中学校の建設予定地に遺跡

高知県安芸市で見つかった約1300年前の遺跡。
全国的にも珍しいものが出土し話題となっているが、地元ではある議論を呼んでいる。

安芸市の市街地から北に約3キロ、僧津地区で発掘調査が進む「瓜尻遺跡」。1300年ほど前の飛鳥時代から奈良時代にかけての遺構が見つかっている。

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発掘調査では瓦が大量に出土した。原形をとどめた丸い瓦など興味深い出土品が見られる。

瓦が大量に出土
瓦が大量に出土

安芸市立歴史民俗資料館 仙頭由香利さん:
土器などの遺物が少ないのが特徴

もしここが集落であれば、生活に使われていた皿や壺などの土器が多く見つかるはずなのだが、ここは土器の出土が少ないことから古代律令制の「官衙」、つまり役所の跡ではないかと考えられている。
中でも注目されるのが「井戸」とみられる遺構だ。

安芸市立歴史民俗資料館 仙頭由香利さん:
古代の役所の関係なのか、神聖な祈りの空間ではないか

直径9.5メートルもの巨大な穴。中心の井戸を囲むように掘られた外側の部分で、その大きさは日本最大級だ。中心部分にある井戸は四角い形で、石や木で四方が囲われている。

中心部分にある井戸は四角い形で石や木で四方が囲われている
中心部分にある井戸は四角い形で石や木で四方が囲われている

木の枠は湿気が多い粘土質の土に埋まっていたため、乾燥して朽ちることなく残っていた。
井戸ということは、ここで人が生活していたのではないかと思ってしまうが、実はそうではない。

そのヒントはここの地区の名前に隠されていた。ここ「僧津」地区は海から4キロほど入ったところにも関わらず「津」という文字が入っている。
つまりここは古くは水辺だった。

井戸のすぐそばで水路の跡も見つかっていて、海からここまで船が入ってきていた可能性も指摘されている。

井戸のそばに水路があったということ、つまりこの井戸は生活に使うための水を汲むものではなく、なにかの儀式に使われた特別なものではないかと考えられる。

安芸市立歴史民俗資料館 仙頭由香利さん:
高知県東部地域でおそらく、古代安芸郡の中心地が見つかったのではと考えている。非常に全国でも珍しい遺跡なので、できるだけ教育施設との両立を真剣に考えていかないといけない

仙頭さんが指摘する「教育施設との両立」。
実はこの遺跡調査は学校建設のための事前調査なのだ。

安芸駅近くの安芸中学校と安芸川の東にある清水ヶ丘中学校が統合。3年後、ここに新たな中学校ができる予定だ。

校舎の建設予定地で見つかったのが、この「瓜尻遺跡」だった。

川辺世里奈アナウンサー:
こちら南側に校舎が、そして北側には体育館ができる予定でした

井戸と見られる遺構は体育館の真下にあたる。
発掘調査は3月末までの予定だったが、想定した以上に価値のある遺跡である可能性が出てきたため、調査は7月末までに延期された。

この日は住民を対象に発掘現場の見学会が行われ、30人ほどが集まった。

安芸市民:
安芸市の宝やないろうか。中学校を建てるんじゃなしに、ちょっと移動したほうがいいと思う

安芸市民:
学校建設と遺跡保存との両立できるような形をもう一度考えていただいて、子どもたちのためにも安芸市民のためにも役立つようになってほしい

安芸市教育委員会によると、現時点では中学校の設計を変更する予定などはなく、今後については調査結果を受けて話し合っていくという。

(高知さんさんテレビ)

高知さんさんテレビ
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