大阪維新の会が実現を目指す「大阪都構想」。維新はその賛否を問う住民投票について、来年春の統一地方選挙と同時に実施しようとしている。
過去の統一地方選の日程を紐解くと、その投開票日は4月の第二日曜日となるケースが圧倒的に多く、来年4月に当てはめると「11日」となる。
これを踏まえ、大阪維新の会の所属議員は毎月11日を「都構想デー」と銘打ち、街に出て有権者たちの意見を聞く日に決めた。
「2回否決されたのに、なんでまたやんの?」「私は死ぬまで大阪市民でいたい」
こうした市民からの厳しい言葉にも真摯に耳を傾けるのは、大阪維新の会所属で当選1期目・27歳の最年少の大阪市議・清水皇議員。
「維新は応援しなくても大丈夫です。でも今回の都構想に関しては、賛成・反対の理由を平等にしっかり聞いていただきたい」と街頭で声を掛け続けた。
■1回目の住民投票は16歳だった27歳の新人議員
おととし10月の市議補選に25歳10カ月で初当選した、西淀川区選出の清水市議。
相手が話し始めると、相手の目をみてじっと聞く姿が印象的で、先輩議員たちから、すでに厚い信頼を寄せられている。
「議員」として「都構想のメリット」を訴えるのは、今回が初めてとなる。
1回目の住民投票が実施された11年前は16歳で、当時は被選挙権どころか、選挙権すらなかった。
■当時の橋下市長が「出直し選」 政治に興味を持つように
「民意の後押しを受けなければならない」
1回目の住民投票が行われた前年、当時の橋下徹市長は都構想を進めるため、辞職して、出直し選挙を行うと発表した。
このとき、清水市議は中学卒業間近だった。当時の記憶は、今も鮮明に残っているという。
【維新 清水皇大阪市議】「普段政治の話をしない家族や知り合いが、当時みんな都構想の話をしていた。特に橋下さんは強烈な印象で、『またなんか言ってるぞ』、『大阪市が変わるみたいやぞ』という話を聞き、『何それ?』と“都構想”に関心を持ち始めた」
興味本位で、各政党の演説会場に足を運ぶと、大人たちが白熱した議論を交わしていることにまた驚いた。
■封印していた「都構想」当初は「公約に掲げていないのに進めていいのか」悩みも
そして、政治の世界への関心は徐々に強くなり、専門学校を卒業後、地元府議の秘書を経て、おととしの補欠選挙に立候補して当選した。
2度の住民投票での否決を経たこともあり、「都構想」を封印していた維新で、清水市議も初当選した補選では公約に掲げていなかった。
そんな中で「3度目の住民投票」へ進もうとした党代表の吉村知事に対し、維新の大阪市議団は一時、慎重な姿勢を見せたこともあった。
清水市議自身も「公約に掲げていないのに進めていいのか」と考えたそうだ。
その後、党内で議論を重ねる中で、もともと「大阪の発展のために必要な改革」と考えていたこともあり、「大阪市民にとって良い制度をつくろう」と前向きになっていったと話す。
【清水皇市議】「過去と違うのは『副首都』が関わっていること。”都構想”は大阪市域だけの話ではなく、府全体、さらには関西のリーダーとなるための仕組みづくりだとしっかりお伝えしていきたい」
■住民投票実施?「4月11日」念頭に「毎月11日は『副首都・都構想デー』」と維新
現在、「都構想」の制度設計を話し合う「法定協議会」には、反対する公明や自民などの会派は参加せず、維新の議員たちだけで議論されている。
その中では、大阪市を廃止した後は4つの特別区に再編することが決まり、府と市が担う業務の分担についても“一定のめど”がつけられた。
そんな今月7日、大阪維新の会の党本部は、所属議員たちに、ある「指示書」を送っていた。関西テレビが入手したその書面には、次のような文が記載されていた。
「今月から毎月11日を『副首都・都構想デー』と設定しました。(副首都・都構想)実現にむけた機運の醸成につなげる機会にしたい」
毎月11日に、維新の議員たちが街頭に立ち、ビラ配りなどをして市民に「都構想」について説明する日と定めたというのだ。
ある維新幹部は市議に「ビラ配布1000枚」のノルマを課したといい、別の幹部は「住民の関心が高まっていないと言われるが、我々が発信していかないと関心は高まらない」と狙いを語った。
なお、初回である今月11日用のビラには、区の名称を募集する趣旨が書かれていた。
■ノルマは「ビラ配り1000枚」も前向きな清水市議
ビラを配り終えていようと、いまいと、毎月11日には次のビラが1000枚届くことになった清水市議。4月に住民投票が実施される場合、「都構想デー」は残り7回だ。
清水市議は「地域の方にとって区の名前はものすごく重要な部分なので、早くお配りして、少しでもご意見を聞ける期間を作りたい。きょうで1000枚全部配るという思い」と話し、街頭に立った。
清水市議の相棒は、選挙カーならぬ、「選挙バイク」。電動自転車の前かごにスピーカーを入れ、後方にはポスターを貼った自作のかごを取り付けて、選挙区内を巡る。
■「都構想だけは絶対には嫌」 市民の思いは変えられるのか?
「3回目の大阪都構想、なぜ訴えているのかというと、副首都構想があるからです。東京に何かがあったときのバックアップ機能、そして通常時は東京一極集中ではなく、もう1つの発展する拠点を作る」
団地やスーパー、商店街前での演説が日課で、この日も馴染みの場所を回ると、普段からその光景を目にしている市民たちが駆け寄ってきた。
「頑張ってはるから応援しています」と好意的な声も聞こえてきたが、3度目の住民投票に対し、厳しい指摘が飛んでくる。
維新の候補者に投票することもある一方、“都構想”の住民投票には、過去2回とも反対したという女性は「なんで(3回目)するんやろうと思って。なんですんの?」と繰り返し質問をぶつけた。
清水市議が「副首都を目指す今、府と市の広域業務を1つに絞って、副首都の機能を最大限生かせるような仕組みづくりを…」と答えていたところに、かぶせるように新たな質問が飛ぶ。
【市民の女性】「それで財政は改善されるの?都構想やるのになんぼお金使う?」
女性は清水市議について「人間的に頑張っているから応援しようと思っているけど、死ぬまで大阪市西淀川区民でいたい」と話し、「もう諦めえや」と声を掛けていた。
否定的な意見が繰り返されても、清水市議は必死に説明を続けた。しかし市民の考えも簡単には変わらない。
【市民の女性】「都構想だけは絶対嫌。響かない」
■過去は維新応援も「もうアカン」 長時間の説得も
清水市議が30分以上説明した人もいた。
最初は維新を応援していたという市民は、維新が「身を切る改革」を謳う一方で、一部議員が「国保逃れ」の問題を起こしたことや、与党入りした国政の方針転換を巡り、「一貫性がない」と厳しく指摘した。
雨も降り始める中、清水市議は言葉をつなぐ。
【清水市議】「最後のお願いじゃないですけど、維新は応援しなくても大丈夫です。でも今回の都構想に関しては、賛成・反対の理由を平等にしっかり聞いていただきたい。
私は初めて都構想をみたのが高校生だったんですけど、めちゃくちゃ勉強させてもらって、今(の制度)よりも絶対いいと思った」
やりとりを続けていると、住民が反対する根本の理由が見えてきた。
【市民】「大阪を作ってきたのは私たち市民。大阪は東京とは違う商人のまち。梅田と西淀川区も違う。なんで住民の声が反映されへんの?」
【清水市議】「(都構想で特別区を設置できれば)大きな仕事は大阪府に任せて、市民の声を反映させるもっと身近なまちづくりができる」
■手ごたえは「あと7カ月ある」
手ごたえを聞くと清水市議は、「あと7カ月ある」と、前向きだった。
【清水市議】「『都構想反対』と最後までおっしゃる方でも丁寧に聞いて、特別区の利点は理解してもらえた。丁寧に説明すれば、今よりもいい大阪が実現できると思って活動している。『都構想デー』を続ければ、関心も絶対高まっていくと思う」
なお、この日だけでビラは2~300枚は配ったという。
■「都構想反対」公明「開催したタウンミーティング」では9割反対も…
維新が議論の盛り上がりを狙う一方、「都構想反対」を掲げる公明党や自民党はどのような動きをしているのだろうか。
公明党市議団はことし7月から9月にかけてタウンミーティングを計16回開催。
来場者へのアンケートでは、有効な回答があった2514人のうち92.8%が「都構想」に反対と答えたという。
一方で、市域全体など広く世論調査を行う考えは「今のところない」としている。
■公明・自民はきょう横山市長と議論へ
また、自民党大阪府連の松川るい会長は先月の定例会見で、「都構想」ではなく、府と市の連携協約による副首都指定を目指すため、9月中の「副首都大阪・成長戦略プロジェクトチーム」の設立を目指すと発表。
府内選出の国会議員や地方議員に参加を呼び掛ける方向で調整していて、公開討論会を行うことも検討しているという。
ただ、統一選を春に控えた今もまだ、表立った動きは見えてこない。
こうした中で、市議会の公明・自民の両会派が求め続けてきた特別委員会、「大都市税財政特別委員会」がついにきょう=16日に開催される。副首都に絡めて都構想の必要性を巡り、質疑が行われる予定だ。
大阪の未来を担うのは「都構想」による街なのか、それともそれ以外の手段なのか。市民が納得できるものになるよう、家庭でも話題になるような議論を期待したい。
