九州新幹線全線開業から10年

3月14日、九州新幹線は“光”となった。

開業から10年…思えば東日本大震災の翌日に開業して以来、その道のりは苦難の連続だった。そんな過去を乗り越えて、流れ星となった新幹線に上がった歓声。

見ているだけなら美しいの一言で済むが、その裏側にあった異例の「高速移動ライトショー」とは?

流れ星に見えるのか?“世界初”のプロジェクト

前例のない試みに挑戦したのは、JR九州のプロジェクト責任者、宮﨑龍一さん。

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宮﨑龍一さん:
前例がないので、どうやってこれを再現したらいいんだという感じでしたね、最初は…。高速(移動)を新幹線でやったというのは、おそらく世界初だと思います。

世界初のプロジェクトの責任者が“無茶振り”をした相手は、今回演出を担当したアム・トゥーワンのチーフディレクター、西健次さん。

西健次さん:
正直、我々も経験の無いことではありながら(新幹線の)中に照明を積むという部分のテクニカル的なことは本当、テストにテストを重ねた結果で…

今回のミッションは、最高速度 時速260kmで移動する新幹線の中から光を放ち、「流れ星新幹線」となること。

光の尾を引く演出は、ムービングライトを座席に据えることでなんとかなりそうだったが、そもそも新幹線を動かす電力は他の目的に使われるようには出来ていない。そこで、照明スタッフが捻り出したのは…

西健次さん:
バッテリーを中心に電源関係のプログラムを考えていきました

莫大な照明量を賄うために、ひとつ40kgの巨大バッテリーを使うことを決め、かき集めた。そして3月2日、流れ星に見えるのかを確認する最終テストが行われたが…

宮﨑龍一さん:
想像と全く違う。「流れ星じゃないじゃん」という感じですね…

確かに、ムービングライトが全く見えなかった。

宮﨑龍一さん:
(スタッフからも)光が弱いとか、迫力がないとかですね、言われて…直前で演出をもう一回全部練り直した感じ   

究極の「時間厳守テクニック」で難題クリア

こうして迎えた本番当日。人々の願いを乗せた九州新幹線は鹿児島を出発し、福岡・博多までの2時間半を流れ星として走り抜けられるのか?

まず近づいたのは、最後のリハでまったく流れ星に見えなかった「出水(いずみ)」周辺。

見ていた人:
ほんまに流れ星や!すごーい、すごーい!

圧巻だったのは、日本の鉄道が誇る究極の「時間厳守テクニック」がなせる業。それは、イベント会場になっていた「筑後船小屋(ちくごふなごや)」直前でのこと。その時、車内では…

スタッフ:
はーい、いま橋通過。あと100。あと100。あと電柱3本いきます。あと電柱3本!

到着予定時間は午後7時時58分だったが…

スタッフ:
まもなく停車。停車、まもなくしまーす。はーい停車しました。57分50秒なので、えー…19時58分30秒でいきましょう西さん!このままレシーバー繋ぎっぱ!20秒前、10秒前、10秒前!5秒前!

なんと、寸分違わぬ場所、違わぬ時間に全てのタイミングが合った。その時、イベント会場の片隅から指示をしていた西さんは…

西健次さん:
ここに普段いる照明の担当さんは、はるか遠い新幹線にいらっしゃるので。私は演出の担当としてスタートのキューを出しましたが、号泣して見てました。いやー、何度このお仕事で涙を流したことか…

こうして、最終目的地である博多へと向かった「流れ星新幹線」。

見ていた人:
すごーい!流れ星新幹線すごい

一夜限りの輝きを終えた流れ星新幹線。光の演出はないが、人々から集めた777の願いを乗せた車体は、5月まで走り続ける。

(「Mr.サンデー」3月21日放送分より)