これまで2月開幕だったJリーグが、ついに「8月開幕」へと歴史的なシーズン移行を迎えている。世界基準への挑戦として注目される中、キャンプ地・宮崎では初めてとなる「夏キャンプ」が実施された。過酷な猛暑の中での練習に挑む選手たちと、彼らを支える宮崎の人々の奮闘に迫る。
世界基準へ!Jリーグがシーズン移行
これまでJリーグは2月3週頃に開幕し12月1週頃に閉幕するスケジュールだったが、今シーズンからは8月に開幕し、ウィンターブレイクを挟んで翌年5月最終頃に閉幕する。
このシーズン移行には、主に3つの目的がある。
1.ACL(アジアサッカー連盟のチャンピオンズリーグ)シーズンとの一致
ACLでの勝利、ACL優勝クラブが出場できるクラブW杯で世界と戦うため
2.欧州の移籍マーケットとの一致
Jリーグシーズン中の有力選手の離脱を防ぎ、欧州からの選手・監督の獲得を促進するため
3.猛暑下での試合数減少

また、選手のパフォーマンス向上も期待されている。
J1リーグと欧州5大リーグの選手たちの運動量を比較したデータによると、Jリーグの選手たちは2月の開幕後に運動量を上げるものの、暑い時期(中盤)にかけて運動量は著しく低下し、終盤に向けて回復していく「谷型」の推移をたどる。対して欧州の選手は8月に開幕し、徐々にコンディションを上げて終盤に向けて下がる「山型」の推移となる。
シーズン移行により、シーズン中盤でも高いパフォーマンスを発揮できることが期待されている。
日本プロサッカーリーグの野々村芳和チェアマンは「世界のサッカーマーケットの中でも存在感を出さなければいけない」と話し、世界の中で戦っていくマインドへ変化していくことにも期待を寄せている。
暑さを味方に!宮崎が選ばれる理由
このシーズン移行に伴い、本格的な「夏キャンプ」が実施された。キャンプの聖地として知られる宮崎県には、横浜F・マリノスやサンフレッチェ広島など、全国最多となる13クラブが訪れた。なぜ宮崎県でキャンプを行うのだろうか?

宮崎県がキャンプ地として歩み始めたのは1994年。1993年、Jリーグの開幕直後だ。そこから約30年にわたって、様々なクラブを受け入れてきた。
10年以上Jリーグキャンプの誘致に携わっている宮崎市観光協会の甲斐望貴恵さんは、キャンプシーズンが夏へ移行することに不安を感じていたという。冬にキャンプを行う各チームへのヒアリングを重ね、宮崎での夏のキャンプの誘致に繋げていった。

宮崎市観光協会 甲斐望貴恵さん:
暑い時期に暑い場所でわざわざキャンプしないだろうと思っていたので、宮崎からJリーグキャンプがなくなっちゃうのかなと、危機感というか、心配した。しかしチームから「暑い時期に開幕するんだったら、暑いところで体を慣らさないと」という意見がでてきて、これはちょっといけるかもしれないと思って「暑いですけど、体を順化させるためにあえて宮崎でキャンプしてはいかがですか」と方向転換して誘致につなげた。

この夏、宮崎でのキャンプ開催をいち早く決めたのは、Jリーグ創設以来J1の舞台で戦い続ける横浜F・マリノス。今回で25回目となる宮崎キャンプは、7月12日~25日の間、宮崎県屋外型トレーニングセンターで実施した。
冬に続き宮崎を選んだ理由について、横浜F・マリノスのマネージャーや選手に話を聞くと…

決定に携わった横浜F・マリノス 山崎慎マネージャー:
宮崎市民のみなさんが温かかったり、宮崎市観光協会の人が熱心にやってくれたり、僕はシーガイアの環境は日本一だと思っているので、暑いのは分かっていたけど環境重視でここを選ばせてもらった。

横浜F・マリノス 朴一圭選手:
環境がめちゃくちゃいい。芝生の状態もクラブハウスも良いし、ホテルから歩いてすぐ来れる距離だし、サッカーする上でこの上ない環境でやれている。なんといってもご飯がおいしい。九州と言えばご飯がおいしいが、その中でも宮崎は地鶏や辛麺など、選手一同楽しみにしている。そういうのがまたエネルギーになって、この暑い中でも練習と練習試合を頑張る源になっている。

横浜F・マリノス 諏訪間幸成選手:
この暑い中でしっかりハードワークすれば、帰った時に少しでも楽ができるのではないかと思う。今はきつい時期だけど、開幕の時に良い状態で入れると思いながら頑張りたい。

今回で26回目の宮崎キャンプとなったJ1サンフレッチェ広島は、7月26日~8月2日の間、フェニックス・シーガイア・リゾート・イベントスクエアで実施した。

サンフレッチェ広島 野口蓮斗選手:
温かい雰囲気で迎えてくれたので、すごく練習しやすかった。たくさんの太陽宮崎SCの選手(地元のサッカー少年たち)もいたので、夢を与えられるようなプレーをしていきたい。

サンフレッチェ広島 大迫敬介選手:
(「おかえりなさい」と言われて)素直に嬉しい。サッカーをする上で、こんなに素晴らしい環境はない。歓迎してもらえることは当たり前ではないからこそ嬉しい。
課題を乗り越え「サッカーキャンプの聖地」へ
この夏、8つのクラブが訪れた宮崎市は、受け入れ環境のさらなる向上を目指し、準備を進めてきた。

暑熱対策として、練習施設にはエアコンで冷えている部屋もあるが、選手が水を飲みに戻ってきたときや着替えるときなどに涼めるよう、冷たい風が出てくるスポットクーラーを設置。扇風機やアイスバケツなども準備した。

一方で、夏ならではの課題も見えてきた。
宮崎市観光協会 甲斐望貴恵さん:
夏芝は冬とは違う種類の芝生なので、その夏芝を暑い7月にいい状態のピークに持っていくというのが難しかった。来年は夏のキャンプに合わせていいピークに持っていくための対策を、キーパーさんともよく話している。

甲斐さんは、宮崎の人柄を「お節介焼き」だと話す。
宮崎市観光協会 甲斐望貴恵さん:
宮崎の人柄というか県民性なのか分からないけど、宮崎の人はお節介焼きなんですよ。「暑いでしょう、はいこれ使って、はいこれ飲んで」みたいな。そういうホテルの方たちも、施設の人たちもそうですけど、なんかそういう人柄も一つあるのかなって。熱意というか思いみたいなのは負けないかなと思う。スポーツキャンプの聖地と言われるようになれたらいいなとすごく思う。
宮崎県は今後、夏のキャンプを冬のウィンターブレーク期間の利用にも繋げ、キャンプの「通年化」を目指している。
日本のサッカーがさらなる高みを目指す中、宮崎もまた、クラブと共に戦うパートナーとして進化を続けている。8月7日にいよいよ幕を開ける新シーズン、そして新たな歴史に挑むJリーグの熱い戦いから目が離せない。
(テレビ宮崎)
