サッカーボールでのヘディング練習は小5から

2020年にイングランドサッカー協会が、子どもたちのヘディングを禁止することを決めるなど、ヘディングへの対策が世界的に進んでいる。

スコットランド、イングランドなどのサッカー協会は、若年代でのヘディングの禁止と段階的なヘディングの導入のガイドラインを策定した。またアメリカでは、練習や試合でのヘディングの禁止や制限がされているという。

こうした中、日本サッカー協会が5月13日、ヘディングの練習が子どもの脳に悪影響を与える恐れがあるとして、ガイドラインを発表したのだ。

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ガイドラインによると、「幼児期」は、風船や新聞ボールなどを額に当てる程度。「小学1・2年生」は、軽量ゴムボールを10回、額に当てる程度。

「小学3・4年生」では、軽量ボールなどを使用して正しいヘディング技術の習得の導入を行うが、サッカーボールでの反復練習は行わない。

「小学5・6年生」から、徐々にサッカーボールでの反復練習を取り入れることを推奨していて、「徐々に4号球(重量:350-390グラム)を使ったヘディングを導入する」と記されている。

また、ヘディングのリスクについては、「ヘディングの反復が認知機能に及ぼす影響の検証は非常に難しく、禁止の根拠となっている研究も、他の要素との関連の判断が難しい。検証には引き続きの研究が必要である」としている。

要するに、今のところ、科学的根拠が十分ではないということだ。ではなぜ、根拠が十分ではない状況でこのようなガイドラインを策定し、発表したのか?

日本サッカー協会の広報担当者に話を聞いた。

「脳に与えるリスクはゼロではありません」

――ガイドラインには、ヘディングのリスクについて科学的根拠が十分ではないことが示されている。根拠が十分ではない状況でこのようなガイドラインを示した理由は? 

イングランドサッカー協会は去年、11才以下のヘディングの練習を原則禁止とするガイドラインを発表しました。日本サッカー協会でも以前からヘディングの安全性や認知機能に及ぼす影響の検証は行ってきました。

医学的観点と指導・選手育成の観点、それぞれの分野での専門家の研究結果、知見を総合して、ガイドラインを策定し、発表に至りました。

低年齢の子どもが、通常のサッカーボールでヘディングを過度に繰り返し行うことによる衝撃が、脳に与えるリスクはゼロではありません。一方で、禁止することによって、将来のリスクを高める(正しくヘディングができない、競り合いでのコーディネーションが悪いことで、障害を引き起こす)可能性もあります。 

また、ガイドラインは最終形態ではなく、今後も引き続き、関係各所と連携を取りながら、新たな検証結果が出ましたら、随時ガイドラインも更新していきたいと思います。 


――これはあくまでもガイドライン。ヘディング練習を禁止するものではない?

はい。禁止するものではなく、より適切な方法による、ヘディング技術を習得するためのガイドラインです。

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「小学5・6年生でほとんどのゲームが8人制」

――サッカーボールを使ってのヘディング練習を推奨するのは小学5・6年生から。この理由は?

日本サッカー協会では、低年齢での少人数サッカー(スモールサイドゲーム)を推奨しています。 

幼児(6才以下)、あるいは小学1・2年生では、ピッチサイズも1チームあたりの人数も少なく(3~5 人)、 小学4年生(10才以下)まではサイドラインからのリスタートはスローインでなく、キックイン、ドリブルインで、少人数サッカーのゲームではほとんど、意図的にヘディングでプレーすることはありません。 

ところが、小学5・6 年生(12才以下)ではほとんどのゲームが8人制になります。

そのため、ゴールキック、ゴールキーパーからのハイパントキック(高くボールを蹴り上げるキックのこと)に対処するために、主にセンターバックのポジションのプレーヤーがヘディングする機会が重なることがあります。

また、この年代からヘディングの巧拙(上手か下手か)がはっきりし始めるため、空中にあるボールを手でプレーすることを中心に、2人で同時にジャンプしたり、空中のボールを手で取り合うといった運動を行うことで、空中でのプレー感覚を身につけ、正しく、怪我なく、ヘディングができるようになってもらいたいと考えています。


――サッカーボールを使ってのヘディング練習。どのような方法を推奨している?

徐々に4号球を使ったヘディングを導入し、頭部への負荷(衝撃と頻度・量)を考慮して、実施することを推奨しています。 

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子どもの脳に悪影響を与える恐れがあるという、ヘディングの練習。科学的根拠はまだ十分ではないとのことだが、子どもたちがサッカーを安心・安全に楽しんでもらうためにも、日本サッカー協会が発表したガイドラインに則って、指導することが大切だろう。

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プライムオンライン編集部
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