新型コロナウイルスのワクチンは今月21日から職場や大学での接種が可能となり、事実上、一般への接種がいよいよスタートする。さらに国内で少なくとも1回接種した人の数が1000万人を超えた。政府関係者が「全員完了まで突っ走って」と期待を込める中、果たして菅首相が掲げる1日100万回接種の目標、そして7月末の高齢者接種の完了は実現するのか。これまでの動きと今後の課題についてお伝えする。

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モデルナ製による職場での接種“解禁”で新段階に

高齢者への7月末までの接種完了という目標を達成するため、政府は手を止めることなく新たな対応策を表明している。その1つが職場での接種の推進だ。

これまでは政府が定めた医療従事者、高齢者、基礎疾患のある方、そして一般の人という接種順位に基づき接種を行ってきた。企業関係者などからは「特定の業種について優先接種をしてほしい」といった要望が寄せられていた。それでも政府関係者は、「一つ認めると全て認めないといけない」として特定の業界への優先接種について否定的な見解を示してきた。

しかし5月にモデルナ社のワクチンが正式に承認されたことで十分な供給の見通しが立ったことから、今回、高齢者の接種完了を待たずに職場や大学での接種を認めることになった。すると早速、多くの企業から職場での接種の希望が殺到しているということで、政府関係者は、希望する会社すべてを21日から始められるか微妙になってきている、と歓迎と戸惑いの声をあげている。

ポイントは接種チャンネルの拡大、河野大臣も柔軟姿勢

これまで政府関係者は、接種の加速化には、「接種のチャンネルを広げることが大事だ」と強調し、5月24日にスタートした政府が運営する自衛隊の大規模接種センターを皮切りに、群馬や愛知などでの県独自の接種会場設置を後押ししてきた。また福岡市が夜間に保育士や教員などに接種することを検討していることについて、河野大臣は「自治体トップの裁量でやってもらって構わない」と述べ、7月末までの高齢者接種完了を前提として、自治体独自の優先接種枠の導入を認める考えを示した。

さらに河野大臣は1日の記者会見で「ソフトバンクの孫社長からは『東京などの大規模接種会場を開き、医療従事者を打ち始め、その後一般もやりたい』と。こういう社会貢献型の企業も大いに歓迎したい」と、ソフトバンクグループなど民間による独自の優先接種会場設置の動きを支援していく意向を明らかにした。

また、大学を会場とした学生らへの集団接種に関して政府は、東北大学や広島大学など7つの大学で先行して実施する方向で調整に入りました。これらの大学は国立大学で、政府の調査に対し、速やかに対応することが可能だと回答している。

菅首相が、「これからの三週間は、感染防止とワクチンの二正面の作戦の成果を出すための極めて大事な期間と考える」と述べるように、ワクチン接種をいかに加速化できるか、まさに今が正念場だ。

1回接種1000万人突破、菅首相も毎日実績チェック

では一体、何が課題なのか、接種実績をもとに見ていく。まず接種人数は、少なくとも1回接種した人がようやく1000万人を突破した。

480万人の医療従事者は、少なくとも1回接種した人は95%を超え、2回接種完了までもう一息だ。高齢者については、3600万人の高齢者のうち少なくとも1回接種した人は全体の約15%。1日の接種回数の実績は医療従事者、高齢者を合わせると50万回前後の推移となっている。ちなみに、周辺によると菅首相も河野大臣もスマートフォンやパソコンで1日に何度も国内の接種実績をチェックしているという。

また、市区町村が行っている高齢者接種をめぐっては、総務省の調査に対し、目標の7月末までに終えられると答えた自治体が、98.7%の1718自治体に達した。政府による自治体への猛烈なプッシュが数字を押し上げたとみられる。

自治体間の競争意識で加速も

これまでの接種実績を都道府県別で見ると、和歌山、山口、鳥取、佐賀、高知などで、接種が早く進んでいる。政令指定都市などの大都市ほど接種が遅い傾向にあるが、大規模接種会場の開設で、今後どれだけ加速できるかがポイントとなる。

ある政府関係者は、「東京23区の接種状況は悪くなく、ほっとしている。区がそれぞれ競争しあっているのが効いているからだろう」と述べている。また、「岡山県は政府が都道府県別の実績を公表した当初から順位を数十位あげ、今は上位にランクインしている」とも語っており、この都道府県別の実績が今後の接種にどのような影響を与えるかもポイントだ。

別の政府関係者は「接種スピードは自治体によってかなり差があるが、接種が早い自治体から、全員の完了まで突っ走って欲しい。勢いを止めないで欲しい」と強調している。今後、自治体間の接種の進み具合の差が浮き彫りになっていく可能性もあり、自治体と県、それと国の連携の強化が問われている。

(フジテレビ政治部 阿部桃子)