大阪府内ではことし、“ニセ警察官”を名乗る詐欺被害額がすでに81億円に上り、特殊詐欺全体の4割を超えるという深刻な状況です。
そして被害者は高齢者だけにとどまりません。
SNSやビデオ通話に慣れた若い世代にも被害が広がり、しかもその手口にAI技術が組み込まれている可能性が浮上しています。
一体、どのような手口なのでしょうか。
“ニセ警察官”の裏に潜む「AIの脅威」を徹底取材しました。
■ある日突然かかってきた「警察からの電話」
ことし6月、関西圏に住む30代のAさんのもとに、1本の電話がかかってきました。
「突然、携帯番号からかかってきまして。取引先の電話番号かと思って、すぐに出たんです」とAさんは振り返ります。
画面に映し出されたのは「090」から始まる知らない電話番号で、「愛知県警の生活安全課のサトウ」と名乗りました。
サトウと名乗る“ニセ警察官”は、まず周囲に人がいないかどうかを確認し、「あなたの口座が犯罪に使われている可能性があります」と切り出し、Aさんを動揺させました。
■とめどなく話をして『反論させない空気感』
さらに「Aさんの名義のキャッシュカードが詐欺グループの事件に加担している」と告げ、Aさんを不安にさせます。
Aさんは「どこでどの口座が、というのは自分でも見当がつかないので。もしかしたら可能性としてはあるかもしれないと思いました」と話します。
また、具体的な罪状を交えながら、とめどなく話をしてくるという手法も、「反論させない空気感をつくる巧妙な手口のように感じた」といいます。
■始まった“取り調べ”
その後、ビデオ通話に切り替え、“詐欺事件担当”の警察官を名乗る第二の男が現れます。
始まったのは、“取り調べ”。高圧的な態度でAさんを追い詰めます。
【“ニセ警察官”井上を名乗る男】「現時点で我々に隠していることがあるんじゃないですか?」
Aさんが「家族に相談したい」と話すと…
【“ニセ警察官”井上を名乗る男】「家族、友人、職場の人、どんな人であっても捜査情報の漏洩はできませんよ。あなた自身はもちろんのこと、情報を知ってしまった第三者にも取り調べを行う必要が出てきます」
【Aさん】「弁護士にもですか?」
【“ニセ警察官”井上を名乗る男】「直接、あなたが弁護士とやり取りするするべき形ではない」
“ニセ警察官”とのやりとりは1時間以上続き、Aさんはしつこく「個人情報」を求めることを不審に思いビデオ通話を切りました。
Aさんは「1対1のやりとりだと没入していくというか、相手に乗せられていく感じはしました」と当時の様子を振り返ります。
■若い世代も無縁ではない 被害が拡大する背景
大阪府警府民安全対策課の横井健志警視は「被害者は高齢者だけではなく、若い世代の方も被害に遭っています」と警告し、「警察はSNSやビデオ通話などで逮捕状を示したり、取り調べをすることは絶対にありません」と注意を呼びかけました。
若い世代がSNSやビデオ通話の利用に慣れているがゆえに、ビデオ通話での『取り調べ』に違和感を抱きにくいことが、被害拡大の一因と見られています。
■AIで『顔』さえも変える 独自検証で見えた脅威
取材班は、大阪府警が公開した映像を解析したトレンドマイクロ社の監修のもと、AIを使った『なりすまし』技術を独自に検証しました。
オンライン会議ツール上で、リアルタイムに顔を別人のものに変えることができるのです。
検証では、ボタンを1つ押すだけで、数秒のうちに記者の顔が吉原キャスターの顔に置き換わり、口元や目の動きも連動しました。
■「特に口周りや目はリアルに再現」
トレンドマイクロの佐藤健さんは「特に口周りや目はリアルに再現されているかなと思います」と説明します。
さらに顔だけでなく、別のツールを使えば声を変えることも簡単にでき、映像と音声の両方で別人に『変身』することが技術的に可能な状態です。
■「今見抜けても、将来は見抜けなくなる」
【トレンドマイクロ 佐藤健さん】「AIの領域はどんどん進化しているので、今見抜けたとしても、将来的には見抜くことができなくなる可能性も十分考えられます。
オンラインミーティングのカメラ映像は信用してしまっている人が多いが、その映像は簡単に変えられるものだということを、まず認識いただければ」
被害を防ぐための第一歩として「まずは手口を知ることが重要」と話しました。
警察はSNSやビデオ通話で逮捕状を見せたり、取り調べをすることは絶対にありません。「AI犯罪」の被害に遭わないために、画面の先の人物には注意が必要です。
(関西テレビ放送「newsランナー」2026年9月11日放送)
