全国的に、大雨による水害が頻発し激甚化する中、静岡県内では、水田を生かした治水の取り組みが広がっている。川の急激な水位上昇を抑えることができるという「田んぼダム」とは。

「田んぼダム」とは?
静岡県伊豆の国市原木。こちらにある水田は一見、普通の水田だが、実は水を貯める能力を高めた「田んぼダム」と呼ばれる水田だ。伊豆の国市が、モデル事業として530万円をかけて整備した。
伊豆の国市農林課によると、通常の畦畔に比べて、約10㎝高くしている。ここでは畦畔の高さを30cmにして、水がたくさん貯留できるように整備された。広さは約4000平方メートルで、周囲を囲む畔をかさ上げしたことで、一般的な25mプール、およそ3杯分の水を貯えることができる。
水路や河川の急激な水位上昇抑制

さらに水の量を調節できる排水桝も設置したことで、雨が降ると、田んぼにたまった雨水が、排水桝にゆっくり落ちることになり、排水の量や河川の水位を抑える効果が期待されている。つまり「田んぼダム」は、大雨の際、水田にたまった水を少しずつ排水し、水路や河川の急激な水位上昇を抑えることで 住宅などの浸水被害を軽減するねらいがある。
もちろん作物の生産に影響を与えない範囲で水を貯めることが前提で、貯める水量は農家が自由に調整できる。
流域全体で取り組む治水対策

各地で頻発するゲリラ豪雨。静岡県内でも大雨による被害は毎年のように起きている。堤防の整備など、河川そのものの治水対策に加えて、流域全体で取り組む「流域治水」の一環として、注目されているのが「田んぼダム」だ。
ただ静岡県内の「田んぼダム」は西部地区を中心に増えているが、東部地区では県全体の5%ほどにとどまっている。県東部農林事務所は、歴史的に水害の多い県東部地区の狩野川中流域で、田んぼダムの取り組みを増やしていく考えだ。
過去何度も水害に襲われた狩野川流域

静岡県三島市の安久地区。こちらの7.2ヘクタールの水田が「田んぼダム」の機能をもっている。中心となって取り組んでいるのは、農家の山田俊一さん。子供の頃の記憶が、防災への強い思いにつながっている。

山田さんによると、1958年の狩野川台風をはじめ、大雨によってこの地区も大きな被害に見舞われた。公民館には小船が用意され、いざという時には公民館から小船を下ろして、助けに行くこともあったという
この「田んぼダム」によって水害のリスクが減らせるのは、「田んぼダム」よりも下流の地域。水害で困っている地域ではなく、その上流の地域で「田んぼダム」を増やす必要がある。
沼津高専の学生たち 観測機器で効果「見える化」

この日、田んぼダムに集まったのは、沼津高専電子制御工学科の学生たち。センサーを設置して水面との距離を常に測定し、「田んぼダム」の効果を「見える化」する観測機器を開発した。効果を数値で示すことで、さらに「田んぼダム」を増やすことにつながっていく。
田んぼの大区画化で農家の負担軽減も

2026年度から「田んぼダム」のモデル事業をスタートさせた静岡県伊豆の国市。実は防災だけではない、もう一つの狙いがある。田んぼの大区画化だ。農家の高齢化や地権者の代替わりで、使われなくなった水田も多い。例えば、3つの区画の田んぼを1つの区画にすることで、田植えなどの作業が1回で済むことになる。
元々ある水田の能力を活用した治水対策「田んぼダム」。「流域全体で地域を守る」という意識と共に、今後の広がりが期待される。
(テレビ静岡)

