“10cm超”傾く欠陥マンション 

2020年1月、テレビ西日本が報じた福岡市東区の傾きマンション「ベルヴィ香椎六番館」。部屋の壁と天井には「隙間」があり、夜、明かりを消すと隣から光が漏れてくる。

(Q.不具合はいつごろから?)​
「傾きマンション」に住む佐々木太さん:

築1~2年で、すでに出ていた

入居後まもなく、壁のヒビ割れが相次いだ。

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しかし、販売会社は―

販売会社:(回答書)
主要構造部分への影響はないことを確約します

駅チカの好立地。販売会社の1つ、JR九州のブランドイメージもあり、25年前の入居倍率は30倍にのぼった。

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
販売会社を信頼していたので、何かあっても大丈夫だろうと

ただ、その後も生じ続けた不具合。
そして4年前、管理組合の理事長に就任した男性は、別の事実を突き付ける。
測量会社に勤務する住民の調査により、同じ階で10cmもの高低差、つまり傾きが発覚したのだ。

だが、販売会社の回答はふざけたもので…

販売会社:
10cmの勾配(傾き)は排水のため元々設けている

そして、実はこの頃…

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
(販売会社から)300万円の提示があった。これは、佐々木さんが理事長としていろいろ動かれているので「見舞金」として準備しますと提示されたが、即、拒否して、そんなものは話にならないと

“証拠”を突き付け…ついに施工不良認め謝罪

その後も、傾きの原因を追及し続けたのだが…

販売会社:
地震などの外的要因が影響を及ぼした可能性は否定できない

ただ、不具合が起きているのは、7棟あるマンションで男性が住む1棟だけだった。

1級建築士・岩山健一さん:
こちらで今、レベル測定をしています

2020年 男性は、数々の欠陥住宅を診てきた民間の検査会社を頼った。
その結果…

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
ここで約4メートル。私の身長の倍以上、杭が足りてない、。向こう側は7メートル。
(7メートル!?)
もう、とんでもない話ですよ

本来、地下の固い地盤に打ち込まれなければならない杭の長さが大幅に不足していた。

仲村健太郎記者:
販売会社の代表である若築建設の社長らが、現場で起きた不具合について説明を受けています

もはや、言い逃れはできなかった。
そして…

謝罪会見:
この度は誠に申し訳ございませんでした

仲村健太郎記者:
JRブランドとして、信用して買っている方も多いと思いますが

JR九州・青柳俊彦社長:
われわれも建設にあたっては、建設会社の選定などはきちんとやってきた。建設会社がこういうことを犯していることは、まず考えていなかった

施工不良を認めた販売会社(福岡商事・JR九州・若築建設)は、今後の対応として建て替え・補修のほか、購入価格での買い取りを提案した。

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
建て替え、これはもう一番手っ取り早いというか、若築(建設)もできたらこのようにしたいと。これを推してます

こうして住民側は、アンケートでも最も希望が多かった「建て替え」を軸に検討を進めることに…

未提出は“反対票”に…!

(会議やりとり)
出席者:
ようやく少しずつ前に進みますんで

出席者:
どうもありがとうございます

だがこの日、男性の表情は曇っていた。

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
建て替えが全体で通ればいいんですけどもね。
(問題はそこですよね)
騒音の問題とか、いろいろ出てくるので

実は、建て替えには、傾いた六番館の住民の賛成だけでなく、他の6棟を含めたマンション全体で4分の3の承認も必要だったのだ。

10月29日、建て替えの賛否を問う住民総会まで、あと10日―

(会議やりとり)
出席者:
もうギリギリの所なので

出席者:
皆さんの方でも、ぜひ声を掛けてください

マンション全体の4分の3の承認が得られるか「瀬戸際」の状況だった。
その大きな理由は、総会の出欠票を集めた際、意外にも多かった未提出だ。

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
約10日前に(住民総会の)出欠表の締め切りだったが、未提出の方がいた。提出している人は意思が分かっているので賛成・反対と出るが、提出しないと意思が分からないと同時に反対票になる

法律の規定では、未提出つまり無投票は、反対票として数えられる。

六番館の住民は、他の棟の住民に投票を呼び掛け、地道に理解を求めることになった。
何とか建て替えを実現するために…

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
ここで六番館の皆さんが、一致団結して頑張ろうとなってくれたので、それはうれしい。他の住民の方にも伝わってほしいと思う

そして迎えた運命の日…

そして、11月8日―

仲村健太郎記者:
他の棟の住民が続々と集まってきています

運命の住民総会は「非公開」で行われた。
果たして、結果は…

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
(感触は?)
8割は行った(と思う)

貼り出された「速報」。
そこには、「承認」の2文字があった。
4分の3という条件も何とかクリアし、傾いた六番館の建て替えが決定したのだ。

「傾きマンション」の住民:
25年間苦しんでますからね。本当に良かったです。これで先に進めます

「傾きマンション」の住民:
前日まで、やっぱりハラハラだった。これで安心して…ほっと一息ですよ

「傾きマンション」に住む佐々木太さん:
本当に…本当に、いろいろあった。でもベルヴィの皆さん良い方ばかりで、ありがたいと思っている

まさに住民の執念が販売会社を動かし、最終的に建て替えという結論に至った。

専門家「建て替えに至ったのは非常にまれ」

建築トラブルにくわしい専門家は…

建築トラブルにくわしい木村壮弁護士:
極めて珍しいと思う。20年経過してしまうと法的責任がないということなので、基本的に対応してくれないというケースがほとんどなので、20年経過後にこれだけの結果に至ったのは、非常にまれ

マンション居住者の割合が、東京に次いで全国2位の福岡。
専門家によると、今後 同じように不具合が出た場合、その解決には大きな壁が立ちはだかるという。

建築トラブルにくわしい木村壮弁護士:
住民と建築会社では、知識の差が非常に大きいし、施工の詳細や施工中の写真は、住民側から建築会社にお願いをしても開示してくれないケースもあるので、なかなか簡単に手に入れることはできない。そこの「情報格差」が極めて大きな問題だと思う

(テレビ西日本)