10月1日の法改正により企業や自治体に義務付けられたカスタマーハラスメント対策についてお伝えします。
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」とはどんなものなのでしょうか。
厚生労働省では、1.顧客の言動で、2.社会通念上許容される範囲を超えて、3.労働者の就業環境が害される、この3つの要素を満たすものと定義しています。
具体的には、客から店員などへの不当な要求や、脅迫や侮辱、土下座の強要、殴る、蹴るなどの暴行などがあげられます。これらは電話やインターネット上での行為も対象となります。
企業や自治体にはこうした行為への対策が義務化されたわけですが、実際どう対応すべきなのか、岩手労働局にポイントを聞きました。
岩手労働局 雇用環境・均等室 井嶋俊幸室長
「一つは組織として労働者を守るという事業主の方針を示すこと、もう一つは現場で迷わないルール・体制を整備する、この2つが大きなポイント」
井嶋室長が対策の大きなポイントにあげるのは、カスハラから労働者を保護する方針を明確にすることと、問題が生じた際の対応を組織内であらかじめ共有しておくことです。
岩手労働局 雇用環境・均等室 井嶋俊幸室長
「カスハラは外部の顧客に対応しなけばならないことが難しい点。例えば上司にその場の対応について指示を仰ぐことや、1人では対応しないということをあらかじめ定めておくことが重要」
カスハラ対策の義務化に伴い、このほかにも企業や自治体には組織内での相談窓口の設置や、事後の迅速かつ適切な対応、警察への通報といったカスハラ抑止のための対処などが求められています。
岩手労働局では企業などの体制整備を進めようと、県内の事業者を対象に定期的に説明会を開いているほか、ポスターやチラシなどで周知を図っています。
今回の義務化では組織の方針を明確にすることが求められています。規模を問わず全ての企業や自治体は労働者の保護のためにカスハラ対策を講じる必要があります。
一方で、対策しなかったからといって罰則はありません。ただ、行政からの指導や勧告に従わない場合は企業名などが公表されることがあります。
こうした中、県内でも業種や業態に応じた対策を講じる動きが広がっています。有料老人ホームなどを運営する盛岡市の企業を取材しました。
盛岡市の有料老人ホーム「りんごのおうち」を運営する「ナラビットホールディングス」です。この日は、従業員を対象にカスハラ対策の研修を行いました。
研修では従業員が体験したカスハラについて共有し、それぞれの事例の対応について意見を交わしました。
介護の現場では自宅への訪問や、カーテン越しのケアなど「密室」になりやすい環境が多く、トラブルに発展しやすいとされています。
ナラビットホールディングスの北村充社長は、自らも5年前に介護の現場でカスハラ被害を受けました。
北村充社長
「腕をかまれたり服をちぎられたり、抑えようとしたら持っている箸で頭を刺された。ハラスメントは許されないという姿勢で会社としてはいたい」
カスハラ対策の義務化に伴い、ナラビットホールディングスでは「スタッフの身体・心身の健康を守る」ことを最優先事項に位置付けた「カスハラ防止・対応マニュアル」を作成しました。
悪質なハラスメントがあった際は、利用者との契約を解約することや、現場スタッフを1人で対応させないことなどを盛り込みました。
従業員のひとりは、「ガイドラインがしっかりあると自分が局面に立った時に、次こうしたらいいと行動が見えてくるのですごくありがたい」と話していました。
北村充社長
「言葉の暴力も含めて色々あった。義務化になったことで、堂々と事業者として対策を講じることができて本当にいいきっかけになると思う」
労働者が安心して働ける環境づくりを進めることで、より良いサービスにもつながりそうです。今回の研修を受けて初めてカスハラを受けたと認識できた人もいて、社内での理解や周知が大切だと感じられました。
岩手労働局ではカスハラ対策について随時相談を受け付けているほか、10月21日と28日に事業者向けのオンライン説明会を開く予定です。
