てきそうな仕上がりとなっている。

「おしゃれ!買いたい!」「遊び心にやられました」などのコメントが寄せられ、17000いいねが集まるなど注目されているこの“化石入り石鹸”。(6月14日現在)

確かに手洗いのたびワクワクできそうな石鹸だが、このアイデアはどこから生まれたのだろうか? 作者のS.iijimaさんにお話を聞いた。

「ハンドソープが億劫」だった幼少期の記憶がアイデアに

――この石鹸を作ったきっかけは?

きっかけは、コロナ禍で自分が幼少期にハンドソープを億劫であまり使わなかったことを思い出し、同じような考えの人に楽しんで、積極的に使ってもらえるような石鹸を製作しようと考えたことです。


――「石鹸から化石を発掘する」アイデアはどこから?

アイデアは、同じく幼少期のころ好きだった化石や天然石などの鉱物が好きだったところから来ました。当時よく土の塊から宝石を掘り出すキットやおもちゃが入ったバスボールを買ってもらって遊んでいたので、そこから着想を得ました。


――化石入り石鹸はどうやって作るの?

市販の石鹸を溶かし、石の形をしたレジン型に流し込み、中央に化石を入れ込む、という流れです。


――こだわった点はどこ?

市販の石鹸は大きく純石鹸と、ハンドメイドにもよく用いられるグリセリンが主の石鹸の2種類があるのですが、石っぽさを演出するために色むら、溶け具合のバラつきを作るため、溶かしづらい純石鹸を選びました。このことで自分の想像した見た目のものが完成できました。

しかし純石鹸は乾燥したとき変色しやすく、水分量・溶かす時間の調節が難しく、思い通りのものを作るのに少し手こずりました。

天然石入りの「ホワイト」タイプはカラフルな仕上がり
天然石入りの「ホワイト」タイプはカラフルな仕上がり

子どもの頃好きだったという化石や天然石といった鉱物と「ハンドソープを使って手洗いするのが億劫だった」という実体験の組み合わせから生まれたという、この石鹸。

実は学校の課題のために作られたもので、試行錯誤の末、発掘されていく過程を説明するための「ブラック」3つ、3種類のカラーバリエーションがある「ホワイト」3つの、計6つを完成させたそう。

ちなみに「ブラック」には直角貝とアンモナイトの化石、「ホワイト」にはアメジストが入っているとのことだ。

写真中央が「直角貝」、右が「アンモナイト」の化石入り
写真中央が「直角貝」、右が「アンモナイト」の化石入り

――他にはどんな化石を入れる予定だった?

製作前の計画の段階では、サメの歯や恐竜の歯など、一目でなんの化石か分かるものも入れようかと考えていたのですが、使用して石鹸が小さくなり、中身が見えてきた時に怪我をする恐れがあるため、尖った物を入れるのはやめました。

天然石も同様に、当初は発掘感を演出するために結晶状のものを入れたかったのですが、加工後の角が削られたものに変更しました。使用していく過程のビジュアルの説明は、ブラックの方で充分だと思い、実際に作成したホワイトはアメジスト1種類中に入れたもののみでしたが、化石に比べ形に融通が効くため、色々なものを入れることが出来ます。

アメジスト入りの「ホワイト」タイプ。あと少しで発掘できそう
アメジスト入りの「ホワイト」タイプ。あと少しで発掘できそう

ひとつひとつは手のひらサイズと小さめだが、“発掘作業”のワクワク感だけでなく、“本物の石っぽさ”を追求したビジュアルは子どもだけでなく大人でも手洗いの時間が楽しくなりそうな気がする化石入り石鹸。

「手を洗っているうちに、石にガリッと引っ掛けちゃいそう…」という声もわずかに聞こえていたが、実は安全面にも配慮がされていた。

ドット絵で作られた「古生図鑑」。こちらも課題作品だという
ドット絵で作られた「古生図鑑」。こちらも課題作品だという

小さいころから「恐竜や古生物を昔から魅力的に感じていた」というS.iijimaさん。自身のTwitterアカウントに掲載している作品たちには古生物をモチーフとしたものも多いことから、化石入り石鹸にもその愛情が感じられる。

ちなみに、Twitterでは「販売してほしい!」の声も多数挙がっていたが、量産が難しいことなどから、現段階では予定していないそうだ。

こちらもドット絵のアンモナイトたち
こちらもドット絵のアンモナイトたち

――大きな反響があったが、感想は…

想像していたよりとても多くの方に反響をいただけたので正直驚いています。とても嬉しいです。最初のコンセプト通りしっかり完成させられたので、今後の制作活動にもこの経験を活かしていきたいです。


コロナ禍をきっかけに、幼少期の思い出と掛け合わせて生まれたアイデア石鹸。販売予定がないということが少々残念だが、毎日の手洗いが楽しくなるヒントをもらえたのではないだろうか。

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プライムオンライン編集部
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