夏休み、レジャーの機会が増えますが、経済的な事情などの事情でそれが難しい家庭も少なくありません。
その結果生じる子どもの時の「体験の差」が、将来に影響するおそれがあります。
悩みを抱えながらもかけがえのない時間を作ろうとする親子の姿、そして改善に向けた取り組みを取材しました。
■自然を楽しむ子供たち 一緒に参加の親は「2人でこういうところに来るのってなかなか難しい…」
8月、京都府南丹市で行われたのはデイキャンプを楽しむイベント。
こどもたちは草木をかき分け森の中へ。自然と触れ合います。
参加したあるお母さんは「(キャンプは)初めてですね、子供連れだといや私自身も初めてかもしれません、なかなかこんな経験させてもらえることないのでとても貴重な体験させていただいてます」と。
別のお母さんも「(子どもと)2人でこういうところに来るのってなかなか難しいので、連れてきてよかった」と笑顔で話します。
そして、子どもたちはいきいきと自然のなかでの時間を過ごしていました。
このデイキャンプ、参加者はすべて「ひとり親家庭の親子」。
家庭の環境や経済状況によって、レジャーの機会を失うことがないようにとローソンが企画し、およそ40人が無料で招待されました。
■参加した父親と息子 このキャンプ以外に“出かける予定”がない夏休み
その中に京都市内から参加したヒロキさん(37)とハルくん(6)がいます。
このキャンプ以外、夏休みに出かける予定はありません。
【ヒロキさん】「楽しかったですね、子ども喜んでるし、なかなかこういう時間がつくれないので、こういうふうにワイワイみんなで。あんまり人見知りしいひんから友達とも話せてたし、楽しかったですね、よかった」
キャンプに参加した感想をこう話してくれたヒロキさん。
■離婚でシングルファーザーに 職場ではパワハラ それでも…
ヒロキさんはハルくんが2歳のとき、離婚してシングルファーザーになりました。
20代のころからずっと飲食業で働いてきたヒロキさん。しかし、職場でのパワハラなどから去年うつ病になり、一時、仕事ができなくなりました。
それでも「好きなことに打ち込む姿を息子に見せたい」と一念発起、
2か月前に念願の自分のお店をオープンさせました。
朝9時から夕方5時まで。経済的にも、体力的にも夏休みにどこかへ連れ行く余裕はありません。
■夏休み ほぼ毎日ハルくんは児童館に 送り届けて職場へ
2人がどんな夏休みを過ごしているのか、少しお邪魔させてもらいました。
この日、ヒロキさんはハルくんのためにお弁当を作っていました。
【ヒロキさん】「お弁当、いつも豪華じゃないんですけど。昨日お弁当を作ってあげるって言ったから、ありあわせのチャーハン。
とりあえずフルーツとトマトが入ってたら喜ぶ。トマト大好きなんで。」
ことしハルくんが小学校に上がり初めての長い夏休みに翻弄されています。
ハルくんは夏休みの間、毎日児童館で過ごしています。
ハルくんを送った後、ヒロキさんは、職場へ。
【ヒロキさん】「もうほぼほぼ児童館に行ってますかね。やっぱり仕事がある。結構遊びに行くために休む方も多いですけど、なかなか(一緒に)遊びに行けないっていうのが現状で。
もうちょっと時間を作ってあげたいなっていう気持ちはあるんですけど。なかなかね、本当にできない。なかなか両立が難しいですね。」
ヒロキさんのようにひとり親や経済的に困難を抱える家庭にとって、仕事をしながら子どもとの時間を十分に確保するのは簡単ではありません。
■物価高騰・酷暑 減っていく「体験の機会」
物価の高止まりも続くなか、特にレジャーや特別な行事が増える夏休みの期間中はそれが「体験の格差」となってほかの子どもとの間で差が広がりやすいとされています。
さらにことしは酷暑の影響も…
ベネッセが小学生を対象に行った調査では暑さの影響で夏休みを家で過ごす時間が「増えた」と答えた子どもは半数を超えました。
経済的な負担なく屋内で楽しめる施設は限られていて、ますます体験の機会が減るおそれがあります。
機会を失うことで、将来的に子どもの自己肯定感や自律性、積極性などに悪影響を及ぼす恐れが指摘されています。
■あるシングルマザーが抱く思い「出したい言葉を我慢させてしまってる」
神戸市内に住むかなえさん(仮名・49)・うーちゃん(9)親子は連日の猛暑でほとんど外出しない夏休みを過ごしています。
シングルマザーで家計を一人で支えているかなえさん。頻繁に遠出ができるほどの経済的な余裕もありません。
夏休みにやりたいことがあるか聞いてみると、うーちゃんは「夏休み・・・かあちゃんと、ちょっと遠いところ、何時間かかけて遠いところにお出かけとかしたい」と教えてくれました。
かなえさんも、なかなかうーちゃんとお出かけできないことを心苦しく思っていました。
【かなえさん】「(うーちゃんが)『〇〇ちゃん、どこどこ行くんだって』みたいなことを話してきたりとかもするんですけど、『まあ、私は別に行きたくないけどね』みたいなことを言うこともある。
出したい言葉を我慢させてしまってるやろなと思いますね」
■企業などが協力し「体験事業」も
そんなかなえさんとうーちゃんはあるサービスを利用するようになりました。
協力する企業などが提供するイベントに無料で参加できる「こども冒険バンク」という体験事業です。
この日、2人は文具メーカーが開いた人気の「お絵描き教室」に参加。
人気キャラクターのデザイナーから直接手ほどきを受けられる教室です。絵を描くのが大好きなうーちゃんには夢のようなイベントです。
■「自分の頑張って書いたものを褒められるのは嬉しかった」
一生懸命描いたイラストをデザイナーが見てくれます。うーちゃんの作品は…「マントの着替えもあって、みんなそれぞれに持ってるものが違うところ、すごくよくわかってて、すごくかわいいと思います」と高評価。
「自分の頑張って書いたものを褒められるのは嬉しかった」とうーちゃんも笑顔です。
うーちゃんは教室の何日も前からワクワクした様子で、到着したら『テンション爆あげ』と言っていたといいます。
かなえさんは、この日のうーちゃんの“体験”を「楽しいしありがたいし、世の中にはこういうお仕事があるのよっていうことが知れた、すごいいい経験だなと」と振り返りました。
子どもたちの夏休みがかけがえのないものになるように…社会全体での取り組みが必要です。
(関西テレビ「newsランナー」2026年8月19日放送)
■「24時間起きていられたらいいのにと思う」と話したヒロキさん 取材後記
子どもに様々な体験や経験を積ませてあげたいと考える親は少なくない。でもその“場所”を探すのも一苦労。情報はあふれているが、探す時間がない。
ひとりで子どもを育てる人や、経済的に苦しい家庭ではなおのこと。
自分の店を切り盛りしながら、子どもとの時間をなんとか確保しようとしているヒロキさんは取材のなかで「24時間起きていられたらいいのにと思う」と話していた。
「こども冒険バンク」には、現在6000人を超える親子が登録し、60以上の企業や団体がイベントを無償で提供している。社会貢献活動と考え参画する企業も増えているという。
家庭環境や経済的な理由による「体験格差」は、社会で解決すべき課題だ。自治体からの現金支給があれば解決する問題ではない。
そして、支援の動きがあっても、その情報が必要としている人たちに届かなければ意味がない。
「体験機会」を失っている子供たちを支える取り組みを広げるために企業や地域も一緒になって課題に向き合うことが求められる。
(取材担当:関西テレビ 加藤さゆり)
