島根県出雲市に構える人気の窯元・出西窯(しゅっさいがま)で、即完売するという注目の商品が誕生した。
ターゲットは、「人」ではなく「ペット」だというその新商品とは。
即完売の“キャットボウル”…ターゲットは猫
この記事の画像(10枚)深みのある色合いに、吸い込まれそうになる光沢「出西ブルー」。
シンプルなデザインが人気の出西窯。出雲市斐川町に工房がある。
その窯元で人気だという新作の商品。
珍しい形をした器だが、ターゲットは「人」ではなく猫。
出西窯で飼われている2匹もお気に入りの「キャットボウル」。
オンラインショップでは、東京を中心に注文が相次ぎ、1週間もたたずに最初の販売分約80個が完売した。
なぜ猫をターゲットに? 「自分にできることは…」
70年以上の歴史がある出西窯だが、人間以外をターゲットに商品をつくったのは初めて。なぜ猫をターゲットにしたのか。
出西窯 陶工・中鉢耕助さん:
何か猫のためになっているなという満足感とともに、この器がずっと使われ続けたら、これに勝る喜びはない
キャットボウルを製作した陶工・中鉢さん。作業スペースには、きっかけとなった猫の写真が飾られている。
出西窯 陶工・中鉢耕助さん:
出西窯の寮で僕が一緒に暮らしていた猫がいた。年を取って腎臓を悪くした。亡くなる1週間前とかは、ろくに水も食事も取れなくなって、かがむのがものすごくつらそうだった
自分にできることはなかったのか。その時、目に飛び込んできたのが…
出西窯 陶工・中鉢耕助さん:
高さがある器のほうが猫の体に優しいという記事を見た。自分は焼き物屋なので、作ろうと思った
試行錯誤重ねて2年…猫に負担の少ない器を
ヒントになったのは、猫の体の構造。
猫は、食道から胃までがまっすぐになっている。そのため、食器の位置が低いと食道が曲がってしまい、吐き戻しの原因になってしまうと言われている。
中鉢さんは、これを参考に、猫に負担の少ない器作りを始めた。
今飼っている猫たちに実際に使ってもらいながら、試行錯誤を重ねること約2年。やっと納得のいく形にたどり着いた。
その高さは16.5cm。
一般的なペット商品にはない、「癒やし」もかもしだしている。
かがまずに食べる姿を見ていると、猫だけに「きゃっと」食べやすいはずだ。
出西窯 陶工・中鉢耕助さん:
猫という全く新しいターゲットでモノを作ったが、それが猫であれ人であれ、使って心地良いと思えるものを作り続けていくことにおいては変わらない。今の暮らしの中でどういったものが求められるのかということを、模索し続けることが必要だと思う
ニーズは人だけにとどまらない。
伝統工芸の新たな挑戦が始まっている。
(TSKさんいん中央テレビ)