起業家が起業家を育てる

先生は、会社を起こしたベンチャー経験者。四国・徳島県の過疎の町に、起業家が起業家を育てる学校が誕生する。

高等専門学校・神山まるごと高専
高等専門学校・神山まるごと高専
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20年ぶりに新設される高等専門学校・神山まるごと高専。技術教育が中心のこれまでの高専とは大きな違いがある。

神山まるごと高専・大蔵峰樹学校長:
起業家精神までも学べるようなカリキュラム構成となった高専となっています

コンセプトは、「テクノロジー × デザイン」で、人間の未来を変える学校。目標の1つは、起業家精神を育むこと。

カリキュラムは、国内外で250以上の広告・デザイン賞を受賞したアーティストで起業家の伊藤直樹さんが監修した。

起業家精神を育む教育とは?

起業家にまず必要なのは、モノをつくる力。そのため、プログラミングやAI(人工知能)を中心としたテクノロジーや言葉や形に表現し、課題を解決するデザインを学ぶ。

・そして、つくったものを発信するために必要となるのが、社会と関わる力
・自分以外の誰かを巻き込みながら大きく物事を動かし、目標を成し遂げる力

この2つの力を教えることで、起業家精神を育む。

学校が建てられるのは、徳島・神山町。緑に囲まれ、のどかな風景が広がる田舎町だが、この場所を選んだのにもある狙いがあった。

神山まるごと高専・寺田親弘理事長:
情報のノイズが少ない、自然に囲まれている、つまりは究めたい学問に対して集中しやすい
過疎の町として社会課題も多く存在している。学生が町に出て、学んだことを実践する実地型の教育に最適なフィールドだと考えている。

社会課題を抱える過疎の町で生活し学ぶことが、学生たちの大きな財産に。

神山まるごと高専・伊藤直樹カリキュラムディレクター:
自ら課題を発見して、社会に働きかけを行いたいというマインド、そしてそれを実現できるスキル、これを育てていきたいと思う

一方、立地する神山町側にもメリットがある。

年間3億円の経済効果

教員や学生の引っ越しやその家族の訪問、企業の視察などにより、年間3億円とも試算される経済効果が見込まれている。

また、既存の施設も有効活用。老朽化が進む中学校をリノベーションし、学生寮として再利用する予定だ。

神山まるごと高専・大蔵学校長:
新たな地方創生の形になるのではないかという中で、神山町という場所を選びました。ものづくりができる子たちが、社会とつながる力、いろんなことを表現したりとか形を作っていく力を持てば、これほど強いことはないと思うし、アメリカの西海岸などのITベンチャーとも戦える人材ができるのではないかと考えています

目指すは、日本のシリコンバレー。2023年春の開校を予定している。

様々な「イン・レジデンス」で町おこし

三田友梨佳キャスター:
このニュースについて、コミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さんに聞きます。山崎さんは実際にこの神山町に行かれたことがあるそうですね。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
はい、行きました。町内各地を案内していただいて、いろいろ見せてもらいました。この取り組みは一見、「起業家が起業家を育てる」のであれば、都会でやればいいじゃないか、と思われるかもしれません。ただ、この学校が「神山まるごと高専」と名乗るのには、町がまるごとキャンパスになっていくという思いがあり、さらにそこには会社を興すためのお手本となるような方々がいらっしゃる、この辺りが関係していると思います。かなり実践的な学びができて、この神山町というのは長い間、まちづくりを進めてきている。例えば、20年ぐらい前からアメリカにシリコンバレーがあるんだったら神山にグリーンバレーを作ろうと言って、地方創生、町おこしの種をまいた方々がいるんです

三田キャスター:
まかれた種はいまどのように育っているのでしょうか?

山崎亮氏:
まずアーティストが町に住んで作品を作っていく。これは「アーティスト・イン・レジデンス」という風に言われますが、これをやった上で光ファイバー網を整備していきます。こうすると遠隔の人達がサテライトオフィスとして町で働くことができようになる。これは、「ワーク・イン・レジデンス」と言われます。そうすると200人ぐらいの若い人達が町に住んで働くことになります。その若い人達が安心安全な食べ物を食べたいと言えば、地域の人達がオーガニックな農業を始めようかとか、冬の暖房は木質チップに切り替えたいと言うと、林業再生に繋がっていく。こんなことに発展していきます

三田キャスター:
山崎さんは今後この学校で育った若者にどんなことを期待されますか?

山崎亮氏:
神山から世界に飛び出していくことも期待したいですが、できればこの過疎の町で新たな種を蒔く人達になって連なっていって欲しいなと思います。先進的取り組みをしている神山町ですが、まだ解決する課題はたくさんあるはずなので、それをビジネスの中でうまく発見して解決していく人が育つといいなと思います

三田キャスター:
最初の卒業生が誕生するのは2028年ということで、自然豊かな神山の地でどんな起業家が育つのか楽しみです

(「Live News α」5月21日放送分より)