FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、ソウル支局の川崎健太記者が伝える「受験地獄が引き起こす韓国の極端な少子化」。

韓国の大学は約8割が推薦入学

FNNソウル支局 川崎健太記者:
今年もあの季節がやってきました。韓国で12月3日に行われた全国共通の大学入試試験の様子です。今年は新型コロナウイルスの対策でかなり粛々と行われたのですが、例年ですと熱烈に後輩たちが応援したり、遅刻しそうな受験生をパトカーで送り届けたりするのは、日本でもおなじみの光景ではないでしょうか

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FNNソウル支局 川崎健太記者:
人生を決めると呼ばれる試験ですが、これにかける受験生は少数派でして、韓国の受験は実は推薦入学が約8割になるんですね。日本では推薦とAO入試合わせて46%ですから、韓国がいかに高いかわかります。例えばですが、韓国最難関、国立のソウル大学は推薦の割合が77.2%、有名私大の高麗大学も81.3%、延世大学も65.1%が推薦枠なんです。これは試験一辺倒を見直しましょうという社会的な動きで、2002年には約3割程度だった推薦の割合がどんどん増えて、今や約8割にのぼるというわけなんですね

学生の評価基準「スペック」とは?

加藤綾子キャスター:
そうなんですね。そうすると受験生はまず推薦枠を目指さないといけないということだと思うんですけど、どんなポイントが重視されるんですか?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
日本と大きく違うのは、高校での学業成績以外の実績などを指す「スペック」と呼ばれるものが重要になってくるのです。韓国の内申書のサンプルを用意しました。例えば、クラブ活動、ボランティア活動も重要です。そして校内での表彰歴、親孝行賞とありますけど、実際にこうした実績を評価する大学もあるそうです

FNNソウル支局 川崎健太記者:
一見開かれた公平なものに思えますよね。でもこれが逆に格差を生んでまして、韓国社会の闇となっているのです。推薦入学が一般的になった結果、「入試コンサルティング」なる業種が登場したのです。この入試コンサル会社が今や韓国に250以上あり、大学側に受けの良い対応を手取り足取り教えてくれるのですけど、これがとにかく高いです。ある会社では自己紹介書の指導12万円面接の指導13万円年間講座80万円というケースもあるそうです

チョ・グク前法相の問題も火種に

FNNソウル支局 川崎健太記者:
もう1つの格差の象徴ですが、韓国の前法相、チョ・グク氏をめぐるスキャンダルです。チョ・グクさんの娘は高校生にして、医学論文の執筆者に名を連ねて、名門の私大に入っているのですね。これが、一般の受験生には手にできない特別なスペックを一部の特権層が牛耳っているとして、大批判を浴びたわけです。つまり、所得が高かったり、社会的地位のある保護者を持つ学生が圧倒的に有利な入試制度になっているというわけなのです

加藤綾子キャスター:
だから推薦合格を勝ち取れなかった少数派の受験生が、統一試験で一発勝負に賭けるということですね?

FNNソウル支局 川崎健太記者:
多くがそうだと思います。ですがその結果、推薦入学が難しい受験生たちの塾通いが増えまして教育費が跳ね上がったわけです。こちらは学習塾などの私教育費の比較なのですけれども、日本の公立の高校生が年間でだいたい17万円です。一方で韓国の高校生は年間で39万円。実に2倍以上ですよね

出生率は世界最低水準…日本以上に極端で急速な少子化

FNNソウル支局 川崎健太記者:
そしてこの結果思わぬ問題が生まれたのです。それが極端で急速な少子化です。韓国の出生率は年々下がっていて、最新0.84(2020年)なんですよ。1.0を割るというのはOECD加盟国で韓国だけでして、世界最低水準なのです。少子化が叫ばれている日本ですら1.36(2019年)ですから韓国がいかに深刻かってわかりますよね。その背景として、教育費の高騰で子供を持つことを避ける夫婦が増えていると指摘されているわけです

FNNソウル支局 川崎健太記者:
最後にこうした現実を自虐的に表現する韓国の言葉を紹介します。“ヘル(地獄)朝鮮”といいます。地獄のような朝鮮・韓国ということでして、厳しすぎる受験戦争とか就職難、こういったところから夢も希望もない生きづらい社会。これが韓国の若者たちの本音だと思います

加藤綾子キャスター:
柳澤さん、厳しすぎる受験戦争が急速な少子化につながっているということですが?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
親が裕福かどうか、そして金次第というか…。地獄の沙汰も金次第って言いますけど、人生は金次第という、社会がゆがんでいく原因になっちゃいますよね

加藤綾子キャスター:
これだとやはり、子供を産んでも育てづらいなって思いになってしまいますよね

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
そうなればどうしても、少子化になっちゃいますからね。社会自体が大きく変質してしまう可能性というか、恐れがあることを考えなきゃいけないですね

加藤綾子キャスター:
ちょっと知らない現状でした

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(「イット!」12月3日放送より)