8月11日で東日本大震災の発生から15年5カ月、震災特別企画、「ともに」です。宮城県石巻市の震災遺構・大川小学校に、何が起きたのかを伝える新たなガイド看板が設置されました。月日が流れたことで、教訓を未来につなごうと手を取り合えるようになった、市民の姿がありました。

石巻市中心部の住宅街で看板製作業を営む、楠原正敏さんです。

石巻市看板製作業 楠原正敏さん(Q. 何の看板?)
「大川小の案内看板を作っています」

震災遺構・大川小学校に被災前の校舎の説明や、QRを読み取ることで、より詳しい情報が得られる看板を、新たに設置することになったのです。

石巻市 看板製作業 楠原正敏さん
「未来の防災ですかね。お役に立てればいいなと」

楠原さんも「被災者」です。家族は無事だったものの、津波で旧北上川があふれ、床上浸水の被害に遭いました。

石巻市看板製作業 楠原正敏さん
「機材がだいたい下に置いてるので、ほとんど全部だめになりました」

市内中心部から車で30分ほどの距離にある、大川小学校。
東日本大震災の津波で児童74人教職員10人が死亡または行方不明となりました。

すぐそばに「裏山」と呼ばれる、小学生も登れる高台がありましたが、事前の避難計画が不十分だったために避難が遅れました。

記者リポーター
「先生の言うことを聞いていたのにという旗を掲げています」

学校管理下で失われた、あまりにも多くの命。

行政の対応や説明が不十分だと感じた一部の児童の遺族は、再発防止に向け、真相究明のための訴えを起こしました。

2019年に事前防災の不備を認める判決が確定し、翌年からようやく、教員向けの研修会などが、宮城県主催で開かれるようになりました。

石巻市看板製作業 楠原正敏さん
「基礎をまっすぐにして看板斜めにするか、同じく基礎は斜めにするか…」

看板製作を進める楠原さんは、この日、設置場所の最終確認のため、市の担当者や、児童の遺族などと、大川小を訪れていました。

石巻市看板製作業 楠原正敏さん
「実はこの仕事をいただくまで、この場所には来たことなくて、というのはやっぱり…何というか軽々しい気持ちで来てはいけないと言いますか、そういうのが自分の中にありまして」

楠原さんに看板製作を依頼したのは、市内で不動産業を営む松本充代さんです。元々、大川小とつながりがあったわけではありません。

石巻市の経営者などでつくるロータリークラブに所属していて、震災発生から10年が経過した2021年に、クラブ内で大川小の伝承を支援するべきだとの声が上がったといいます。

石巻市不動産業 松本充代会長
「石巻市がどうとか、どこかがやってくれるではなくて、自分たちで民間で考える」

松本さんが連絡を取ったのは佐藤敏郎さんです。佐藤さんは大川小に通っていた次女・みずほさんを亡くしました。元教員でもあります。

大川伝承の会 佐藤敏郎さん
「2004年から『99%津波来るので準備しなさい』と言われていて、うちの学校もいろいろやっていた。大川小も何もしていなかったわけではない。でも私のやっていた防災の中に娘は入ってなかった。自分もいれていない。登場人物に血を通わせる、やっていなかった」

「大川伝承の会」のメンバーとして事前防災の重要性を訴え続けてきました。

大川伝承の会 佐藤敏郎さん(Q. 支援の話を聞いたとき)
「泣いたのは覚えています」

石巻市不動産業 松本充代会長
「私も、もらい泣きした」
Q.どうして涙
「分かりません。号泣しました。まだあの時期(2021年)は色々ありましたから。市内の団体だったからこそと思います。他所のボランティア団体の寄付というのはきっとあったと思う。ただ『一緒にやっていこう』ということが、たぶんその時が初めてだった」

大川伝承の会 佐藤敏郎さん
「それは時間もかかるし、いろんなプロセスが必要だったと思う。我々だって私だって、最初はここに来られなかった。イメージなんですけど、壁がとけた感じ。どこかで壁にぶつかりながらもがいていたところがあって、お話したときに何か光が差したような、とけた感じはしています」

そこから松本さんは、佐藤さんが関わる伝承イベントに協力するなど交流を深めてきました。その中で課題として浮かび上がったのが、語り部を聞かなくとも、訪れた人たちがより何が起きたかを分かりやすくするための案内板の不足です。

石巻市不動産業 松本充代会長
「敏郎さんたちは必ず年老いて、こんなこと言いたくないですけど動けなくなる、話せなくなる。その時にどうするか」

1年間でおよそ7万人以上が訪れる大川小学校ですが、語り部を聞けるのはそのうちの1万人ほどと推計されています。

訪れた人
「子供たちは震災後に生まれて震災を全然知らないので、こういうことがあったというのを生で見せておきたい。もっといろいろ情報があってもいいのかなとは思います」

新たなガイド看板11枚は、盆の入りを前に、10日、設置作業が行われました。海外から訪れる人にも伝わるよう、英語表示用のQRもあります。

11日は、雨が降る中、斎藤正美市長や、石巻市にある3つのロータリークラブの関係者が集まりました。早速QRを読み込む人も…。

仙台市から訪れた人
「震災前がどうだったか、今の現状と対比になるようなことが書いてある」
「すごく想像しやすくなる」

大川伝承の会 佐藤敏郎さん
「いろんな想像・考えを深めてもらえるようなきっかけになるのでは。きっとこれは入口、まだ15年ですから、これからどういう場所になっていくか皆さんと力を合わせてやっていけたら。市長もありがとうございました」


市とも対話を重ね、市民が手を取り合って完成した看板が、教訓を未来につなぐ、道しるべとなります。

仙台放送
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