猛威をふるう変異ウイルス

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今月12日、専門家組織の会合で明らかになった変異ウイルスの実態。全国で90%以上が、従来株から“感染力が強い”とされるイギリス由来の変異ウイルス「N501Y」に置き換わっています。また、厚労省の発表では、変異ウイルスの感染者は11日までの1週間で過去最多の5426人に。

インドの未曾有の感染爆発を引き起こしている変異株についても、検疫と国内で併せて70人を確認したことも明らかになりました。そんな中、横浜市立大学の研究チームが発表した、変異株についての”期待の持てる“研究結果。研究チームの山中竹春教授がスタジオで解説しました。

既存のワクチン 90%以上で変異ウイルスに対する抗体

これまでワクチンの効果が下がる恐れも指摘されてきた変異ウイルス。しかし、今回横浜市立大学の研究チームが発表した研究結果では、既存のワクチンを2回接種した人のうち、90%以上で変異ウイルスに対する抗体ができたといいます。つまり、「変異ウイルスにワクチンは有効」という、従来あった懸念を覆す希望の持てる結果が出たと言えます。

今回の治験の対象になったのはすでにワクチンの接種を終えた医療従事者105人。2回のワクチン接種後、それぞれの血液を採取し、その血液に変異ウイルスの疑似ウイルスを加え、感染しなければワクチンは有効であるという治験です。

ワクチンによる中和抗体と変異ウイルスの模型
ワクチンによる中和抗体と変異ウイルスの模型

ワクチンを接種すると「中和抗体」というものができ、ウイルスの突起にくっついてヒトの細胞にウイルスが入り込むのを防ぎます。つまり、中和抗体によってウイルスの感染を抑えることができるのです。これまでは「変異ウイルスに中和抗体は効かない」などどいわれてきましたが、今回の研究で有効性があることが分かりました。

横浜市立大学 山中竹春教授:
中和抗体がもつスパイクタンパク質の目印の種類はたくさんある。スパイクタンパク質(ウイルスに付いている突起)の一つや二つが変異をしても問題ないだろうという説を、今回の実験で確認できた。

今回の実験では本物のウイルスを使わずに疑似ウイルスを使った実験ですが、どれくらいウイルスを再現できているのかを解説してもらいました。

横浜市立大学 山中竹春教授:
今回疑似ウイルスを使ったのは、中和抗体を測るスピードが、生ウイルスの40倍と圧倒的に速く測れるため。どのくらい再現できているかについては、生ウイルスを使った実験と疑似ウイルスを使った実験で完全にデータがほぼ一致することを確認しているため、我々の体の中での感染の状況を再現できているという風に考えられる。

今後新しい変異株が確認されたら?

しかし、コロナウイルスは2週間に1回変異を起こしていくウイルス。その度に感染力が強くなったり、ヒトの免疫を免れるようになるなど、ウイルスが生き残るために有利な変異を繰り返していくため、私たちにとってはどんどんやっかいなウイルスになっていく可能性もあります。新たな変異が確認されたらどうしていくのか、山中教授に聞きました。

横浜市立大学 山中竹春教授:
新たな変異株が確認されたら、各変異株に特徴的なスパイクタンパク質をもとに疑似ウイルスを再現できる。その上で感染実験をすることで、新たな変異株へのワクチンの有効性を調べることができる。

また、今回はファイザー社のワクチンを使っての実験でしたが、他のワクチンを使ったときにも同じような結果が出るのか聞くと。

横浜市立大学 山中竹春教授:
まだモデルナやアストラゼネカのデータが十分にないが、海外の検体でモデルナ社のワクチンを接種した人の血液を解析すると、ほぼ今回の結果と似たようなデータを得ているので、やはり他社のワクチンも変異株に有効なのではないかと考えている。

ウイルスが変異していく中で、今あるワクチンが有効に働く可能性が極めて高いことを示した今回の研究結果。ワクチンに対して希望を持てる材料のひとつになりそうです。

(「めざまし8」5月13日放送)

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