手話が語る福祉のコーナーです。西日本豪雨から2026年7月6日で8年。体や心に障がいがある子供たちを守るために、倉敷市の特別支援学校であの日を教訓に新たに始めた取り組みを取材しました。
◆決壊した堤防の近くにある倉敷まきび支援学校「子供たちの作品や使ったものは全部駄目に…」
(佐藤理子キャスター)
「どのあたりまで浸水した?」
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「ラインの5センチ上のところまで浸水した。堤防がまさか決壊すると思っていなかったのでびっくりした」
案内してくれたのは倉敷市真備町にある倉敷まきび支援学校の金島一顯校長。この支援学校は決壊した堤防の近くにあり校舎の2階部分、高さ4メートル80センチまで水が押し寄せました。土曜日だったため児童・生徒はおらず無事でしたが、校舎は大きな被害を受けました。
Q:思い出もたくさん詰まった校舎だと
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「子供たちの作品や使ったものは全部駄目になってしまった。大体教室に残っていればいいが教室に残っていなかったので、どこにいったのだろうかと探すような感じ」
◆西日本豪雨では52人が死亡(7月3日現在)その3分の1が「要配慮者・要支援者」だった
2018年7月6日に発生した西日本豪雨。最も被害が大きかった倉敷市では8カ所の堤防が決壊し、52人が死亡。その3分の1にあたる19人が高齢や障がいで避難の時に支援が必要な要配慮者・要支援者でした。
◆あの日を教訓として…支援学校の生徒たちは段ボールベッド作りなどの「避難所体験」
避難が難しい人ほど危険にさらされる。あの日の教訓をもとに学校では防災教育を大きく見直しました。小学1年生から授業で水害について学び、年に3回避難訓練を実施。2025年は、いざという時を想定して、避難所体験が行われました。
〇段ボールベッドをつくる生徒たち
(生徒は…)
「困った時や、(段ボールベッドなどを)作るのが大変だと思った時には人に力を借りたい」
「まずは第一に(自分の)命を大事にして、助けられる人は助け合いたい」
◆多くの人が集まる避難所で生活することが難しい子供も…校長が考える「これからの避難」
支援学校には体や心に障がいがある児童や生徒約390人が通っていて、障がいの特性によっては、多くの人が集まる避難所で生活することが難しい子供もいます。
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「避難所に行ったが、避難所は混乱していてその中で子供たちが落ち着いていられるかというと、そういう状況ではなかったので避難所に行ったが、出て行って車中泊をしたと後から聞いた。地域の人と一緒に避難をしていく経験、教員以外の人と一緒に避難する、そこに集う経験をしておけばよかったと思うし、今でもやろうとしている」
◆「顔の見える関係」の構築へ…地域の防災イベントで行政・福祉関係者と意見交換
金島校長は地域の人たちと「顔の見える関係」を築こうと、日頃から地域との繋がりを大切にしています。
この日参加したのは地域の防災イベントです。行政や福祉関係者などと要配慮者にどんな支援ができるか意見を交わしました。
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「障がいのあるなし、年配や若者、いろんなつながりがあって共助が成り立つと思った。いろんな立場の人がいろんなコンテンツをつくって、働きかけているのが分かったので(子供たちに)こういう人の思いに触れさせてあげたいと思う」
◆いつ大規模自然災害が起きても居場所を把握…特別支援学校向けの「防災学習アプリ」の開発
そして、2025年から学校が新たな備えとして力を入れているのが、特別支援学校向けの防災学習アプリの開発です。
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「登下校の間や、下校の後の子供たちはいろんなところにいて、24時間、いつ大規模自然災害が起きても対応できるように。私たちがどこにいるのかを把握できるようにしたいというのがあり、そういったアプリができないかと思い開発している」
◆開発したアプリの主な特徴:誰でも読めるようにひらがなと音声で操作案内などで避難行動を支援
開発しているのは岡山市に本社があるシステム開発会社、ビジネスセンター岡山。金島校長はこの会社が以前手掛けた精神疾患者が避難所で思いを伝える助けとなるアプリに感銘し、新しいアプリの開発を依頼しました。
(ビジネスセンター岡山 岡本匡史社長)
「いろんな情報を(一度に全て)認識しづらいので簡単に見てわかる、そういう所にこだわりを持って作った」
アプリでは地震や津波などの災害を色別で表示し、誰でも読めるようにひらがなと音声で操作を案内し、避難行動を支援します。
(ビジネスセンター岡山 岡本匡史社長)
「ナビの機能では浸水エリアを避けたルートを案内したり、場合によっては浸水エリアに間違って近づいている場合は音声とバイブレーションで子供に直接知らせることができる。避難所に着くまでの支援がまず大事ということで、アプリを広げて安全に避難できる状況を作っていきたい」
◆現在は保護者と教員のスマホにアプリを導入し子供たちの引き渡し訓練を実施
(佐藤理子キャスター)
「文字も大きいし、どこに自分が行けばいいのかが一目でわかるのがいい」
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「わかりやすく安心できる画面だから、混乱したり不安になっている時でもこれを見れば大丈夫という画面になっている。教員はどこに避難しているかが表示されるので互いにわかりやすくなっている」
現在は保護者と教員のスマートフォンにアプリを導入し、子供たちの引き渡し訓練を実施しています。今後は、子供たちがアプリを利用し避難する訓練を予定しています。
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「色んな人に使ってもらいみんなが何をしているかがわかるとお互いが支えやすいと思うので共有していきたいし、訓練の中で使っている様子を地域の人にも見てもらいたいと思う」
(佐藤理子キャスター)
「子供たちを守るために保護者・教員・地域の人と見守っていく、その一助になりそう」
◆やらなければならないのは西日本豪雨の記憶・記録を「自分事」に引き寄せていくこと
災害が起きた時に自分だけでなく周りにも目を向けて行動できるように、金島校長は防災学習の積み重ねが大事だとしています。
(倉敷まきび支援学校 金島一顯校長)
「もうすぐ8年だが、だんだん記憶が薄れてくるので、地域の人に「あの時こうだったよ」と伝えてもらったり、実際に学校にもある写真を見ながら自分事に引き寄せていくことが毎年やっていかなければならないこと」
子供たちの安心・安全を守るために便利なツールを活用しながらいざという時に声をかけあえる地域のつながりが大切だと感じました。
