去年、オーストラリアの研究機関が、「初めて、子宮頸がんと診断された25歳未満の女性の症例が“ゼロ”になった」という報告を公表しました。
対照的に、日本では20代後半から罹患率が急上昇。毎年1万人を超える女性が子宮頸がんと診断されています。
その背景にあるのは、検診の受診率の低さ。
世界8カ国を対象にした調査では、日本は各国の中で最も低い結果となりました。
その要因と指摘される日本の社会に根強くある婦人科の「イメージ」を変えようと活動を続ける医師。
そして、「子宮頸がんをなくしたい」と子宮頸がんを経験し人生が大きく変わった経験を語り続ける女性がいます。
■23歳で子宮頸がんと判明した女性「子宮頸がんがなくなる日が来てほしい」
滋賀県大津市に住む阿南里恵さん(45)は、日本の状況にもどかしい思いを抱えています。
【阿南里恵さん】「ほとんどゼロに近づいている国もあるので、日本でも子宮頸がんがなくなる日が来てほしいと思う」
阿南さんは23歳の時に子宮頸がんだとわかりました。東京で不動産会社に入社したばかりの頃でした。
【阿南里恵さん】「23歳の誕生日を迎えたときに出血が始まって、そこから出血が全然減らなくて、レディースクリニックに行ったら子宮頸がんが見つかった。かなり進行した状況で。
本当に大好きな仕事にやっと巡り会えたところで、まだ何もやっていないタイミングで離れて大阪に帰る。それもいつ戻れるかわからないというのが全く考えられなくて…」
■「子どもが産めないことで長い間、恋愛、結婚、出産に大きく悩むことになった」
阿南さんは抗がん剤治療を経て命は助かったものの、子宮とリンパ節を摘出しました。
【阿南里恵さん】「やっぱりつらかったですね。20代は思いきりここで仕事して、30代は子育てしたいという、何の根拠もない夢というか、そうなるだろう、そうするだろうって。私はその人生を選ぶと思って生きてましたね」
自分と同じ経験をする人がいなくなるように、阿南さんは17年前から、全国各地で講演活動を行っています。
ある日の講演で阿南さんは集まった若者たちに「がん治療によって命は助かったんです。そして、子どもが産めないということで長い間、恋愛、結婚、出産に大きく悩むことになったんです」と語りかけました。
体験談を伝え、子宮頸がんによって人生が大きく変わったことを若者たちに伝えます。
【阿南里恵さん】「体験談を話して、1人でも多くの子が『子宮頸がんは怖い』『かかりたくない』って思って、検診を受けるとかワクチンで予防するというふうに思ってもらえたらうれしいなと(思っている)」
■ 日本の40歳未満の63%が「子宮頸がんの検診を受けたことがない」
子宮の頸部にできる子宮頸がんは、原因のほとんどが「HPV(ヒトパピローマウイルス)」というウイルスです。
予防するワクチンがあり、定期的な検診とあわせて接種することで、がんでありながら「予防できること」が特徴とされています。
それでも、日本での罹患者は毎年1万人を超え、3000人近くが命を落としています。
その大きな原因のひとつとされるのが、検診の受診率の低さ。
日本、オーストラリア、韓国、中国、タイ、ベトナム、香港、インドを対象にしたある調査では、日本の40歳未満の63%が「子宮頸がんの検診を受けたことがない」と答え、最も低い結果となりました。
■ 婦人科受診しないのは「妊娠しちゃったみたいな、違う見方をされるのが…」
そして別の調査では、39歳以下の半数近くが「婦人科の受診経験すらない」ことも明らかに。
そのうえ婦人科を受診した人も、その理由は検診や健康管理ではなく「症状が出たため」が上位を占めています。
街の人からは、「婦人科の受診」に抵抗がある声が多く聞かれました。
【20代】「妊娠しちゃったみたいな、違う見方をされるのがハードルが高い」
【50代】「(10代では)ないですね。やっぱり抵抗ありますよね。内診台とか、何されるか分からないから怖い」
■婦人科は「『妊娠したら行くところ』というイメージが強い」日本
こうした予防のために婦人科へ行く習慣が根付いていない実状について産婦人科医の宋美玄医師も次のように話します。
【宋美玄医師】「やはりまだまだ日本は、『妊娠したら行くところ』というイメージが強いと思う」
宋医師は、実際は中高生で生理痛などの心配がある時は、お腹の上から超音波で診察をして情報を得られることも多く、下着を脱がなくて済む人も多いと、社会に根強くある「イメージ」の不正確さを指摘します。
【宋美玄医師】「文化として、若いうちに(婦人科に)行くことが根付いてくれるといいなと思います」
■婦人科を受診するのは「自然なこと」 10代の70%が婦人科受診するフランスの医師
一方、フランスでは、10代のうちに70%近くが婦人科を受診しているといいます。
産婦人科医のパトリック・ドゥイエブ医師は、フランスでは婦人科を受診するのは「自然なこと」だとし、「もし何かあったら、母親が生理が始まった時から来る。子どもも自然に通うようになる」と説明します。
【産婦人科医 パトリック・ドゥイエブ医師】「恥ずかしいことではない。子宮頸がん・乳がん検査のために(婦人科を受診する人は)結構多い。フランス人はよく(検査)しているから、よく産婦人科に行く」
■若者に伝える「ぜひ、婦人科に気軽に来てほしい」
日本の現状を変えようと、宋医師は民間企業が主催する無料の性教育で講師を務めています。
この日も、参加した生徒から質問が多く出ました。
「出血の見分け方は」
「生理期間がどれぐらい安定しなかったら病院に行ったらいいか」
一人一人の疑問に答えた宋医師は「ぜひ、婦人科に気軽に来てほしい。かかりつけ医の婦人科を持ってください」と呼びかけました。
授業を受けた生徒も「身近に相談できる場所があるんだったら、些細なことでも行ってみたいなと思いました」、「定期的に検査を受けて、自分の身は自分で守っていきたい」と話します。
「予防することができる」子宮頸がん。
なくなる未来は、手を伸ばせば届くところにあります。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年10月27日放送)
