「アサヅマ」は、道産米や全国のブランド米を中心に、お米の販売・宅配事業を展開する米穀店です。現在は、新鮮野菜やご飯のお供となるオリジナル商品の販売、ライフサポート事業にも取り組んでいます。代表取締役社長の朝妻史江さんに、家業を継いだきっかけ、お米の適正価格、地域に根差した取り組みについて聞きました。
家業を継ぐとは思っていなかった
――子どもの頃は、どんなお子さんでしたか
「すごく人見知りで、内気な子どもでした。小さい頃から客室乗務員になりたいと思っていて、ドラマ『スチュワーデス物語』の影響もあったと思います」
――家業を継ぐことは考えていなかったのですね
「家の1階が事務所で、2階が住居だったので、会社があることは知っていました。ただ、両親から継いでほしいと言われたことはありませんでした。女の子3人でどうするのかと友達に言われたことはありますが、私たちが継ぐものではないと思っていました」
――その後は東京で学び、国会議員の秘書を経験されたのですね
「高校までは札幌で、その後は英語を勉強するため東京の専門学校に行きました。客室乗務員になる夢は途中で諦めましたが、もう少し東京にいたいと思い、国会議員の先生の秘書をすることになりました。スケジュール管理や電話の取り次ぎだけでなく、誰といつ会うのかを自分で考える必要があり、難しい仕事でした」
――家業に戻ったきっかけは何だったのでしょうか
「父が体調を崩して手術を受けたことです。母から、東京にいる3人の娘のうち誰か1人帰ってきて、父の仕事を手伝ってくれないかと言われました。妹たちは大学生や就職したばかりだったので、私が帰ろうと思い、札幌に戻りました」
変化する業界で新しい楽しみを届ける
――戻ってからは、どのような仕事を始ましたか
「父のサポートとして、仕入れや経理など、父が担当していた仕事を少しずつ覚えていきました。お米業界では、以前は米屋でしか買えなかったお米が、スーパーやコンビニ、ドラッグストアでも販売されるようになりました。販売場所が増えることで価格も変わり、これまでの常識がどんどん変化しています。お米は今も変わり続けている業界だと思います」
――社長になった経緯を教えてください
「父が高齢になり、体力的に仕事を続けることが難しくなりました。今後について話し合う中で、父が誰かに継いでもらえたらという思いを口にしたのです。それを聞き、私が継ぐことが父への恩返しになるのではないかと思いました。祖父の代から会社を支えてきた社員も、やりたいことを言ってくれれば私たちが全部やると言ってくれ、背中を押してくれました」
――社長になってから、どのような取り組みを始めましたか
「お米はいつもの商品を注文することが多く、買う楽しみはあまりないのではないかと思っていました。そこで、農家さんとのつながりを生かし、新鮮な朝どり野菜を届ける取り組みを始めました。道の駅で野菜を買うような楽しみを、高齢の方にも届けたいと考えたのです」
農家さんが続けられる適正価格を
――お米の価格が上がる中で、難しさを感じることは何ですか
「現場にいても、私たちにもわからないことがあります。団体などで情報を共有しても、みんながわからないという状況です。できるだけ安く提供したい気持ちはありますが、農家さんにとっては、高くなければ今後続けていけません。そのバランスをどう取るのかは、本当に難しいです」
――農家さんの作業を体験して、感じ方も変わったのですね
「よく、一粒一粒が大切だと言われますが、玄米を仕入れて精米し、白米にして販売する前の作業については、私も知りませんでした。社長になってから農家さんにお願いして体験させてもらうと、本当に大変な作業でした。高齢の方たちと一緒に作業をして、これだけ大変なのに、こんなに安いのはおかしいのではないかと思いました」
――消費者には、どのように受け止めてもらいたいですか
「お米とはこういうもの、このくらいが適正な価格なのだと理解してもらえるとうれしいです。安かった時期は、ご飯一膳が20円少しでした。今は65円少しですが、パンやコンビニのおにぎりと比べると、決して高すぎるものではありません。適正な価格なのだと思ってもらえるとうれしいです」
食材を生かし、100年企業の先へ
――現在、力を入れている商品について教えてください
「ご飯のお供になるプライベートブランド商品を作っています。第1弾はおかずみそ、第2弾は帆立の甘露煮、第3弾はニシンのアヒージョです。廃棄される予定だったホタテや、数の子以外の身の部分が廃棄されているニシンを、ご飯のお供として生かしました」
――これからの会社について、どのように考えていますか
「当社は現在、創業98年です。100年はゴールではなく通過点なので、そこからさらに100年続く会社にしていかなければならないと思っています。米屋ではありますが、宅配にこだわっていることには意味があります。お客様を待つのではなく、私たちから会いに行けることが強みです。その強みを生かし、高齢の方の生活をサポートできる会社になりたいと思っています」
――白いご飯に一番合うお供は何ですか
「母の唐揚げです。母は亡くなってしまいましたが、母の唐揚げとご飯が世界で一番合うと思っています」
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