FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、ソウル支局の熱海吉和記者が伝える「北朝鮮版クリスマスは革命聖母の崇拝デー」。

キリスト教は禁教でも…北朝鮮が12月24日を祝うワケ

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
今日はクリスマスイブですね。今回はおそらくほとんどの方が知らないであろう、北朝鮮の12月24日がテーマです。クリスマスといえば、キリストの生誕を祝う日ですよね。北朝鮮では欧米社会を象徴するキリスト教は禁教になっていて、厳しく弾圧されています

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FNNソウル支局 熱海吉和記者:
キリスト教のお祝いごとを取り扱うというのは厳禁のはずなのです。ところが北朝鮮の12月24日はお祭り騒ぎなんです。平壌ではいたるところでダンスパーティーが開かれるほどの盛り上がりで、看板にもでかでかと“祝12月24日”と書いてあるのです

加藤綾子キャスター:
本当ですね。これ、映像を見る限り雰囲気はもうほぼ、クリスマスイブですよね。これ何のお祝いなんですか?

抗日戦争の女性英雄の誕生日というが…

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
実は北朝鮮における12月24日なんですけれども、神格化されたある女性の誕生日とされているんです。それがこちら、金正淑(キム・ジョンスク)氏です。どういった人物かというと、金日成主席の妻で金正日総書記の実の母親、つまり金正恩委員長のおばあさんにあたる人です。金氏一族のルーツですから、彼女も北朝鮮では伝説的な存在となっているのです

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
どんな伝説になっているのか。北朝鮮ではこういった神話があるのですけれども、1930年代後半、革命を目指す若き日の金日成主席は朝鮮半島の最高峰、白頭山を拠点に抗日運動を展開しました。この時に旧日本軍と対峙したとされるメンバーの一人が、金正淑氏だったというものです。このため彼女は白頭山の女将軍、抗日の女性英雄といった形で崇拝されているのです。

ですから彼女の誕生日となる12月24日は、「忠誠の歌会」として町中がお祝いムードとなります。会社ごとに歌を練習して発表会をしたり、女性はきれいに着飾ってパーティーに参加したりするそうなんです。楽しみが少ないとされる北朝鮮で数少ない、お祭り騒ぎをして良い日という位置づけなのです

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
この点に関してですね。北朝鮮で30年間暮らしていた、元在日の脱北者、金柱聖さんにお話を伺ったのですけれども、気分が高まった男女の出会いの場でカップルができることも多いと。男性は特に必死だということで、こういったあたりは日本のクリスマスと一緒ということなんです。

そして電力不足で知られる北朝鮮ですが、この日ばかりはイルミネーションが夜の街を彩ります。この映像自体は、24日のものではないんですけれども、市民は当日に向けて節電するんだそうです

実は偶然じゃない?「北朝鮮版クリスマス」を作ったか

加藤綾子キャスター:
この日のために頑張るっていうことですよね。クリスマスイブと女性英雄の誕生が同じ日っていうのも、ものすごい偶然ですよね

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
偶然ですし、皮肉な話なんです。この点に関して、脱北者の金さんの見解なんですけれども「偶然ではなく、北朝鮮版のクリスマスを作ろうとしたのではないか」ということなのです。これがどういうことかというと、金日成主席は熱心なキリスト教の家庭で育ったので、自身もキリスト教の影響を強く受けていたという指摘があるのです。

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
女性英雄の誕生日というのは表向きで、北朝鮮にクリスマスをこういった形で持ち込みたかったのではないかというのが金さんの分析です。金正淑氏の誕生日が12月24日というのも、本当かどうかわからないということなんです。

ちなみに最近脱北してきた、脱北者の方にお話を聞いたんですけども、北朝鮮の若者は厳しい統制の裏でこっそり韓国ドラマなどを通じて、クリスマス文化のことはよく知っているそうなのです。なので、もはや気持ちの上ではクリスマスとして実質楽しんでいる人も多くて、これもまた皮肉な話となっています

加藤綾子キャスター:
熱海さんありがとうございました。柳澤さん、この日だけは特別な日でお祭り騒ぎしていい日ということで、北朝鮮の市民はどんな思いで過ごしているのですかね

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
文字通り「クリスマスプレゼント」じゃないですかね。不平不満がたまっているという部分があると思いますから、政府にしてみればガス抜きという部分もあるんじゃないですかね

(「イット!」12月24日放送より)