いつ、どこで起こるか分からない地震などの災害。こうした災害時に高まる病気のリスクやいざという時に命を守るためにきょうからできることを医師に聞いた。
■避難生活で生じる健康被害 誤えん性肺炎・血栓症
7月に熊本県を襲った最大震度7の地震。激しい揺れにより家屋が倒壊するなど、何気ない日常の光景が一瞬にして奪われた。
いつ、どこで起こるか分からない地震だが、いざという時に大切な人の命を守るために何ができるのだろうか。
新潟大学で災害医療について研究し、実際に熊本県の被災地で支援にあたった高橋昌医師に話を聞いた。
熊本県宇城市で地域の医療機関の支援や避難している人の健康管理を本部で行った高橋医師。
被災者の支援をする中で課題に感じたというのが、避難生活で生じる健康被害だ。
誤えん性肺炎などの呼吸器疾患や深部静脈血栓症などの血栓症関係の人が一定程度、車中泊を中心に起きるという。
特に多く見られたのが誤えん性肺炎。その原因の一つが口内環境の悪化だ。
断水により歯磨きの頻度が減ることなどによって口の中の細菌が急増。食事などで飲み込む際に細菌が誤って気管に入り、肺炎を引き起こす。
ほかにも注意が必要となるのが血栓症だ。脱水により、血液がどろどろになるのがベースに一つある。
今回の熊本地震では厳しい暑さが被災者を苦しめた。
断水や停電によりライフラインが途絶える中、トイレを我慢しようと水分を十分に取らないと、若い世代を含め、誰もが血栓症になる恐れがあるという
ほかにも車中泊など足を曲げた状態で窮屈な姿勢でいるエコノミークラス症候群が多く見られる。
長時間同じ姿勢で足を動かさずにいると血液の流れが滞り血栓ができやすくなるため注意が必要だ。
高橋医師は「エコノミークラス症候群や誤えん性肺炎は常にターゲットになるため、パンフレットを作って、多くの方の目に触れるようにしながら予防策を各自がとれるよう工夫してきた」と話す。
こうした健康被害を防ぐためには、こまめな水分補給や適度な運動といった普段から取り入れておきたい基本的な習慣が重要となる。
■「持ち出すものはすごく重要」災害に備え準備するものは?
では、もし災害が起きた時に備えて今から何を準備しておけばいいのだろうか。
高橋医師は「自助の部分で、自分で用意しておくもの、災害時に持ち出すものはすごく重要で、自分の飲んでいる薬、赤ちゃんのミルク携帯の充電器、食べ物、いざとなったら持ち出せるようにしておくという工夫は有効だ」と話す。
そして、衛生環境を守るために欠かせないのがトイレ対策。お手洗いを我慢しようと、水分をとらないことは健康被害につながる。
自宅のトイレで水が流れなくてもどのように使うか、どこから水を確保するか日頃から少し考えておくといい。
自宅の水洗トイレをビニール袋で二重に覆って使う方法もある。
一日何回分必要なのか考えておくと、自分や大切な家族を助けることにつながる。
■医療サポートが必要な場合は“周囲に伝える手段”を
また、一般的な災害対策と同時に今注目されているというのが、医療の継続が必要な人だ。
例えば透析している人やいつも酸素ボンベを背負っている人など一定数いる。
医療が途切れると命に関わる人は自分がどのようなサポートが必要なのか周囲に伝える手段が不可欠だ。
高橋医師は「メモや手帳などで把握して、自分で自分の状況を周りに示せる社会的インフラづくりが必要になっていくと思う」と指摘する。
■「あすではなくきょうから準備を」
そして、これから県内で災害が起こった時に心配となるのが寒さ対策だ。
新潟の冬のように寒い場合、寒さ対策に関しては各個人の準備による部分は必ず出てくるという。
季節に応じて衣服やカイロなどの対策グッズも用意しておくといい。
高橋医師は「様々なホームページなどで災害が起きる前に備えておくことが出ているため、興味を持って自分事として色んなページを見て、できる範囲で備えること。災害はいつくるか分からないため、あした準備するではなくて、きょうから準備する。そういう姿勢が必要だと思う」と呼びかけている。
