空手の「形」でアジア1位に輝いた選手について。普段は会社員として働き、夜は空手の練習。11月のワールドカップや2028年の国スポを目標に、「二刀流」で奮闘する26歳の選手に密着した。

会社員×空手「形」の二刀流

スーツを着て取引先の会社へ。

北澤以進さん:
「マナテックの北澤と申します」

2026年春、長野市内の機械設備商社に転職した北澤以進さん(26)。あいさつ回りで少し緊張気味だが、朗らかな笑顔もみせる。

取引先を訪問する北澤以進さん(左)
取引先を訪問する北澤以進さん(左)
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そんな北澤さんのもう一つの顔が―。

気迫のこもった表情とキレのある動き。北澤さんは、空手の「形」の選手だ。

しかも世界クラスの実力者。「形」は敵との攻防を想定した動作を演じる競技で、技や動きの「キレ」、ブレずにピタリと止める「キメ」などが重要だ。

空手「形」・北澤以進さん:
「意識してるっていうのは、ちょっと脱力感と、あと呼吸ですね。それを意識すると、自然と楽に打てるっていうのがありますね。演劇のようになっちゃダメというか、相手を想定して形を打っているので、自然と入り込んでくるとああいう表情になっちゃうというか」

高難易度「雲手」でアジア1位に

6月、インドネシアのバリ島で行われた空手のアジア大会。北澤選手は大学時代の仲間と3人のチームで男子団体の「形」に出場し、高難易度の演舞、「雲手(うんす)」を披露。見事、アジア1位の座を勝ち取った。

インタビューに応じる北澤さん
インタビューに応じる北澤さん

北澤以進さん:
「100点満点とはいかないですけど、70、80点ぐらいの出来栄えだったのかなと。もっともっと細かいところを対策しないといけないところが見つかった試合だった」

ヒーローに憧れ 形に専念し好成績

北澤選手が空手を始めたのは6歳のころ。3歳上の兄の影響を受けて地元の駒ヶ根道場に入門した。

北澤以進さん:
「小さい頃は、戦隊ヒーローになれると兄も思ってて始めたんで、僕も戦隊ヒーローになれるんじゃないかなって。道着とか帯っていうのは新鮮で、ちょっと着てみたいっていうのがあった」

「組み手」と「形」の両方に取り組んだが、高校生の時に出場したジュニア五輪全国選抜の「形」の部で準優勝。その後も「形」で好成績を収めた。

子どもの頃の北澤さん(提供:北澤選手)
子どもの頃の北澤さん(提供:北澤選手)

大学は空手の強豪・帝京大学に進学。「形」に専念すると、全日本選手権で準優勝するなど結果を残した。

北澤以進さん:
「高校でも形の方の成績が出たので、自然と流れ的に形になっていった感じ。正確性はもちろん、僕にしか出せないキメの強さとか、そこが僕の強みなのかなとは思います」

競技専念のため転職 仕事も”鍛錬”

大学卒業後は2年間、東京の会社で働いたが、競技に集中できる環境を求め、2026年春、今の会社に転職した。

北澤以進さん:
「今は空手に専念させていただいてる環境なので、本当に感謝しないとなって、毎日出社して思う」

会社には北澤選手以外にも、複数のスポーツ選手などが働いていて、練習時間の確保などに積極的に協力している。

北澤以進さん:
「商品覚えるっていうのが今、一番苦労している。大変なところかなって思います」

今は、営業に必要な知識を身に付ける毎日。

週に5日、フルタイムで働いているが、大きな大会の3カ月前からは週2日の勤務となり、競技に専念する。

上司:
「空手ではね、声も出してるんでしょうけど、仕事では落ち着いて仕事やってる」

北澤以進さん:
「スポーツでもしっかり成績残して、会社をしっかりアピールして。仕事するときはもうしっかり仕事。その仕事に集中してやるっていうのは、区切りをしっかりつけてやるようにしてます」

上司と北澤さん
上司と北澤さん

午後3時過ぎ、気温が30度を超える中、打ち合わせに向かった。

北澤以進さん:
「きついですね。でも、営業は足が命なんで、歩き回らないとなと思うんですけど、そういうとこからの鍛錬だと思ってるんで、日常生活から意識するようにしてます」

夜は道場へ 子どもたちの”手本”に

午後5時過ぎに仕事を終え、その2時間後。北澤選手は市内の体育館へ。

北澤以進さん:
「しっくりくるというか、これからスーツの方もしっくりくるようにしないといけないですけど」

市内の道場が主催する練習に参加した。

子どもたちに交じって、ウォーミングアップ。子どもたちにとっては貴重な「お手本」だ。

小学6年生:
「キレがあったりとかして、ちゃんと止まれたりとかしてて、自分には真似できないところもできていてすごいと思います」

小学4年生:
「キレがすごくあって、キメもすごくある。ああいうふうになりたい」

仕事を終え、誠拳会 空手道場(長野市)が主催する練習に参加
仕事を終え、誠拳会 空手道場(長野市)が主催する練習に参加

北澤以進さん:
「もちろん体は鍛えられるんですけど、武道なので、心もしっかり鍛えられるっていうのが、空手、武道の良さだとは思う。マイナー競技なので、空手の良さをもっと、いろんな人に知ってもらいたい」

目標はW杯と国スポでの優勝

今は11月に中国で開かれるワールドカップを見据え、練習の毎日。トレーニングでは、自らの動きを撮影し、その場で動きの確認を行う。

北澤以進さん:
「形は自分1人での勝負なので、どこが悪いのかを客観視して見ないといけない。ずっと同じことやってても、変な癖がついちゃうだけなんで、悪いところはすぐ見て、次は1個でもいいから、直そうっていうのを常に意識しています」

アジア大会でも披露した「雲手(うんす)」。

「雲手」は速い切り返しや、低い姿勢での技、ジャンプしてからの着地が特徴。100種類以上ある演武の中でも最高クラスの難易度だ。

「雲手(うんす)」
「雲手(うんす)」

11月のワールドカップ、そして2028年に控える長野での「国スポ」で頂点に立つことを目指し、北澤選手の二刀流生活が続く。

北澤以進さん:
「国スポはまだ出場決定してないので、そこを勝ち取って2028年の国スポで優勝して、長野県に貢献できるようにっていうのが、今の僕の目標ですね」

長野放送
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