77歳で人生の幕を下ろした俳優の田村正和さん。
生前に語っていたのは知られざる苦悩だった。最後までスターであり続けた俳優の引き際をどのような覚悟で貫いたか。
「古畑任三郎は訳の分からない男」
4月3日、心不全のため都内の病院で亡くなった俳優の田村正和さん。
77年の生涯で記憶に残る多くの役を演じた。
1994年に始まった古畑任三郎シリーズ、最高視聴率34.4%を記録し、12年にわたって放送された。
独特の語り口としぐさ、犯人をじわりじわりと追い詰めていく警部補・古畑任三郎について田村さんはこう語っていた。
田村正和さん(2004年1月放送):
こんなに長くやるとは思っていなかったですね

ーー田村さんから見た古畑とは?
田村正和さん(2004年1月放送):
古畑っていうのは、訳の分からない男ですからね。どんな生活をしてるかどこに住んでるか、年もとらないということですかね

2004年1月に放送されたスペシャルでは、シリーズ初、古畑任三郎の単独捜査で犯人役の松本白鸚(当時松本幸四郎)さんと対決した。
毎回、犯人役の豪華なキャスティングも見どころの一つだった。
芸能一家で育った過去を振り返る
1943年8月1日、昭和を代表する映画スター阪東妻三郎さんの三男として生まれた田村さん。
兄・高廣さん、弟・亮さんも俳優という芸能一家で育った。

1961年、高校在学中に映画「永遠の人」で本格デビュー。
しかし、当時をこう振り返っていた。
田村正和さん(2007年6月13日「とくダネ!」放送):
親父の七光りが当時すごくて、基礎も何もできてない男に主演映画を4,5本用意してくれたんです。何もできない男ですからことごとく当たらなく失敗した
華々しくデビューしたものの、後に自ら「ことごとく失敗」と評価。そして、軸足を映画からテレビへと移していた田村さん。
田村正和さん(2010年11月21日「ボクらの時代」放送):
その頃のドラマに出ている方が、俳優座の方とか民芸の方、ああいう演技の訓練をした方がズラっと並んでいるわけですよ。その中に放り込まれて、本当に恥ずかしくなりましたね。
でもうまい俳優さんたちに囲まれて、自分はこれじゃダメだと思いはじめたことが救いですね。
「現代劇も時代劇も十分やったと思う」
テレビドラマで確固たる地位を築いた田村さん。その一方で、意識していたのは俳優としての”引き際”だった。

2018年2月に放送された「眠狂四郎The Final」、これが最後の出演作品となった。
田村正和さん(2017年6月8日「ノンストップ!」放送):
現代劇にしても時代劇にしても、十分やったんじゃないかなと自分では思ってるんです
約60年にわたり俳優として活躍し続けた田村さん。バラエティー番組には出演せず、私生活を感じさせない最後まで「スター・田村正和」であり続けた。
田村正和さん(2017年6月8日「ノンストップ!」放送):
だいたい僕姿勢が悪いから…
ーー立ち姿がセクシーだなと
田村正和さん(2017年6月8日「ノンストップ!」放送):
ふふふ…ありがとう

(「イット!」5月19日放送より)