「撮られると思ってなかったので、ビックリ」——そう笑顔で話す生徒の様子も、そのままインスタグラムに投稿される。鹿児島県出水市の私立・出水中央高校の公式インスタグラムが注目を集めている。フォロワー数は3万人、体育祭前のフォークダンス練習動画は投稿からわずか5カ月足らずで再生回数1000万回を超えた。運用の中心を担うのは、映像の専門家ではなく普段は看護を教える教員たち。なぜ何気ない高校の日常が、これほど多くの人の心をつかむのか。
昼休みの食リポから「鬼滅の刃」のものまねまで
ある日の昼休み、食事を楽しむ生徒たちにスマホが向けられる。「だしがきいていておいしいです!」「濃厚でおいしい、クリーミーです!」——照れながらも上手な食リポを披露する生徒たち。さらに人気アニメ「鬼滅の刃」のものまねを見せる生徒も現れる。撮影されたこうした動画が、そのまま学校公式のインスタグラムへと投稿されていく。
出水中央高校がインスタグラムの運用を開始したのは、今から5年ほど前のことだ。きっかけは、保護者に学校の日常を伝えたいという思いだった。同校デジタル推進室の山田龍之介さんはこう語る。「寮生を抱えている学校でもあり、なるべく学校の様子を遠方の保護者にも伝えたい。形式張ったものではなく、とにかく保護者が安心してもらえたらと思い、普段の様子を出している」。
「端に写っている様子」に面白さが宿る
インスタグラムの撮影や投稿を担うのは、看護学科の教員たちだ。映像制作の専門的なノウハウは持っていないが、生徒の自然な姿を切り取ることにこだわり、ほぼ毎日投稿を続けている。
担当する井脇恵美教諭は、撮影を通じて気づいたことがある。「みんなすごく、楽しそうなんです。何をしていても楽しそう。撮られてない生徒の方が良い表情をしているときもある。端に写っている様子の中にけっこう面白い素材があったりする」。
意図せず映り込んだ生徒の表情や仕草の中にこそ、見る人の心を動かすリアルな青春がある。加工や演出ではなく、日常のありのままを切り取る姿勢が、多くのフォロワーを引きつける理由のひとつといえるだろう。

専門家も評価する「インスタ広報」の自然な流れ
こうした取り組みについて、インターネットを活用した学校の広報活動に詳しい学校広報WEB・SNS研究会の渡辺健太理事は次のように評価する。「普段の様子を発信し、保護者に安心感を得てもらう意味では、地方の学校でも東京の学校でも同じで、とても意味のある広報活動。40〜50代の女性の保護者世代も高校生も使うインスタグラムでの情報発信や広報活動は自然な流れといえる」。

保護者と生徒の両世代が利用するプラットフォームを選んだことが、発信の効果を高めているわけだ。なお、生徒を守るため、投稿へのコメントは書き込めない設定にしている。
校長先生も登場、始業式のメッセージも動画で
動画に登場するのは生徒だけではない。9月1日の始業式、約40日ぶりに登校する生徒に向け、ホワイトボードに偉人の名言を書き込む宮原義文校長の姿も撮影され、広く発信された。
宮原校長はその思いを語る。「新学期でもしかしたら『学校に来たくない』とか『2学期を迎えるのが嫌だ』という生徒がいるかもしれない。先生や生徒に相談してもらい『一人で悩まないで』とメッセージを伝えたい」。SNSを単なる広報ツールとしてではなく、生徒への支援の場としても活用しようとする姿勢が伝わってくる。
8月22日には2026年度の生徒募集に向けた体験入学会も開かれ、井脇教諭が歩きながら生徒に「一番楽しいことは何ですか?」と質問する様子も収められた。突然カメラを向けられても笑顔で答える生徒たちが、学校のPRにも一役買っている。
「お母さんたちは『もっと映れ』と言ってくる」
生徒たちはこうした取り組みをどう受け止めているのか。ある生徒は「学校を広めるのに良い取り組みだと思う。面白いです」と話す。保護者の反応を尋ねると、「すごく『いいね』しています。『また出てきた』と。お母さんたちは『もっと映れ』と言ってくる」と笑顔で教えてくれた。遠方の保護者も、我が子の日常をインスタグラムで楽しみにしているのが伝わってくるエピソードだ。

宮原校長は今後の展望についてこう述べる。「我々が思っている以上に、SNSの浸透力はすごいと感じている。より魅力的な映像を発信して今のフォロワー数3万人をもっと増やしたい」。
専門的な機材も編集技術も持たない教員たちが、生徒の何気ない表情を丁寧に拾い続けることで生まれたコンテンツが、今や全国規模で注目される。出水中央高校の青春の発信は、これからも続く。
【動画で見る▶青春を発信し最多再生回数は1000万回超! バズる!鹿児島・出水中央高校のSNSに迫る 】

