いま、老後の生活に欠かせない介護サービスの事業所が相次いで倒産している。
その背景には何があるのか、取材を進めた。

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大阪市にあるデイサービス施設「レコードブック三国本町」では、利用者が到着するとまず『手洗いとうがい』。
そして体温チェックを受けてから、体の機能を維持するための運動が始まる。

トレーナー:
背中、冬場で寒いと固まりやすいのでしっかりほぐしていきましょう

運動で使用したボールなどの道具はすぐに消毒。
ひとりがトイレを使うと、そのたびに清掃を行うなど、新型コロナウイルスの感染対策を徹底して利用者を迎え入れている。

利用者(65):
足がね、筋力の衰えで、筋力をつけたくて通い始めたんです。家にいたらどうしても横になってテレビ見てるだけ

利用者(83):
地域で『100歳体操』があって行ってたんだけど、コロナで休んでる。お年寄りが集まってくれるところがここだけしかない。(週に1回のデイサービスが)楽しみ、1週間が早い早い

利用者にとってはなくてはならない場所。
しかし、経営は厳しさを増しているという。

消毒液にタオル…“感染対策の費用”が経営を圧迫

大量に必要となる消毒液やペーパータオル。
新たに購入した業務用空気清浄機や換気のためのサーキュレーターは、合計50万円以上。
国から補助はあるものの、上限は38万4000円(事業所ごとに異なる)と、多くが持ち出しとなる。

レコードブック三国本町・田宮康子所長:
現状は支出だらけというか、出ていく一方。感染対策で消毒液やマスクの消耗品はかなり多いので、でも削るわけにはいかないし…

さらにもう一つ、経営を厳しくさせている要因がある。
利用者の多くが感染を恐れてサービスを受けなくなったり、回数を減らしたりしていることだ。

松本翔一さん(78)は、緊急事態宣言が出た1月から施設には行っていない。

松本翔一さん(78):
ひとり住まいやから、もし感染したら大変。今世間ではすぐに入院できない。僕は重症化する可能性が高い、糖尿病や心臓病を持ってるから。『自宅療養しろ』と言われたら食事や炊事洗濯を1人でやってるわけだから、自分で考えただけでもどうするか見当つかない

一方、施設に通わず外出を控えていることで、体に異変が出始めたという。

松本翔一さん(78):
一番困るのは、声出さない生活が多い。1ヵ月経つと声が変わってくる。人としゃべらないから声が出なくなる。(コロナが)早く終わってくれないとどうしようもない…

介護事業の倒産が『過去最多』 介護を求める声に人出が追い付かず…

こうした利用者の減少や感染対策費の増加などの影響で、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産は過去最多の118件となった。

倒産の半数近くを占めるのが、『訪問介護』の分野だ。

京都市の「ヘルパーステーションわをん」では、新型コロナウイルスの影響でこれまでのようにヘルパーを派遣できなくなった。

日常生活を手伝う訪問介護は、利用者と距離をとることができず、ヘルパーの心理的な負担が大きいため、これまで1日(1人あたり)7~8件訪問していたところ、半数近くに減らした。

ヘルパーステーション「わをん」・ヘルパー:
精神的な重圧…、高齢の方々で、基礎疾患を持っておられる方たくさんいるので、もし自分が媒体として感染させていたら大変な責任があるなと思います。現に亡くなっている方がおられるので…本当にプレッシャーを感じています

――ヘルパーに来てもらえるのは大切?

利用者:
そりゃもう(大切)。プラスお話し相手

この事業所では高齢のヘルパー2人が休職している。
ヘルパーの半数は60歳を超えていて、基礎疾患がある人は休まざるをえないのだ。

訪問介護を求める声に、ヘルパーの派遣が追い付いていないのが現状だ。

ヘルパーステーション「わをん」・櫻庭葉子代表:
今手を打たないと先が見えてこない。法人として精いっぱいのことを今しているので、これ以上『自分たちで自活して頑張れ』と言われても、経済的にもかなり苦しい

専門家は警鐘…「介護崩壊は“医療崩壊”につながりかねない」

高齢者介護に詳しい専門家は、「介護の担い手がいなくなると、さらに医療をひっ迫させる」と危機感を強めている。

東洋大学・高野龍昭准教授:
そもそもコロナ禍以前に、なんとか綱渡りで経営を続けている訪問介護や通所介護の事業所が多い中で、今回のコロナ禍が起こって、経営が立ち行かなくなっている事業所が増えている。介護サービス事業所が継続できなくなると、結果的に高齢者は体調を崩し、医療機関を多く受診して入院する。医療機関をますますひっ迫させる。介護崩壊はそのまま医療崩壊にもつながりかねない。

今後ますますニーズが高まっていく介護サービス。
老後の安心を支える業界が大きく揺れている。

(関西テレビ)