建物の取り壊しまでの2年限定で営業している喫茶店。
タイムリミットが近づく中、若き店主が新たな挑戦を始めました。
喫茶店を舞台にした演劇です。
その思いを追いました。
20人の観客を前に繰り広げられる演劇。
その舞台となっているのは、喫茶店です。
若き店主が手作りで演劇に挑戦したのには、ワケがありました。
「いらっしゃいませ」(イエローストーン店主 伊藤 瑠花さん)
北海道帯広市の喫茶店「イエローストーン」を営む伊藤瑠花さんです。
看板商品はナポリタンとプリン。
注文が次々と入り、店内はケチャップとバターの香りに包まれます。
「とてもレトロでわくわくする」
「雰囲気がすごく好き。ナポリタンもおいしい」(ともに来店客)
伊藤さんがこの店を始めたのは、2025年1月のことでした。
前の経営者が体調不良で閉めた店舗を、別のレストランで働いていた伊藤さんが引き継いだのです。
しかし、それには条件がありました。
「もう取り壊す予定だと言われた」(伊藤さん)
条件とは、建物を取り壊すまでの2年限定での営業でした。
壁紙の張り替えなどを自ら手作業で行い、オープンしてから1年半あまりが過ぎました。
「お客さんがいろいろ持ってきてくれて、ものが増えた。店の模型もお客さんが作ってくれた」(伊藤さん)
伊藤さんはこれまで自分の店を舞台にして、さまざまな挑戦を行っています。
地元のイラストレーターの個展を開催したり、その様子をSNSで発信したりしてきました。
限られた時間で、いろいろなことをやってみたいという思いからです。
そして、今回は。
午後3時。
本来の閉店時間より早く店を閉めた伊藤さん。
テーブルを移動し、幕を設置。
ステージが出来上がりました。
今回の挑戦は、店を舞台にした演劇です。
「店を始めた時から演劇を店内でできたらいいと思っていた。『やってみようか』という感じで始まった」(伊藤さん)
小学5年生から地元の児童劇団に入り、高校生の時まで活動していた伊藤さん。
店の雰囲気を生かした劇を作りたいと、児童劇団時代の監督や仲間とともに4か月にわたって準備を進めてきました。
「現実にする力を感じる。やりたいことを実現させる」(児童劇団出身 シミズノゾミさん)
「演技をしながら喫茶店を経営し、食事を作り せりふを覚える姿に敬服」(監督 ツジアツロヲさん)
喫茶店から、360度観客席に囲まれたステージに変身。
定員は20人で満席です。
演目は、オリジナル脚本の「雨とナーダ」。
雨をきっかけに出会った不思議な少女の物語です。
伊藤さんはヒロインの「ナーダ」を演じ、1時間30分に及ぶ上演は無事終わりました。
「小学校時代の教え子だが、当時から天真らんまん。やると言ったら有言実行でやるのが彼女らしい」
「本職と自分の今まで生かしてきたことを組み合わせてやるのは、すばらしい企画だと思った」(ともに観客)
6回の公演は、全て満員の盛況でした。
「将来の夢として演劇と料理は別々の道でしかできないと思っていたが、一度に同じ場所でできたのが大きい。最後の日はパーティーをする予定。閉店の日が私の誕生日なので、誕生パーティーと兼ねて。店の終わりは悲しいかもしれないが、私のスタートでもあるので最後まで頑張っていきたい」(伊藤さん)
閉店まで半年あまり。
伊藤さんは走り続けます。
