2027年2月末、札幌で63年の歴史をつないできたホテルが幕を下ろします。
北海道の政治経済や皇族もお迎えした舞台を支えてきたスタッフの思いを追いました。
札幌市中央区の中島公園。
夕日を浴びて黄金色にきらめくこの建物は「札幌パークホテル」です。
客室数216。357人を収容できる大型ホテル。
まばゆい光を反射しているのは開業前にひとつひとつ職人が貼り付けたという磁器のタイルです。
「ここは1枚の小さな有田焼のタイルが1枚ずつ貼ってある」(札幌パークホテル歴44年 元宿泊副支配人 首藤幸子さん)
宿泊の副支配人を含め44年にわたり働いてきた客室係の首藤幸子さんです。
「今は焼くことはできても、まっすぐに貼る技術を持っている方がいない。壊すのは私としても、忍びない気持ちがあります」(首藤さん)
夕方には黄金色に輝く青い壁のホテル。
その姿もまもなく見納めです。
2027年2月末の営業を最後に老朽化で建て直すことになったのです。
「建て替え計画推進のため2027年の2月28日をもって一旦閉館することが決まっています。長くご愛顧いただいるお客様からは、寂しい寂しいと」(札幌パークホテル 石立隼人 副支配人)
「札幌パークホテル」は1964年、「ホテル三愛」として開業しました。
当時、札幌にあった大型ホテルは「札幌グランドホテル」や「札幌ローヤルホテル」など、このホテルを含めてもわずか3つだったといいます。
大型のホールを完備し、国際会議も開催されるなど、国内外のVIPがこのホテルを訪れました。
「昔はこういうテーブルやイスが無かったので、ここで十数時間立って待つことがあった」(首藤さん)
客室係を務める首藤さんに世界のVIPが利用した特別なお部屋を案内してもらいました。
「こちらが居間になります。こちらがダイニングで引き戸がありドアを閉められるようになっている。食事の準備をしている間は、おくつろぎいただくため、見せないように」(首藤さん)
広さ123平方メートル、このホテル最上のスイートルーム「インペリアルスイート」です。
「こちらがシャワーブース、洗面ボウルが2台ございますので、それぞれお一人ずつご利用いただけます」(首藤さん)
この部屋を利用したVIPとは…
「アメリカのクリストファー国務長官や中国の江沢民国家主席など各国の方々がいらっしゃいました。日本では皇室の方々がこちらのお部屋をご利用いただいております」(首藤さん)
有田焼の壁だけでなく、滝が流れる美しい中庭や、エレベーター前の大理石の壁は開業当時のままだといいます。
そして、地下には会員制の「パーククラブ」が…
ここには長年、政財界の重鎮が集まり、道内の政治経済を動かす舞台となりました。
しかし、まもなくその歴史に幕が下ろされます。
「こちらはベルマンの制服で、こちらはロビーサービスかエレベーター係の制服。フロントサービスやエレベーターガールという名前があって、昔エレベーターに人が付いていたんですよ」(元副総支配人 前谷辰夫さん)
大学を卒業してすぐに、ここでホテルマン人生を歩み始めた前谷辰夫元副総支配人です。
「建物を壊すのが非常にもったいないなと思いますね。できれば有形文化財かなそんな風にしてでも残した方が良かったかと思います」(前谷さん)
あと5か月ほどで迎える閉館の日。
客室係の首藤さんは、きょうも厳しい目で館内を整えます。
きれいに見えても老朽化は進んでいます。
首藤さんは壁に不具合がないか手で触れて調べます。
「璧紙が壁にしっかりついている部分と、浮いている所がある。クラックですね。音が違いますでしょ。壁紙が浮いていると、音が少し高くなるんです。常に手でこうやって擦るもんですから指紋があまりなくなって、こすれてしまった」(首藤さん)
かつて大型ホテルが3つだけだった札幌。
時代が変わり外資系をはじめとしたホテルが林立するなか、次の時代への準備のため一時閉館します。
「何年後になるのか私も存じ上げませんけれども、新館が建った時には、伝統が残って引き継がれてほしいという願望があります」(首藤さん)
半世紀以上にわたり、街の記憶を刻み続けてきた「札幌パークホテル」
その歴史と誇りを胸に、閉幕の日まで歩み続けます。
