突然の離婚で幼い娘2人を1人で育てることになった小説家の仙田学さん、46歳。

「子育てのやり方って誰に教えてもらうの?」と悩み、考えながら、シングルファーザーとして奮闘する日々を送っている。

エッセイ『ときどき女装するシングルパパが娘ふたりを育てながら考える家族、愛、性のことなど』(WAVE出版)には、子育ての戸惑いや社会の決まり事などについて考えたりしたことを綴っている。

離婚時は5歳と3歳だった娘も、今は8歳と6歳。シングルファーザーとなって3年ほど経ち、これまでの日々や子育て、自分らしく生きることについて語ってもらった。

仙田さんにzoomでインタビュー
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シングルファーザーの孤独

平成28年度に厚労省が行った全国ひとり親世帯等調査によると、推計世帯数は父子世帯が18.7万世帯、母子世帯は123.2万世帯だった。

こうした現状からも、仙田さんは「シングルファーザーは見えない存在」と明かす。

著書では、育児の中で「男性」が排除されているような経験やシングルファーザーの生きにくさにも触れている。離婚する前、夫婦で「しつけ講座」に申し込んだところ、「男性の参加はお断りしています」と断られてしまう。「前例がない」など理解しがたい理由で拒まれたことに疑問を抱いた仙田さんは“男性も参加”という前例づくりに奮闘する。

保育園では“ママ友”を作ることができず、孤独を味わった。挨拶はしても、すでに出来上がっている“ママ友”グループに加わることもできず、寂しさを募らせた。そんな時、あるシングルマザーから声を掛けられ親しくなる。それから彼女とLINEでやりとりを始めるが、「彼氏がいるので個人的に連絡取れない」とフラれてしまった。

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「シングルファーザーは友達を作りにくい。保育園の懇談会も私以外は全員女性。以前、ママ友の旦那さんが参加したようですが、男が自分だけで嫌だから次から行かなくなったそうです。育児の現場に男性があまりいないことから、仲間を作りにくいです」

保育園の情報や子育ての悩みを共有したりする“ママ友”の存在は大きく、心の支えにもなる。“ママ友”の存在に加えて、20年近く住んでいた東京から京都へと住まいを移したことも良かったと仙田さんは振り返る。

「東京では近所づきあいは少なかったですが、京都は周りに小さい子がたくさんいて、近所づきあいも多い。僕も含めて周りの親も自分の子どものように大事にしている。子どもを預かることや、預けることもありますし、お互い持ちつ持たれつの関係が自然と築かれました」

しかし、最近は新型コロナウイルスの影響で、保育園でも小学校でも保護者と関わる機会が減ったため、シングルファーザーはさらに孤独を味わっているのではないかと危惧した。

「親としての私」か、「ひとりの人間としての私」か

37歳のときに長女が誕生し、それから次女も生まれた。当時は会社勤めをしていたため、平日は主に“妻”が子どもの世話をし、週末は家族4人で過ごした。

その後、離婚をすることになり、シングルファーザーになった。

離婚前から子育ても行い、娘との関係も良好だったため、シングルファーザーとして生きることに違和感はなかったという。しかし、「今まで2人でしていたことを1人でするという部分での覚悟は必要でした」と振り返る。

平日は朝7時に起きて娘を起こしたり、学校や保育園に行く準備をしたりと慌ただしい。ホッと一息ついたところで、夕方になり娘たちが帰宅すると就寝までは子育てコアタイム。

昨年のハロウィンのときの仙田さん手作りケーキ

「最初は無我夢中で生活していました。子どもたちも小さく、彼女たちを守って暮らしていくことで精一杯。3年くらい経って、やっと余裕が出てきて。子育てへの不安は薄まりましたが、子どもが寝た後の1人の時間に心細くなったり。日々の楽しいことやイライラすることも全部、1人で抱え込まないといけないので、それを共有できる相手がいない寂しさがありますね」

引っ越し後、娘たちが保育園へ通いだしたことで、1人の時間を持てるようになった仙田さんは「親としての私」と「ひとりの人間としての私」を意識するようになった。

子どもたちを最優先させる日々のため「親としての私」の時間が多く、「“ひとりの人間としての私”をないがしろにしているのでは?」と不安を抱いたことも。

「ひとりの人間としての私」を放置すると戻れなくなってしまうのではないか。時には「ひとりの人間としての私」に軸足を置くことも必要なのではないか、と考えることもあった。

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そんな葛藤をしながらも仙田さんは娘が「おいしい!」とご飯を食べたり、小さな変化を見つける喜びを感じ、いつしか、「今はきっと“親としての私”を大切にしているのだ」と思えるようになっていった。

こうした気持ちの揺れ動きを「親になることは、もう1人の人格ができる感覚。今までの自分と親としての自分。その間で揺れることもありますが、最終的に『親としての私』と『ひとりの人間としての私』は一つになると思ったんです」と話す。

仙田さんにとって子育ては「子ども時代をやり直す感覚」。「親としての私」は、子ども時代をなぞり直しているため、いずれ「ひとりの人間としての私」と一つになるのだ、と。

ただ、今はこの結論に至っているが、「この先、子どもが大きくなっていったら、またどう考えるのか分からないですね」と、親でいる以上、気持ちの揺れは止まらないのだという。

ときどき、女装をする理由

女装姿の仙田さん

そんな仙田さんはときどき、女装をしている。初めての女装は大学生のとき。これまでとは違う価値観を手にできたと思ったという。

娘たちが小さいころから写真を見せたりしていたため、父親がときどき女装することを自然と受け入れている。2年ほど前にはママ友たちの前でも女装姿を披露した。

仙田さんにとって「女装」することは趣味の一つ。プラモデルを作ったり、釣りをしたりして、ワクワクしたり熱中するような時間を過ごすことと同じ感覚。女装をしているときが、「ひとりの人間としての私」の時間でもある。

ただ、慌ただしい日々のなかでゆっくりと女装をする時間がなかなか取れないため、家族3人でどこかへ行ったりすることはまだできていない。「いつかは女装姿で日常生活を送りたいですね」と目標を語った。

コロナ禍では「共有」する時間を大切に

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新型コロナウイルスの影響により、自宅で過ごす時間が増えたことから、娘たちと「共有」する時間が増したという。

「動画配信サービスに加入して、アニメをたくさん見ています。京都アニメーションが好きで、今は『けいおん!』 を一緒に見たり、マンガを読んだりして感想を話し合うのが楽しいですね。この時間は、のちに大事になると思っています。

長女が小学校へ通い始め、急に何をしているのか分からなくなりました。保育園は先生に聞いて把握できましたが、小学校は勝手に行って帰ってくるだけ。何をしているのかは本人に聞かないと分からないし、その話が本当かどうかも分からない。これから、会話や共有することも減っていくと思うので、コロナを機に何かを共有する時間を持てたことはいいことだと考えています」

そんな仙田さんは「精神的に強い子になってほしい。自分を大切にしてほしい」と思い、娘たちと接している。「自分を大切にすることで周りを大切にでき、周りから大切にされる」と考え、そうなっていってほしいと日々、願っている。

シングルファーザーとして娘2人を育てる仙田さん。これから先、娘たちが大きくなるにつれて新たな戸惑いなどを感じる瞬間もあるかもしれない。しかし、シングルファーザーになってはじめて「家族のカタチ」が見えてきたことで、「間違えてしまっても何度でもやり直せるし、正しいあり方なんてない」と、これからも自分たちなりの家族を築いていきたいという。

『ときどき女装するシングルパパが娘ふたりを育てながら考える家族、愛、性のことなど』(WAVE出版)

仙田学
1975年、京都生まれの小説家。文芸誌を中心に小説、エッセイ、書評などを執筆している。Web連載も多数あり、著書に『盗まれた遺書』(河出書房新社)、『ツルツルちゃん』(オークラ出版)などがある。趣味は女装とサイクリング。