生物多様性の損失を止め回復を目指す、『ネイチャーポジティブ』の国際会議が熊本市で7月14日から開かれました。。日本では初めての開催で、最終日には『熊本宣言』として取りまとめました。

グローバル・ネイチャーポジティブサミット

開発や気候変動などの影響で、地球上の約5万種の生き物が絶滅の危機に瀕していて、生物多様性の損失が加速しています。このまま放っておくと食料や水資源の枯渇、災害リスクの増大など、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼすとされています。

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こうしたネガティブな流れを2030年までに止め、「回復」に転じさせるという国連の目標が『ネイチャーポジティブ』です。この実現に向け議論する国際会議が日本では初めて、熊本市で7月14日と15日の2日間で開かれました。

国際自然保護連合のグレーテル・アギラー事務局長は「人類は自然に大変な負荷を与えている」と話し、大西一史熊本市長は「世界一の地下水都市として、地下水保全や生物多様性の保全・再生に向けた取り組みを共有し『ネイチャーポジティブ』の実現につなげていきたい」と話しました。

14日朝の開会式で大西熊本市長は、半導体関連企業の進出に伴い、地下水への影響が懸念されていることを踏まえ、「自然環境と経済活動の調和を図ることが求められている」とあいさつ。また、高円宮妃久子さまは英語でスピーチし、「自然の恵みに支えられ、生きてきた私たちが、その在り方を正さなければならない」と訴えられました。

会議には自治体や企業、金融機関の関係者など国内外から約2700人が参加。メインホールでのパネルディスカッションには、県内で地下水の保全に取り組む肥後銀行、サントリー、MS&ADインシュアランスグループの関係者が登壇し、生物多様性の回復がなぜ社会や経済に重要か、それぞれの立場で意見を述べました。

子どもたちの発表に高円宮妃久子さまも

この国際会議に合わせ会場の熊本城ホールでは、子どもたちに生物多様性の大切さを学んでもらおうと、環境省や企業がワークショップを開きました。14日午後のイベントには、熊本市立慶徳小学校の児童40人が参加。「生物多様性を守るために何ができるか」、子どもたちがグループに分かれて話し合い、それぞれ発表しました。

児童たちは「もったいないを大切にする」や「外来生物についてよく知る」、「ビオトープを作る地域の植物が育つスペースを作る」と意見を出し合うと、会場には高円宮妃久子さまも見学に訪れ、子どもたちが話し合う様子などをご覧になりました。

ワークショップは15日も行われ、熊本市内の小学5年生と6年生およそ500人が招待されます。また、水産食品大手「ニッスイ」の担当者が、海を守りながら魚を育てる「ブリの完全養殖」について紹介。子どもたちは「海の環境を良くするために何ができるか」、考えるきっかけになったようでした。

先端技術『ネイチャーテック』の展示も

また、グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットでは、生物多様性の損失を止め、回復を目指すネイチャーポジティブの先端技術などを集めた『ネイチャーテック』の展示イベントも開かれました。

会場には県内外の企業や大学、自治体など100を超えるブースが設けられ、最新の情報や技術を見て聞いて体験できるイベントが開かれました。

半導体製品の開発や生産を行っているソニーセミコンダクタマニュファクチャリングのブースでは、半導体に欠かせない水の大切さについて、ソニーのセンサー技術を生かしたデモ展示などが行われ、子どもたちにも分かりやすく伝えています。見学した熊本市立西里小学校6年生は「地下水がいろいろリサイクルされていて、すごいと思った」や「(これからは)もうちょっと考えて水を使いたいと思った」と話しました。

また15日はゲーム型ワークショップも開催され、参加した子どもたちはカードゲームを通して半導体と水資源との関係を理解していました。

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング・環境サステナビリティ推進室の山下満室長は「半導体は水を多く使う事業でもあるし、水がどのように使われているかや水を重要視し大事に扱っていることを説明することによって、住民の方々に理解していただき、責任を果たすことになると思っている」と述べました。

環境と経済の両立へ 熊本市独自の宣言

また、ステージでは熊本の地下水保全の新たな取り組みも紹介されました。発表を行ったのは熊本ウォーターポジティブデザインセンターで、熊本県立大学と熊本大学、肥後銀行、サントリー、MS&ADインシュアランスグループが、2026年4月に設立しました。

雨水を地中に浸透させる『雨庭』の地下水涵養の効果に着目。開発が進む熊本都市圏で『雨庭』の導入を支援するほか、涵養効果を『見える化』し、水循環を保全するということです。

熊本ウォーターポジティブデザインセンターの島谷幸宏代表理事(熊本県立大学・特別教授)は「市民、企業のみんなで力を合わせ、この豊かな熊本の水を守っていきたい。それを世界に発信したいという気持ち」と話します。

一方、メインホールでは15日もネイチャーポジティブの実現に向けて具体的な議論が重ねられました。こうしたなか、熊本市の大西市長は15日のハイレベル会合で市独自の『WaterCapitalCityKumamoto宣言』を発表。

「地下水をはじめとする自然資本を都市経営の基盤として、ネイチャーポジティブと経済発展が両立する都市の実現を目指す」としました。大西熊本市長は「『自然環境がダメになれば経済活動もダメになるんだ』と、ネイチャーポジティブという活動に、いかに転換することが重要なのかということを、世界の人たちに発信できる意義は、非常に大きいと思っている」と述べました。

体験型ツアーでは湿地再生の取り組み

そして、16日には体験型のツアーがありました。球磨郡相良村では、湿地を再生させ、生物多様性を保全する取り組みを視察しました。人吉球磨で行われた体験型のツアーには、国際機関や企業などの関係者約30人が参加。相良村にある瀬戸堤自然生態園を訪れました。

自然生態園では、熊本県立大学や熊本大学、MS&ADインシュアランスグループなどが、2022年から湿地の再生に着手。地域の住民と一緒に草を刈り、湿地を耕す作業を定期的に行っていて、「生物多様性の保全」が進められています。

参加者は、湿地に入って生き物などを観察したほか、大雨の際に川からあふれた水をためることで、洪水被害の軽減にもつながることを学びました。また、湿地の湧き水が枯渇するのを防ごうと整備された『雨庭』なども見て回りました。

ネイチャーポジティブイニシアティブ(NPI)のギャビン・エドワーズ事務局長は「本当に興味深いのは、自然の修復プログラムが進行中だということ。放置されていた水田が湿地として回復し始めている。それは自然に利益をもたらすだけでなく、洪水のリスクを軽減することで、地域の人々にも利益をもたらす。ここで行われている取り組みから得られた多くの学びは、世界の様々な地域にも広げることができると思う」と話しました。

(テレビ熊本)

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