政治家に、臆することなく切り込む15歳がいます。カメラとペンを手に、会いたい人がいればどこへでも赴き、聞きたいことをズバリと問う。
自らの記者活動を綴った本は発売するとすぐに増刷。トークショーを開催すれば各地から人が集まります。
川中だいじさん(15)。ことし3月に中学を卒業し、現在は高校に通いながら政治取材を続けるジャーナリストです。
関西テレビ「newsランナー」は、その活動に密着しました。
■「スケールはでかい方がいい」創刊のきっかけはG7広島サミット
川中さんが「日本中学生新聞」を創刊したのは、中学入学を目前にした2023年3月のことでした。
取材から編集までを1人でこなし、インターネットで公開したこの新聞は、「中学生が作った民主的読みものである」という創刊の辞で始まります。原発の再稼働や参院選についての記事が並び、大手新聞さながらのコラムも掲載されています。
創刊のきっかけについて、川中さんはこう話します。
【川中だいじさん】「核兵器禁止条約について、『なぜ署名・批准しないんですか』ということを、記者として岸田元総理に質問したいということで、(取材には記者としての)実績が必要だということが分かって。
実績を作ろうということで始まったのが『日本中学生新聞』。とにかくスケールはでかい方がいいと思ってるので、『日本』をつけた」
G7広島サミットへの取材申請は外務省に断られ、叶いませんでしたが、カメラとペンを片手に精力的に取材を続けてきました。
■「選挙は変で面白い!」小学3年生で芽生えた政治への関心
2010年に大阪市で生まれた川中さんが選挙に興味を持ったのは、小学3年生のときでした。
車の中から手を振る大人や、チラシを受け取ると「かわいいね」と褒められる、普段とは違った街の様子に「選挙は変で面白い!」そう感じたのが始まりでした。
小学4年生のときには、2度目の”大阪都構想”の是非を問う住民投票が行われ、一層、政治にのめり込んでいきます。
賛成派・反対派の街頭演説を聞き比べては、学校で友達と議論しました。しかし思わぬ壁にぶつかります。
「先生から呼び出されて、『いっぱいいろんな意見があるんだから、学校の中で政治の話をするな』って言われた」と川中さんは振り返ります。
【川中だいじさん】「なんで怒るんやろうなって思いました。いろんな意見があるからこそ、政治の話をするべきだと僕は思うんですよ」
その後も政治の話をしては、度々先生に叱られましたが、川中さんは引き下がりませんでした。「日本が批准する『子どもの権利条約』では、子どもにも意見を表明する権利が認められている」と主張し続けました。
■「子どもをバカにしないでよ」取材が生み出す”本音”
川中さんは活動の目的をこう語ります。
【川中だいじさん】「子どもだって自分の意見を言うことができるし、権利の主体なんだということをどんどん広めていけたらと思います。『子どもをバカにしないでよ』ってところが大きいかもしれないですね」
一方で、K-POPが好きな15歳の顔も。学業の傍ら記者活動に取り組む息子を、両親も温かく見守っています。
【川中さんの母】「『怒られるからやめておこう』とか、そういうのは(息子には)多分あんまりないんじゃないかと思う。それだったらもう認める形で、助けることができることは手助けして」
■斎藤知事にも臆することなく質問をぶつける川中さん
中学入学後、川中さんは精力的な取材活動に取り組んできました。
ことしの衆院選では日本共産党の志位和夫議長に取材。去年8月には兵庫県の斎藤元彦知事の会見で、こう問いかけました。
【川中だいじさん】「兵庫県知事選以後、SNS等の内容を信じ込み、個人の人格を攻撃するようなことが続いています。この誹謗中傷を止めるため、今言ったような一般論ではなくて、知事の言葉で言うことはできないでしょうか」
どんな相手にも臆することなく聞きたいことをズバリ聞く川中さんのスタイルに、一目置く政治家もいます。
【前衆議院議員・中道 川内博史さん】「人間は唐突に意外なことを聞かれると、本音を答える弱さを持っている。そういう意味で、彼自身”強力な武器”を有効に使って、的確に聞いて伝えている。(事象を)自分の中でそしゃくして質問する。ある意味、本物のジャーナリスト」
去年、大阪・関西万博の会場に大量発生した“ユスリカ問題”。川中さんは大手メディアが報じるよりも前からSNSで発信し、問題を提起しました。
■“都構想”のタウンミーティングでは市議に取材
川中さんの政治取材の原点でもある”都構想”。大阪では吉村知事と横山市長が3度目の実現を掲げ、維新の大阪市議団によるタウンミーティングが始まりました。
川中さんはこのタウンミーティング終了後、市議に直接話しかけます。
【川中だいじさん】「今回、”都構想”やるにあたって、吉村代表が一方的なことを言っていると捉えている。実際どう捉えているんですか」
【維新大阪市議団 坂井肇市議】「議論を尽くし熟慮を重ね、結論を出していく。その途中で吉村代表がパッと出しちゃうから。そこはちょっと我慢してよって思うときもあるけど、その代表を選んだのは我々なので」
当時は、早期の着手に慎重な姿勢を見せていた市議団の本音が透けた瞬間でした。
■「”副首都”と”都構想”がセットで考えられているのかが謎」吉村代表に単独取材
そして今回、川中さんの単独取材に日本維新の会の吉村洋文代表が初めて応じました。
川中さんはまず、”副首都”と”都構想”の関係について問いかけます。
【川中だいじさん】「”副首都”は、東京の一極集中を解消して、災害が起きたときバックアップなどをする、そういう理論はよく分かるんですけれど、”副首都”と”都構想”がセットで考えられているのかが謎なんですよ」
吉村代表は東京都の成り立ちを例に挙げながら、「”副首都”を運営する実行主体は、どうあるべきかと考えれば、僕は大阪においては”都構想”が最もふさわしいと考えています」と答えました。
続いて川中さんは、中学の生徒会長経験を引き合いに出しながら踏み込みます。
【川中だいじさん】「メリット・デメリットを提示しろと先生から言われるんですよ。”都構想”のデメリットを吉村さんからお聞かせ願いたい」
【日本維新の会 吉村代表】「僕はメリットしかないと思いますね。昔のような東京市・東京府に戻りたいって誰一人言ってない」
さらに「大きな政府か、小さな政府か」という問いを投げかけると、吉村代表は「僕自身はできるだけ”小さな政府”にして、住民サービスを大きく展開する。これを目指すべき」と答えました。
■吉村代表に“鉄板”の質問『民主主義』とは?
取材の最後に、川中さんは”鉄板”の質問を投げかけました。
【川中だいじさん】「吉村さんの考える『民主主義』というのは一体何ですか?」
【日本維新の会 吉村代表】「この瞬間ですね。僕は川中さんが『日本中学生新聞』として活動してるのも知ってますし、おそらく反対の意見も強くあることもあると思います。
僕は今、権力を持っている側なので、この対談だって断ることはできますけど、断らずに受けたいと思いました。それが『民主主義』だと思うからです」
そして最後にこう付け加えました。
【日本維新の会 吉村代表】「政治家になられても、記者になられても、僕と思想が違っても、応援してますので、頑張ってください」
■「民主主義」をより良くするために
川中さんはこの取材を経て、『日本中学生新聞』のnoteにこう記しました。
【『日本中学生新聞』のnoteより】「大阪市民であるが、18歳未満で投票権を持たないぼくたち世代は、大人の決断に委ねることしかできない。いま大阪は有権者一人ひとりの意思や選択が投影された姿であり、あなた自身であるということ。子どもの話をよく聞き、次世代に何を残したいのか、自覚と責任をもって参画していただきたい」
【川中だいじさん】「民主主義って絶対に不完全なものなんだと思うんです。もっといい民主主義にできないのか。なぜ今の民主主義の制度のままなのか。高校生になろうとも、歳をとっていこうとも、自分の中で追及していくひとつのテーマなのかなと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2026年7月8日放送)
