「ちょっと限界かなと思って…」と俯く名物ホルモン店の女将。閉店の危機に瀕する名店を復活させるため立ち上がったのは…。祖父の代からずっと続く味を守るため、三代目を継承した孫の姿を追った。
市場の復活を象徴する商業施設
北九州市小倉北区の旦過市場。市民の台所として長く愛されてきたが、2022年に2度、大規模火災に見舞われ、多くの店舗が移転、閉店を余儀なくされた。
そのなかで整備が進められている『旦過市場いちばん館』。大規模火災に見舞われた旦過市場の復活を象徴する商業施設だ。

4階建ての商業施設で、1階は、これまで旦過市場で営業していた店が数多く出店し、2026年11月にオープンを予定している。
ホルモンの旨味を引き出す秘伝のタレ
北九州市小倉南区にある焼肉店『源福』。

カルビに、タン、ロースなど種類豊富なメニューの中でも一番の人気商品が、美味しそうな小腸だ(ホルモン1人前 税込み825円)。

焼き加減のポイントは皮。皮を中心に焦げ目が付くほど焼いていく。カリッとした食感でとろけるほど。なによりタレがホルモンに負けてない。

「祖父が旦過市場で70年ぐらいホルモン店をやっているんですが、そこで一緒に売っているタレをうちも使っています」と話すのは『源福』の店主、福田太輝さん。

3年前に焼き肉店を新たにオープンしたのも実は、70年守られてきたホルモンとタレが店を始めるきっかけだった。

「週に1回、ホルモンを物心ついたときから食べていたので。小さい頃から祖父のホルモンが身近にあって、タレもあって、仕入れルートも確立されていて」と全ての条件が整っていたという。

思い出の味であり、今では大切な仕入れ先でもある祖父が作るホルモンとタレ。しかし実は今、その味が苦境に立たされている。

脳梗塞で倒れた二代目 店存亡の危機
旦過青空市場に店を構える『新井ホルモン』。太輝さんの祖父母が営む店だ。以前は南側にある中央市場内にあったのだが、旦過地区の再整備に伴い青空市場へ移転した。この移転が店の命運を大きく分けた。

「移転してからは、全然ダメですね。移転前は、ズラッと行列ができてたんですよ。人気のお店でね。今はもう食べていけるか、いけないかって感じ」と話すのは『新井ホルモン』の女将、福田美保子さんだ。

旦過市場を襲った2度の火災と、再整備による移転が重なり、閉店したと勘違いした人が多く、客足は一気に遠退いたという。

そうした状況の中でも店に立ち続けていたのが、太輝さんの祖父であり、二代目の福田常生さん。その二代目の体調に異変が起きた。脳梗塞で倒れたのだ。

美保子さんは「主人は心痛で…、じゃないかもしれないけど私はそう思うんですね、脳梗塞。3度目なんです。それでもうちょっと…。(主人に変わって?)そうですね。今まで主人に頑張ってもらったから」と話す。

二代目の常生さんに代わり、女将として3年前から美保子さんがお店を守っているが、売り上げは移転前の10分の1ほどに減少。新たな商業施設への移転は決まっているものの、先行きには不安が募るばかりだ。

「『顔が見たいから辞めないで下さい』と言われるけど、ちょっと限界かなと思って。情けないけどね…」と美保子さんは肩を落とす。

旦過市場の新たな商業施設のオープンを目前に控え、閉店の危機に陥っている『新井ホルモン』。そんななか、孫である太輝さんが、ひとつの決断を下した。

祖父の味を受け継ぎ新たな形態で一歩
「新井ホルモンのホルモンとタレを私が受け継いで、新井ホルモン源福として新しい形態でやっていけたらと思っています」と話す太輝さん。自らが経営する焼肉店と祖父の新井ホルモンを融合して商業施設に新たな店を作ることを決意した。

太輝さんの経験も活かし、ホルモンの販売だけでなく、テイクアウトできるメニューも販売予定だ。

「家族でなんとかやってこれたので、新店舗で、どうにか復活したい」。祖父の味を受け継ぎ、新たな形態で一歩を踏み出す若き“三代目”。11月のオープンに向けて三代目の挑戦が幕を開けようとしている。

11月に向けた『旦過いちばん館』の入居については、工事費や運転資金など乗り越える壁も多く、現在はクラウドファンディングでの支援も募っている。
(テレビ西日本)

