先月、近畿で初めて兵庫県の神社が倒産しました。
実はいま、地域の神社や寺は存続の危機に直面しています。
日本には約18万の宗教法人がありますが、それを支える信者の数はこの17年で3000万人以上減少し、「2040年には全国の宗教法人のおよそ3分の1以上が消滅の危機に陥る」という試算もあります。
生き残りをかける神社仏閣の現場を徹底取材しました。
■ 近畿初の神社倒産が示す危機の深刻さ
先月、清和源氏発祥の地として知られる兵庫県の多田神社が、金銭トラブルを発端とした経営難により倒産しました。
近畿地方で神社が倒産するのは、これが初めてのことです。
文部科学省のデータによると、日本にはおよそ18万の宗教法人が存在しますが、それを支える信者の数は2007年の約2億659万人から2024年には約1億7505万人へと大幅に減少しました。
檀家や氏子の数が減り続けるなか、「2040年には全国の宗教法人のおよそ3分の1以上が消滅の危機に陥る」という試算も出ています。
神社仏閣が減ることで、私たちの日常生活にも影響が及ぶと専門家は指摘します。
【北海道大学大学院文学研究院 櫻井義秀特任教授】「ある程度の数の寺があるエリアだったらいいんですけども、そもそも村に1つしか寺がないなら、本当に葬儀とか法事で困るのではないか。
(寺や神社も)お客さんが来るのをじっと待つのは、京都とかであればいいとは思うんですけど、信者を求めていく宗教施設でないと、これから難しいのではないか」
■神社仏閣の減少は私たちにも影響が
また、世界遺産・高野山では宿坊の収益をめぐり、3年間でおよそ9000万円、総額1億円を超える税金の申告漏れが明らかになりました。
申告漏れが指摘された総持院は「会計処理および寺院運営の透明性を高めていく」とコメントしています。
高野山で宿坊を営む寺院のひとつは「高野町の人口はおよそ2500人で、117もの寺院が存在する高野山では、そもそも檀家の数は多くありません。宿坊事業は寺の維持のためにも重要なものとなっています」と打ち明けます。
■ 「人口減少、過疎化が大きく影響」那智勝浦町の寺に密着
取材班は和歌山県・那智勝浦町の寺に密着。
世界遺産・熊野古道の近くにある、1200年の歴史を持つ大泰寺(だいたいじ)です。
大泰寺の西山十海住職は、もともと近くにある別の寺の出身でした。10年ほど前、後継者不足で存続が危ぶまれていた大泰寺を引き継ぎ、現在は合わせて4つの寺の住職を兼務しています。
地域では「空き寺」と呼ばれる住職不在の寺が増え、寺を支える檀家の数も減少の一途をたどっています。
【大泰寺 西山十海住職】「人口減少、過疎化が大きく影響している。布施や寄付が減って経営が苦しくなっている寺が多い」
■宿坊の収益は今や寺の運営を支える不可欠な柱に
そこで西山住職が7年前に始めたのが、観光客も利用できる宿坊事業です。
昔は住職の住まいだった6部屋を宿坊として開放し、一泊1万5000円で提供しています。
取材当日に訪れていたのは、ブルガリアから新婚旅行で訪れた夫婦。
【キャロリーナさん】「本物の日本に触れたくてお寺に泊まることにしたの。ここで寝て…これなんて言うんだっけ?畳!自分の国にはないわ」
もともと英語教師だった西山住職が、写経の意味や仏教の教えを英語で丁寧に説明すると、2人は真剣な表情で筆を走らせました。
翌朝は6時半から座禅も体験。夫のトードルさんは「魔法のようだったよ。自分自身に集中できた。この教えを母国に持ち帰りたいね」と語りました。
宿泊者のおよそ9割は外国人観光客が占めており、宿坊の収益は今や寺の運営を支える不可欠な柱となっています。
■ 僧侶がヘルパーに “お坊さんヘルパー”
観光地ではない都市部の寺は、どのような生き残り策を図っているのでしょうか。
大阪市西淀川区にある西栄寺では、朝のお勤めでお経を唱えた後、僧侶の吉田敬一さんが袈裟から作務衣に着替え、隣の建物へと向かいます。
その先にあるのは、寺が9年前に立ち上げた介護施設のデイサービスです。
介護福祉士の資格を持つ吉田さんを中心に、およそ20人いる僧侶のうち半数以上が介護の資格などを取得し、「お坊さんヘルパー」として施設で働いています。
利用者からは「私は違和感ない。住職も昔から知っているし、もうここで一生世話になるつもりです」という声が聞かれました。
■寺ならでは お坊さんが“死”について語る「デスカフェ」開催も
また、寺が運営する施設ならではの特色として、僧侶が進行役となってお菓子を片手に“死”についてカジュアルに語り合う「デスカフェ」も開催されています。
さらに、これまで利用者のおよそ3分の1がお葬式などを西栄寺に依頼したといいます。
【西栄寺 吉田敬一僧括】「“お坊さん”という1つのキャラクターが、安心してもらえているような受け止めですね。時代の流れに応じて、寺も変わっていかないと“宗教離れ”や“お寺離れ”は進んでいくだろうと思います」
■ 住職・カフェオーナー・鍼灸師 ”三刀流”で生き残りを図る
さらに異例の“三刀流”住職も。
兵庫県加古川市にある照徳寺の住職を務める木村正幸さんは、寺の近くで「坊主カフェ」を経営し、看板メニューの梅のかき氷を自ら提供します。さらに、国家資格を持つ鍼灸師としても診療を行う“三刀流の住職”です。
照徳寺では、檀家(門徒)が亡くなったり、地域から出ていったりして急速にその数が減少しています。本業だけで生き残ることは難しく、状況は悪化していく一方だと木村さんはみています。
【”三刀流”の住職 木村正幸さん】「どんどんどんどん寺の収入が減っていく。物価は上がるが、お布施収入は一緒。同じような状況と思います。
今までの仏教というのは“生死”を縁としていますけど、仏教を聞けるところ、縁を増やすことも(3つの仕事に)大きく関わっています」
それぞれの神社仏閣が、それぞれの地域の実情に合わせた道を模索しながら、存続のための取り組みを続けています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月15日放送)
