夜道などの安全を守る製品の一つが、反射材。光を反射するので、防犯グッズやランドセルなどにも採用されているが、いま、驚きの光り方をする反射材が注目を集めている。

まずはこちらの投稿をみてほしい。

オーロラリフレクター(反射材)で
夜の雪かきも安心
水滴がついてる所は、光らなくなります

この文章と一緒に投稿されたのは、雪模様の中で雪かきにいそしむ人の写真。注目すべきはその姿で、着用している衣類が虹色に光り輝いているのだ。

反射材広め隊のアカウントより
反射材広め隊のアカウントより
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この光景を投稿したのは、衣類に使用された反射材の開発元、丸仁(福井市)の企業アカウント、反射材広め隊@LIGHTFORCE®︎(@LFS_arabo)。虹色に輝いているのは、この企業が開発した「オーロラリフレクター」という反射材の効果だという。

オーロラリフレクターを使った製品の例
オーロラリフレクターを使った製品の例

他のTwitterユーザーからは「CGみたいですね!」「ゲーミング雪かき」などと、驚きの声が相次いだほか、虹色ということでゲームの無敵状態に例える人もみられた。投稿は注目を集め、8万1000以上のいいねも寄せられている。(1月15日現在)

別の投稿では、雪かきの様子を動画でも紹介していて、遠くにいるとうっすら光る程度だが、距離が近づくにつれて強烈に光る様子もみられた。

左が遠目、右か近づいたときの様子(反射材広め隊のアカウントより)
左が遠目、右か近づいたときの様子(反射材広め隊のアカウントより)

謎は深まるばかりだが、虹色に光る仕組みはどうなっているのか。丸仁の担当者に聞いてみた。

開発は約20年前…きっかけは偶然から

ーーオーロラリフレクターの開発経緯を教えて。

実は、開発されたのは約20年前となります。弊社は反射材で交通事故を減らし、社会に貢献するのを目標の一つとしていますが、当時、反射材の色はシルバーしかなかったので、多くの服に取り入れてもらおうとさまざまな色を開発しました。

その過程で、光を吸収してしまう黒などの暗い色でも、十分な反射性能を得られるように試行錯誤したところ、偶然虹色に光が変化してみえる反射材ができたのが始まりです。

オーロラリフレクターを活用した布(提供:丸仁)
オーロラリフレクターを活用した布(提供:丸仁)

ーー虹色に光る仕組みはどうなっている?

反射材は光を反射する材料としてガラスビーズがよく使われます。これを台紙となるフィルムの上に規則正しく並べ、そこに光を強力に反射する鏡の役割として、金属化合物を蒸着させて層を作ります。これを反射層を呼ぶのですが、この層の作り方や金属化合物の特徴で光の反射の波長をコントロールすることで、色が変わるという特許技術になります。

反射光の色変わる仕組み(提供:丸仁)
反射光の色変わる仕組み(提供:丸仁)

ーー反射光の色が変わる条件はある?

私たちが開発した反射材は「再帰性反射材」という種類で、光の発生源の方向に反射した光が帰るという特徴を持っています。例えば、車のヘッドライトで照らした反射材の反射光は車の方向に強く帰っていきます。

そして、通常の反射材は金属化合物の層の厚みが一定ですが、オーロラリフレクターは層の厚みがガラスビーズに対して涙型になっています。そのため、角度によって反射される光の帰り方が変わり、見える色も変わるようになっています。

通常の反射材とオーロラリフレクターの違い(提供:丸仁)
通常の反射材とオーロラリフレクターの違い(提供:丸仁)

ーーTwitterの動画では近づくとより光るように見えたが?

これは撮影が日中で、周りが雪景色の非常に明るい環境だったためです。遠くだとライトの反射光が周囲の明るさで紛れていますが、近づくにつれて反射光が勝り、オーロラ色を視認しやすくなっています。もしも周囲が真っ暗な状況であれば、スマホのライト程度の光でも、20m程度離れていても反射光は見ることができます

ファッション性があれば着用者も増え、交通事故を減らせる

ーー開発過程で苦労したところは?

オーロラリフレクターは2004年アテネオリンピックのバレーユニフォームにも採用いただいたのですが、スポーツウェアとしては扱いづらい商品となってしまいました。スポーツ関係は色にシビアで、企業ごとにコーポレートカラーがあったりもするので、角度や環境で反射する色が変わる特性が、品質のムラと捉えられたのです。

特徴の面白さを知ってもらうために、スポーツウェアブランドではなく、カジュアルウェアブランドに提案先を移したことが最大の工夫となります。そういう意味では、開発期間は20年かかったとも言えますね。

現在はカジュアルな製品にも採用されている(提供:丸仁)
現在はカジュアルな製品にも採用されている(提供:丸仁)

ーーどんな状況、環境での活用を想定している?

視認性がよくコストパフォーマンスもよい反射材は昔からあり、ほぼ改善の余地がなく完成されています。それでも、世界の99%の衣服に取り入れられていないのが現状です。その理由は明確で、反射材がファッション性を阻害してしまう、かっこよくないからです。

私たちは反射材をファッション性を高める装飾技術素材の一つとして、世の中の衣服に浸透できればと考えています。そうすれば、結果的に反射材を身につける人々が増えて、交通事故を減らす社会貢献ができると思います。

ファッション性にも期待しているという(提供:丸仁)
ファッション性にも期待しているという(提供:丸仁)
光をあてないときはこんな色
光をあてないときはこんな色

ーー使用上の注意点は?

基本的には普段の衣類と同じようにお使いして問題ありませんが、商品によってはアイロンをするときにあて布をしていただく必要があったり、洗濯でシワになりやすかったりはあります。

Twitterの投稿では「水滴がついてる所は、光らなくなります」とありますが、これは反射材の表面に水滴が乗ると光の屈折が変わるためです。水滴を拭いたりすれば問題ありません。
 

スマホの普及でフォトジェニックな面白さからもアプローチ

ーー話題を集めたが、受け止めは?

反射材がここまで注目されることは過去なかったと思いますので、非常にありがたいです。一昔前まではアパレルで反射材を使うのは、ワークウェアかスポーツウェアと相場が決まっていましたが、スマホの普及でフォトジェニックな面白さという側面からのアプローチができるようになりました。この流れを止めないように、反射材の認知を広めていく活動を続けていきたいと考えております。

ーーこの反射材を使用した商品は購入できる?

弊社のネットストアで購入でき、可愛らしいデザインから若者向けの新鋭デザイナーとのコラボ商品まであります。また、反射材の素材段階も販売していて、こちらは多くの衣装アーティストやDIY愛好者に購入していただき、今までなかったアパレル作品が多く生まれています。

ストアでは虹色に光るアイテムなどが購入できる(提供:丸仁)
ストアでは虹色に光るアイテムなどが購入できる(提供:丸仁)

ファッション性が高まれば、反射材を着用する人は増えるはず。交通安全とオシャレを両立できるアイテムとして、普及していくことに期待したい。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。