“北朝鮮の東大”「金日成総合大学」

北朝鮮の最高学府、金日成総合大学を訪れた。21学部があり、1万を超える学生と約5000人の教職員が在籍。平壌市内にある巨大なキャンパスは一つの街のようになっている。

厳しい受験を勝ち抜いた学生らが集まるいわば“北朝鮮の東大”であり、党や政府の幹部など多くのエリート人材を輩出している。留学生も中国、ロシア、ハンガリー、ベトナム、チェコなどから受け入れているという。

金日成総合大学 構内には学生を激励する金正日総書記のメッセージ

案内されたのは金正日総書記、金正恩委員長も視察に訪れたというコンピューター室だ。ここでは多くの学生がパソコンに向かって、それぞれの勉強をしていた。最近北朝鮮では「遠隔教育」にも力を入れており、別の場所で収録された授業を、パソコンを通じて受講できるようになっている。この日我々が見た学生は、モニター上に表示された複雑な数式に関する遠隔授業を受けていた。ここのパソコンはインターネットにもつながるとの説明を受けたが、海外のサイトを開いているような学生は見当たらなかった。

遠隔授業で使われていた積分式

このほかキャンパス内にあるプールにも案内された。10年前にオープンしたプールで、水温は常に27度に保たれ、高さ7.5mの飛び込み台までついた競技レベルでも使われそうな施設だった。最高学府ということもあって大学の設備は充実している印象だった。しかも、社会主義国の北朝鮮では学費、宿舎費は無料。教科書は購入するが、タダ同然の値段だという。

キャンパス内にあるプール 浅い所でも水深2メートルある
ウォータースライダーは金正日総書記の指示を受け設置された

お受験事情は? 併願なし浪人も許されない一発勝負

北朝鮮では中学高校は受験がなく、地元の学校に通うのが普通だという。大学進学を志望する生徒は、まず年末ごろ行われる北朝鮮統一の予備試験を受ける。これに合格して初めて大学受験の資格が得られる。英語、国語、数学、物理、化学、歴史などの科目があり、正確にはわからないが合格率は2,3割と狭き門だと言われる。

その後希望する大学に願書を提出し、2月末か3月初め頃、それぞれの大学で行われる試験に合格すれば晴れて大学生になれる。ただ、併願制度はなく受験可能なのは1つの大学だけで、失敗すればその年の入学試験はもう受けることが出来ない。かといって日本のような浪人も許されないため働きながら受験勉強を続けるか、軍に入ってから改めて進学を目指すなどのパターンがあるという。受験校は希望できるが各高校に枠が割り振られるなど、当局による事前調整が入る模様だ。

北朝鮮は全人民に大卒程度の知識を身につけさせることを目標にしており、遠隔教育に力を入れる背景には、仕事などで大学に通うことが困難な学生も教育が受けられるようにする狙いがある。遠隔教育でも大卒と同等の資格が得られるという。

唯一の私立大学 平壌科学技術大学

北朝鮮で唯一とされる私立大学が平壌科学技術大学だ。元々、北朝鮮と韓国の共同事業として進められ、運営資金の多くは欧米や韓国などからの寄付で賄われている。授業は基本的に外国人の教師によって英語で行われるため、学生にも高い英語力が求められる。平壌科学技術大学HPに掲載されている大学1年生の動画を見ると、日本にこれほどの英語を話せる大学1年生がどれほどいるだろうかと考えさせられる。

金日成総合大学の学生ら 赤いネクタイは制服

また、平壌科学技術大学には最近、北朝鮮初となる中国語の検定試験「HSK」の試験センターが開設された。HSKは中国の教育省が認定する国際的な中国語の語学検定試験だ。

先日、この大学で教鞭を執る外国人教師に話を聞く機会があったが、学生への配布物など全て事前に許可を得なければならず、自由に欧米流の教育が出来るわけではないという。また、アメリカ政府による自国民の北朝鮮渡航禁止措置によって、2017年9月までにアメリカ人教師陣が帰国を余儀なくされてしまった。しかし、今もイギリス人教師らによる授業が行われており 、学生にとっては北朝鮮において外国の教師から直接海外の知識を学べる貴重な環境にある。更には海外留学の機会などもある。

北朝鮮のお受験をめぐっては高級幹部など特権階級の子女が優遇されているなどとの指摘も一部にある。しかし、一般学生にとって受験の厳しさは、日本を含む東アジア各国と通じるものがある。

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

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