富山県氷見市や石川県で大きな浸水被害が出た大雨災害から2カ月あまり。8月の大雨では線状降水帯が数時間にわたり発生したが、そうした大雨をどこまで正確に予測できるかが、今あらためて注目されている。その予測のカギを握る次世代型の気象レーダーが、富山県滑川市に設置され、実証実験が行われている。このレーダーは、8月の大雨をどう捉えていたのか、取材した。

半日前には「激しい雨の予想はなかった」


8月末に起きた大雨災害では、数時間にわたって線状降水帯が発生した。気象庁は、富山県内で初めてとなるレベル5の大雨特別警報を氷見市に発表した。3日間で降った雨の量は479ミリに達し、観測史上最大を記録している。
ところが、気象庁のスーパーコンピューターによる予測では、半日前の時点で激しい雨の予想はなかった。実際には、激しい雨が数時間にわたって降り続いたのである。

9月2日に行われた大雨説明会で、気象台の棚木正利統括予報官は「あの時点ではあそこまで発生することを予想できませんでした」と振り返る。
滑川の白いドームに最新鋭のレーダー

滑川市にある白いドームの中には、雨雲を捉える最新鋭の気象レーダーが入っている。「フェーズドアレイレーダー」と呼ばれる最新型だ。東京に本社を置く無線通信機器メーカーの日本無線が2年前から設置し、雨や雪が多い富山の気象状況のデータ収集を進めている。

高さ約17メートルの鉄塔の上にあるこの装置は、線状降水帯や台風など大雨をもたらす現象を広範囲で捉えることができ、国内初だという。
日本無線センシング技術グループの嶋村重治さんは、仕組みを次のように説明する。

「フェーズドアレイは1024個のアンテナから出ていく電波を一つ一つ細かく制御することで、アンテナをぐるっと一周するだけでデータがとれる。非常に高速にデータが取得できる」
空全体の観測が「5〜10分」から「約1分」に

現在広く使われているパラボラ型の気象レーダーは、アンテナが一つだけで、角度を上下に変えながら回転させるため、空全体を観測するのに約5分から10分かかる。

これに対し最新型は、無数のアンテナを電気的に制御することで、空全体を一瞬で読み取る。観測に要する時間はわずか1分ほどだという。
突然の大雨をいち早く察知するカギとなるのが、「積乱雲の高さ方向の広がり」である。
観測してきた中で最大規模の積乱雲

では、8月の大雨をレーダーはどう捉えていたのか。嶋村さんは次のように話す。
「富山県内で2年くらい観測しているが、観測されていた積乱雲はせいぜい8~10キロくらい。今回の北陸豪雨では15キロを超えるようなもの。これは今まで富山で観測してきた中で最大規模の積乱雲」
積乱雲は観測史上初めてという高さまで発達し、内部では強い雨の領域が捉えられていた。

注目は、上空に突如現れる黒い部分だ。1時間に50ミリ程度の強さの雨をもたらす領域を示している。そのわずか数十分後には、地上で大雨となる様子が確認できる。
嶋村さんは「15分~20分くらい前に、おそらくこの後強い雨をもたらすであろう降水コアが上空にできていることが把握できる」と説明する。つまり、地上で強い雨が観測される前に、その兆しを上空で捉えられるというわけだ。
実証実験は10年を目安に継続

実証実験は10年ほどを目安に継続していく予定で、今後はレーダーを大型化し、観測できるエリアを拡大していきたいとしている。
嶋村さんは「線状降水帯の発生の予測につなげられるデータが取れると期待している」と話している。

大雨災害から2カ月あまり。富山で培われるデータが、将来の備えにどうつながっていくのか、引き続き注目したい。
(富山テレビ放送)

