AIを活用した道路点検

AI(人工知能)を活用した新たな道路点検の実証実験が東京・品川区で行われている。

ドライブレコーダーで撮影した映像をAIが分析して、リアルタイムで道路の破損を検知できるという。

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東京都内の生活道路を巡回する、道路パトロールカー。その車内に設置されたモニターに表示されたのは、緑色の四角い枠。

この四角い枠は、路面の損傷を検知したことを示している。

そして、損傷を検知した場合にだけ、クラウドにデータを自動で送信。

AIがさらに詳しく画像を分析し、GPSの位置情報をもとに道路の損傷を“見える化”する。

品川区道路課 道路維持担当・竹内佑馬主事:
このエリアの中で、3カ所異常が検知されています。こちらをクリックすると、このように亀甲状のひび割れが検知されています。

AIドラレコが検知した道路のひび割れ。ほかにも、横断歩道付近の白線のかすれをAIは正確に検知していた。

どんな車でも道路を点検できる

品川区道路課・竹内佑馬主事:
今までは人が直接、目で見て点検を行っていたんですけど、経験が浅い方と経験を積んだ方が点検するのとでは、点検の成果に差が出てしまう。
AIによる解析を導入することによって、経験が浅い方でも(熟練者と)同じような成果を得ることができる。

現在、日本全国の道路の総延長は約128万km。その8割以上は市町村が管理していて、点検の効率化は大きな課題となっている。

今回のシステムを開発した、東京大学発のベンチャー企業・アーバンエックステクノロジーズの前田紘弥代表は、「ドライブレコーダーのような汎用的に普及しているデバイスを使えば、網羅的なデータ収集ができる。端的に言えば、どんな車でも誰でも道路点検ができるようになる」と話す。

そして、今回の実験には重要なパートナーがある。ドライブレコーダー付き自動車保険を展開する、三井住友海上火災保険だ。

企業向けのドラレコで収集した道路の損傷データを自治体などに販売し、インフラ点検に活かす事業を2021年度中に始めるという。

三井住友海上ビジネスイノベーション部・藤岡晋アライアンスディレクター:
マンホールであったり、ガードレールであったり、さまざまなものがドライブレコーダーには映っていて、道路メンテナンス以外のところにも(データの活用)を広げていきたい。

ドライブレコーダーとAIが支えるインフラ点検の可能性が広がっている。

人手不足にデジタルの活用を

三田友梨佳キャスター:
テクノロジーの活用に詳しい、IoTNEWS代表の小泉耕二さんに聞きます。ドライブレコーダーを活用した道路の劣化点検、どうご覧になりましたか?

IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
既製品であるドラレコを使っている点は非常に良いと思います。

全国に張り巡らされた道路を点検するのに新たな機材を投入するのは限られた予算の中、コスト的に現実的ではありません。

他にも道路関連では、トラックに振動センサーをつけて、振動の様子を捕らえることで道路の傷み具合を調べるといった実証実験も行われています。

三田キャスター:
既存のものを活用してコストを抑えるという背景には、AIによる画像認識などテクノロジーの進化があるようですね。

小泉耕二氏:
AIというと何か凄いことをやっているという印象をもたれる方もいるかもしれません。

今や人間の代わりに映像から様々な要素を抽出する精度はかなり向上していて、様々な分野で実用化が進んでいます。

道路のほかにもインフラ点検するという分野では、ドローンを飛ばしてダムや建物、鉄橋などの亀裂だとか劣化を見付けるものなどがあります。

三田キャスター:
一方で、インフラの劣化点検に新しいテクノロジーを活かしていく際にクリアすべき課題はどんなことがありますか?

小泉耕二氏:
まずはコストの問題、そして設置場所の問題、さらに設置後のメンテナンスの問題があります。

例えば全国に機材を導入して、後日、より賢くなったAIに入れ替えたいとなった時、ネットワークを経由して入れ替えたいですよね。

また、電源が取れない場合はソーラー発電を活用するなどコスト高になる傾向もあります。こういった課題を解決する技術革新も実は登場していますが、これからといった感もあります。

それでも少子高齢化や技術者の引退、なり手不足などといった問題を解決するためにもデジタル技術の活用は急務だと思います。

三田キャスター:
今後は人手不足とノウハウの継承がますます困難になっていくことが予想される中、利用者の安全と安心を担保することは優先すべき重要なことなので、データとAIの力で都市が抱える様々な課題の解決へと繋がることが期待されます。

(「Live News α」3月16日放送分)