今年8月に富山県氷見市で大規模な浸水被害が発生した大雨から2か月。27日の「命と未来をまもる」はその全容と教訓に迫ります。
こちらは、浸水被害が発生した場所を示した地図、公開はライブBBTが初めてです。
浸水被害の全容を捉えたのは最新鋭、世界最多の衛星群で宇宙から地球を観測する企業でした。
フィンランドに本社を置くスタートアップ企業、アイサイ。
*アイサイ ジャパン アジア太平洋地域 戦略アカウントマネージャー 鈴木瑛莉さん
「世界最大の衛星コンステレーション(衛星群)、84基の打ち上げが完了している。そのケイパビリティ(強み)を生かして頻度高く、洪水のピークを捉える撮影が可能」
この企業が運用するのは、合成開口レーダーSARと呼ばれる観測衛星。衛星から地球にレーダーを当て、跳ね返るデータを解析することで地表の状況を捉えます。
衛星写真は雲に覆われた悪天候や太陽の光が無い夜は撮影できませんが、雲を突き抜けるレーダーは、どんな天候でも昼夜を問わず観測できるのです。
スタジオには福島記者です。
世界最多の衛星群、つまり、被災地の上空を衛星が通過する間隔が最も短いことから、各地で瞬間的に起きる洪水を時間の経過と共に捉え、最大の浸水範囲を特定できるんです。
浸水した範囲を見ますと氷見市北部では川に沿って、水があふれた状況が分かり、南部は十二町潟周辺の海抜0メートル以下の地域で面的に浸水範囲が広がっていることが分かります。
市町村が発行するハザードマップの基準となる国の浸水想定最大規模と実際の範囲を比べると今回、その3割まで広がったということで、氷見市も実際にこの地図を使って被害状況のまとめを進めています。
今回、このデータをさらに詳しく解析して教訓を探りました。
*アイサイ ジャパン アジア太平洋地域 戦略アカウントマネージャー 鈴木瑛莉さん
「地形がどうなっていてとか、そういう情報はその場所に注目しないと見えてこない。地元の知見のある方に話を聞くのは私たちも、こういうことだったと、いろんな気付きがある」
データ解析は衛星運用企業ICEYEと地質や地形に詳しい富山大学、立石良准教授と共同で行いました。
*地質や地形に詳しい 富山大学 学術研究部 立石良准教授
「アイサイの浸水深のデータを棒グラフでプロットした。氷見市の北側、棒グラフが非常に高い、浸水深が高い」
これは、衛星の観測データを立体的に示した解析地図。
右側の北部では余川川や上庄川が氾濫し、川に沿うように浸水被害が出ています。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「南側を見ると広い範囲に浸水が広がっている。河川の合流部が特に(浸水深が)高くなっている」
一面に広がった浸水エリアの中で立石さんが注目したのは河川の合流部。
現地を訪ねました。
仏生寺川とその支流の合流部です。
大雨で、市内9つの河川が氾濫したんですが、仏生寺川は氾濫していないことが県の調査で分かっています。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「ここで合流して、流量はその分大きくなる、流れが悪くなる。合流の周辺の上流側が特に逆流とか水が流れない現象が起きやすい」
これは大雨が降った当日の映像です。
仏生寺川が氾濫していないのに合流部の周辺で浸水被害が発生しのは、流量が増した河川につながる用水の水が流れず、周囲にあふれ出たいわゆる内水氾濫が原因です。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「内水氾濫は(河川の)下流より上流が不利(よく発生する)。海抜0メートルなので、(仏生寺川の)水かさが上ってくると、この辺り全体、上流側の水はけ、水が流れづらくなるのが大きな特徴」
その痕跡が堤防横の用水に残っていました。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「(倒れたフェンスの)基礎を見ると水かさが上って土を流してしまって基礎が支持を失って倒れている」
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「(内水氾濫は)1メートルほどの高さ、そうしないと、あそこにワラが溜まらない」
当時、1メートル以上の内水氾濫が起きていた証拠です。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「小さい用水を含めて(内水氾濫が)同時多発的に起きたということ」
今回、国土地理院が撮影した衛星写真も使いました。
雨雲が消えた後に撮影したということで、どこまで浸水範囲が広がっていたかは捉えられていませんが緑色の田んぼに茶色のか所が浸水して、水が引いた後の形跡です。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「土石流が溜まることによって、川の流れをせき止め、(川の)水位が上がって、氾濫が広がった」
山あいの地区では斜面が崩れ、川が氾濫する浸水パターンが多発しました。
こちらの映像、手前はもともと田んぼです。
今も氾濫した水が運んだ流木がそのまま残されていました。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「能登半島地震の時に土砂崩れが起きた、豪雨が発生して(河川に)残ったものが土石流となって流れ、下流のまちを襲った。二重被害を出さないために(流木などを)早く撤去した方がいい」
浸水被害の全容を捉えた衛星データの解析、そして現地での確認を通して様々な教訓を得ることができたと思います。
今はまだ浸水被害の復旧対応に追われる氷見市ですが今後、河川改修などハード面の浸水対策に加えて住民の防災対策につながるソフト面の対策を強化する方針です。
*氷見市 建設部 小倉宣幸部長
「それぞれの地区で地形、河川の流れ方、用排水路を含めて特徴が個別にある。地区住民に大雨が降った場合、こういった現象が起きるということをハザードマップの他に示していく」
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「こんなに違うとは思わなかった。氷見は大局的に低地が広がっていると認識していたが微妙な地形の違いでここまで起こる現象が変わってくる。自分が住んでいる場所がどういう所かよく知っておくことが、各自の防災に強くつながる」
一言で浸水被害と言っても起こり方にはその場所によって様々なパターンがあることを実感しました。
改めて、それぞれの地域でどんな災害リスクがあるか知っておくことが大切ですね。
