東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島の今を伝える明日への羅針盤。今回のテーマは「被災地の子供」。
宮城・気仙沼市では、震災の記憶がほとんどない中高生が“あの日”の出来事を学び、同世代へと伝えている。

震災の教訓を未来につなげるために

語り部ガイド:
敷地内に逃げた人たちは51人全員助かった。先生や生徒も逃げて助かった

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宮城・気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館。
震災の記憶と教訓を伝えるため、2019年3月にオープンした。

気仙沼向洋高校の旧校舎も震災遺構として保存され、校舎に刻まれた津波の爪痕がそのままの姿で残されている。

スタッフの説明に耳を傾けているのは地元の中高生たち。生徒たちは今、自分たちが語り部になるための訓練を受けている。

語り部ガイド:
ここは3階。足元の高さは8メートルと説明してください。そこにほら、車が飛び込んでいる

伝承館の館長は、震災の教訓を未来につなげるためには、子供たちの力が欠かせないと考えている。

気仙沼東日本震災遺構・伝承館 佐藤克美 館長:
私たちはいつかは老いる。東日本大震災を、2011年3月11日を忘れないためにはどうすればいいかを地元の人たちと話したところ、中学生・高校生に託そうと

中学生2人の「語り部」訓練

階上中学校1年生の佐藤桜愛(さくら)さん。語り部になるために、2020年10月に訓練を始めたばかり。
語り部の役目は、あの日 この校舎で何があったのかを訪れた人に説明すること。まずは、上級生を相手に人前で話す練習から始めた。

階上中学校1年生 佐藤桜愛さん:
ここの天井はどうなっているか分かりますか?よく見てください

上級生:
骨組みになっています

階上中学校1年生 佐藤桜愛さん:
ここの天井をよく覚えておいてください

津波で破壊された天井の様子をうまく案内できたが、あるポイントを伝え忘れていた。
木のハンマー。教室が天井まで浸水したことを今に伝えている。
それを、先輩の高校生たちが教えてくれた。

高校生:
「ハンマーとビニール袋は震災当時から10年、その状態です」と言うと情報を伝えられる

階上中学校2年生の佐々木和真さんも語り部の訓練中。慌てると早口になってしまう点が課題という。

階上中学校2年生 佐々木和真さん:
見ていただけるように、扉のふちが曲がっていたり、手すりが破壊されています

訓練の成果は?山形県の中学生を案内

2020年11月1日、山形県の中学生が震災遺構を訪れた。

彼らを案内するのは、佐藤さんや佐々木さんなど、階上中学校の生徒たち。
いよいよ、語り部デビュー。まずは佐藤さん。1階の天井を案内する。

階上中学校1年生 佐藤桜愛さん:
ここのCAD室はコンピューターを使って自習した部屋です。この天井はどうなっているか分かりますか?

川西中学校の生徒:
崩れている

階上中学校1年生 佐藤桜愛さん:
はい、そうです。ここの天井は崩れていて骨組みだけになっています。天井にあるハンマーやビニール袋は10年もそのままです。この天井をよく覚えていてください

本番では、ハンマーについても説明できた。
次は、佐々木さんの番。

階上中学校2年生 佐々木和真さん:
こちらをご覧ください。これはレターケースですが、ここに茶色い跡があります。これは津波が来た跡です。津波のスピードはとても速く、深い所ではジェット機と同じスピードで時速800㎞もあります

津波の怖さは、山形の中学生たちにしっかりと伝わっていた。

川西中学校の生徒:
とても分かりやすい説明で、一生懸命頑張っていて、僕たちもすごく感激しました

川西中学校の生徒:
震災当時のことを実際に想像することができて、すごく怖かったんだと、言葉に表せないくらい怖かったんだなと思いました

「東日本大震災」を語り継ぐ子供たち

初めての語り部を終えた佐々木さんと佐藤さん。課題を克服しようと「次」を考えていた。

階上中学校1年生 佐藤桜愛さん:
大きな声で言おうとしたが、緊張して言えなかった。でも、津波のすごさを言えて良かったと思う

階上中学校2年生 佐々木和真さん:
ちょっとだけ早口になってしまったんで、次回はそこを気を付けたいなと

東日本大震災からまもなく10年。
震災の風化を防ぐため、子どもたちが「あの日」を語り継いでいる。

(仙台放送)

仙台放送
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